"黒いゴミ袋に詰まった十五年" 第4話
ゴミの悪臭や用品のたい気配は全くなかった。
袋のには綺麗に畳まれた聞の包みがいくつもなっていた。
それは決して無造作に放り込まれたゴミのなどではない。
まるで誰かの切な宝箱のようにつつが事に納められていた。
私は番に置かれていたさないものにを伸ばした。
それは見慣れた透な薬の空袋だった。
私が毎朝義父の正尾のために付をいて分けていたものだ。
指先で触れると私が黒いペンでいたさな数字が残っていた。
どうしてこんなものが捨てられずに残っているのかすぐには理解できなかった。
袋の端には私のいた付の横に器用な文字が添えられていた。
「佐子さんが朝 5 に薬を分けてくれた」。
かすれて震えた文字は違いなく正尾の跡だった。
私はその文字を見た瞬臓がさくねるのをじた。
この袋を渡したのことを私は鮮に覚えていたからだ。
それは今の。
私がひどいをしてっているのも辛いのことだった。
体が震えながらも私はいつものように朝く台所へ向かった。
私がやらなければ義父の薬の準備も義母の朝も誰も用しないからだ。
ふらつくでちながら私はさなケースに薬を 1 包みずつ分けていた。
広告
その私の背越しに義母のよしえがややかな声を投げかけた。
「寝込むならせめて夕飯の支度をきちんとしてからにしてちょうだい。あなたがいちいち倒れられたらこのの予定が狂って迷惑なのよ」。
私はでぼやけるでただ「すみません」と繰り返すしかなかった。
夫の健は卓で聞を広げたまま何も言わなかった。
私がをしていることなど彼にとっては気にも止めない常の部だった。
私は誰の配もされないまま黙って朝の焼き魚を並べていた。
その正尾だけが自分の焼き魚を半分残し私の皿の方へ無言で押したのだ。
「べろ」。
そのい言の響きを私は今でもはっきりと覚えている。
正尾のそのさながえ切ったので唯のぬくもりだった。
そのには古いレシートが数枚だけ丁寧に束ねられていた。
それは隣町にあるし値段のいさなスーパーのレシートだった。
正尾が歯を悪くした、私は柔らかい豆腐や魚をわざわざくまで買いにっていた。
自転で片に 10 分かかるそのへ通うことを義母は嘲った。
「所のいで買えば済むのにあなたって無駄な労力ばかり使うのね。そういう領の悪さがご所から笑われる原因なのよ」。
その言葉に耐えながら、私はただ義父がしでもべやすいようにとペダルをこいだのだ。
広告
そのレシートの裏にも器用な文字でいメモがかれていた。
「いまで私のためにってくれた」。
私はわず目を閉じてたいのでく息を吐きした。
正尾は私がしてきたことを全て当たりだとっていたわけではなかったのだ。
胸の奥がざわつくのをじながら私は次に入っていた聞の包みをに取った。
丁寧に巻かれた古い聞をしずつめくっていく。
からてきたのはくすんだ緑をした古い湯呑みだった。
その縁にはさな欠けがあり、私はわず息をんだ。
それは結婚して 3 目の誕に私が正尾に送ったものだったのだ。
桜商のさな陶器で自分のわずかな遣いから買ったものだ。
義父は言葉なに受け取り、それから毎その湯呑みでお茶をんでくれていた。
だが数、よしえがそのさな欠けを見つけてひどく嫌な顔をしたのだ。
「欠けた湯呑みを使い続けるなんてこのに幸を呼ぶ気なの。体物をいつまでも使っていると世体が悪いのよ。所のが来られたに見られたらうちの柄が疑われるじゃないの。そういう配慮がりないからあなたはいつまでたってもダメなのよ」。
私は何も言い返せず言われた通りにその湯呑みを自分ので捨てた。
ゴミのに集積所へ持っていく、所の奥さんとすれ違った。
「野さん、いつも朝くから事をご苦労様」と声をかけられても私は引きつった笑いを返すことしかできなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第27話
中卒の兄、結婚式で覚醒す
弟が名医として結婚式を挙げた日。 学歴至上の親戚たちは、医者の弟を持ちながら中卒でトラック運転手の俺を見下し、笑いものにした。 「こんな底辺な兄がいるなんて、恥ずかしいわw」 「せっかく医者になったのに、身内が足を引っ張る」 義父である大病院の院長まで、俺を蔑み、権力で圧しつけてくる。 誰もが俺を惨めな負け組だと決めつけたその瞬間―― ずっと黙っていた弟が、冷めた声で義父に告げた。 「院長。あなたはまだ、兄の正体に気づかないんですか?」 たった一言で、豪華な結婚式会場は一瞬で凍りついた。 彼らが馬鹿にした中卒の底辺兄。 実は、年商数百億の企業社長で、弟の夢を全部支えてきた男だった。 続々と入る国税局捜査、崩壊する権力、覆される階級。 学歴と肩書きだけで人を見下すエリートたちの顔面が、地に落ちる―― 最強兄の無双逆転、最後まで必見!因果応報|人生逆転|怒り|兄弟姉妹|親子関係4.1萬字5 71 -
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 132 -
完結第6話
他人と言われた娘
5歳の娘・マリが、義実家のクリスマスパーティーで泣きながら尋ねた。 「おばあちゃん、マリのは?」 長男嫁の子どもたちにはプレゼントを渡した姑。けれどマリにだけは、冷たい言葉を浴びせた。 「低学歴の嫁から生まれた子なんて、うちの孫じゃない」 施設で育ち、大学には行けなかった美優。結婚当初から姑に見下され続けても、夫の母だからと我慢してきた。しかも美優は、姑が知らないところで、何年も仕送りを続けていた。 しかし、娘まで“他人”扱いされた瞬間、美優の中で何かが切れる。 「分かりました。今後は他人として接します」 翌月、姑は初めて知ることになる。 自分の生活を支えていた仕送りが、誰から届いていたのかを。 そして、他人だと笑った相手に頼っていた姑の暮らしは、静かに崩れ始める――。嫁姑|親子関係9.2千字5 2 -
完結第10話
母が家を消した日
75歳の高橋幸は、お盆の夜、廊下の向こうから聞こえてきた家族の会話に足を止めた。 「おばあちゃんが施設に行ったら、この家、私たちのものになるの?」 息子夫婦は、幸を介護施設へ入れ、そのマンションを売って自分たちのローンや教育費に充てる計画を立てていた。しかも、その話は一時の思いつきではなく、すでに何か月も前から進められていたものだった。 翌朝、息子と嫁は何事もなかったように優しい顔で接してくる。病院での認知症検査、施設リスト、マンション売却後の資金計画――幸は静かに証拠を集めながら、最後の決断を胸に秘める。 そして、息子一家が海外旅行へ出かけた日。 幸は長年暮らしたマンションを売り、誰にも告げず東京を離れた。 旅行から戻った家族を待っていたのは、もう開かないオートロックと、母が残した一通の手紙だった――。因果応報|絶縁|親子関係1.4萬字5 2