"黒いゴミ袋に詰まった十五年" 第5話
その正尾は今のテレビを見たまま何も言わなかった。
だから私は義父も義母の見に賛成なのだとい込んでいた。
あのは私の送った物など本当はどうでも良かったのだと自分を納得させていた。
しかし義父は私がゴミ箱に捨てたそれをこっそりと拾いげていたのだ。
欠けた部分を指でなぞるとたい陶器の触が確かに伝わってきた。
15 私はこので自分というが消え続けているとっていた。
私がしてきた苦労もも全ては誰も見ていないところで消えていくのだと。
だがそうではなかったのだ。
湯呑みの底にはさく折りたたまれた切れが入っていた。
私はが震えるのを止められないままそのをそっといた。
そこには器用な字でかれた信じられない言葉が残されていた。
私はその文を見た瞬、ようやくつの事実に気づき始めていた。
私が信じていた孤独な 15 は決して誰の目にも触れなかったわけではない。
あのので誰にも気づかれないようにずっと見つめていた目がつだけあったのだ。
たいが吹く公園で私は黒いゴミ袋の底に眠る次の束にを伸ばした。
そこには私がまだらない過の真実が静かに息を潜めていた。
湯呑みの底に入っていた切れを私はもう度ゆっくりと見つめた。
広告
謝の言葉を伝えることすら許されないほどあのはき苦しい所だったのだ。
私は切れを元の所に戻し、黒いゴミ袋の底から数冊のノートを取りした。
表には何もかれておらずっぽい学ノートが紐で束ねられている。
番のノートをそっとくとそこにはい記のような記録が並んでいた。
付は今からちょうど 3 ほどのののものだった。
その文字を見た瞬、私は 3 のあのの記憶に無理やり引き戻された。
親戚を勢招いてわれた法事のののことだ。
私は朝から台所にち詰め、仕し弁当の配や親戚へのお茶しに追われていた。
休む隙もなくき回り夕方になってようやく息つこうと奥の部へ向かっただ。
しだけいた襖の奥から義母のよしえと夫の健の話し声が聞こえてきた。
「親戚の目があるから言わないけれど本当に気が利かないね。子供も産めないのにいつまでこのにしがみつくつもりなのかしら」。
義母のややかな声がい襖を通して静かな廊に響いてきた。
私は持っていたお盆を胸に抱きしめ息を殺してち尽くした。
夫が私をかばってくれるかもしれないという淡い期待は次の言葉で無惨に打ち砕かれた。
「母さん、今はまだあいつを追いすのは得策じゃないよ。
広告
親父の介護もあるし事を全部ただでやってくれるが必だろう。今ここで婚なんて騒ぎを起こせばご所の世体も悪くなるからな。あいつは政婦として割り切って使えばいいんだ。便利な具だとえばいい」。
夫のその言葉は鋭い刃物のように私の尊厳を切り裂いた。
義母はさく笑い、それに同するようにお茶をすする音をてた。
「それもそうね。よそのに介護を頼めばおもかかるものね。活費と費の分くらいは働いてもらわないと割にわないわ」。
彼らは私を族としてではなく、ただの便利な労働力として元に置いていたのだ。
私は襖のにったまま涙すら流すことができなかった。
ここで泣き叫んで部にび込んでも彼らはたい目で私を見ろすだけだろう。
私には実へ帰るという選択肢もできていく経済な余裕もなかった。
だから私は何も聞かなかったふりをして静かに台所へ戻るしかなかったのだ。
あのの絶望がたいと共に再び私の全を包み込んだ。
私はきく息を吸い込み、震える指でノートのページに線を落とした。
ここにはあのの付と共に正尾の器用な文字が並んでいた。
「佐子さんが廊で話を聞いていた。彼女のお盆を持つが震えていたの。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
家ごと消した母の反撃
七十一歳の美穂は、夫が入院している間、同居する長男夫婦から召使いのように扱われていた。生活費は一円も入れず、母の形見まで勝手に処分する二人。ある日、微熱で三分だけ横になった美穂に、長男嫁はワインを浴びせ、「帰るまでに掃除しておけ」と言い放つ。長男も笑うばかりだった。だが、黙って「はい」と答えた美穂には、二人の知らない計画があった。三日後、帰省先から戻った長男夫婦は、信じられない光景を目にする。嫁姑|親不孝|親子関係|金銭問題2.0万字5 981 -
完結第10話
すり替えた味噌汁
検事任官の最終面接を迎えた朝、神田玲奈は義母が自分の味噌汁に何かを混ぜる姿を目撃する。夫にも相談できないまま、玲奈は不審な味噌汁を密かに保管し、何食わぬ顔で食卓に戻った。同じ日、義妹の彩佳も三度目の教員採用試験に挑もうとしていた。玲奈が彩佳と味噌汁の椀を交換した瞬間、義母は血相を変えて叫び出す。嫁姑|第二の人生|金銭問題1.4万字5 60 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1490 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 1263 -
完結第23話
孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由
七十二歳の幸子は、亡き夫と建てた家で息子夫婦と孫の蓮斗と暮らしていた。学費も生活費も援助し、家事まで引き受けてきたのに、いつしか家族から「居候」のように扱われるようになる。ある夜、孫に胸ぐらをつかまれても、息子は助けてくれなかった。翌朝、幸子は弁当も朝食も作らず、黙って家を出る。しかし家族はまだ知らなかった。人生逆転|祖父母と孫|第二の人生|ATM扱い|絶縁3.1万字5 881 -
完結第18話
誤爆LINEの夜
結婚六年目。妻の明子に勧められ、出張前夜をホテルで過ごすことにした直人。ところがチェックイン直後、妻から「今日旦那いないから、いつもみたいにイチャイチャしよ♡」というLINEが届く。慌てて削除されたメッセージに不信感を抱いた直人は、何も知らないふりをして自宅へ戻る。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫2.0万字5 1284