"偽りの夫婦と奇妙な夜の声" 第6話
伊藤美穂。
伊藤美穂。
私のらない女の名だった。
あの甘いの匂い。
級フレンチレストランのレシート。
夜の帰宅。
全ての点と点が本の黒い線で繋がった瞬だった。
おがないと私を鳴りつけ、私が両親の残してくれた切な貯を切り崩しているのをたく見ろしながら、健は別の女に毎万円も貢いでいたのだ。
が震え、呼吸が浅くなる。
涙さえなかった。
あまりのショックにが完全に麻痺してしまったようだった。
浴からシャワーの音が止まる気配がした。
私はしてに返り、急いでスマホを取りした。
与細と振り込み細の写真を数枚撮り、元の茶封筒に戻してバッグの奥へ押し込んだ。
健がリビングに戻ってきた、私は何事もなかったかのようにソファーで洗濯物を畳んでいた。
「まだ起きてたのか」
健は私をちらりとも見ず、蔵庫からビールを取りして自分の部へと向かった。
そのろ姿を見つめながら私のにあった夫へのは完全にたいへと変わっていた。
翌朝、健が会社へき、義母の佐子がに度の美容院へかけた。
のには再び私だけになった。
私は掃除をかけるふりをしながら義母の寝へと向かった。
どうしても確かめなければならないことがあったからだ。
広告
あの鍵のかかったタンスの番の引きし。
義母は普段鍵を肌さず持ち歩いているようだった。
しかし今は美容院へくためによそきのに着替えていった。
私は義母が昨まで着ていた普段着のカーディガンが子の背もたれにかけられているのに目を止めた。
ポケットにを入れると指先にい属の触があった。
さなの鍵だった。
胸の鼓がくなる。
私はその鍵を握りしめ、古い製のタンスのに座り込んだ。
鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。
カチャリというさな音がして引きしのロックがれた。
そっと引きしをけるとそこには古いお菓子の空き箱がつと冊の学ノートが綺麗に並べられていた。
私はまずお菓子の箱をけた。
に入っていたのは冊の通帳と義母の実印だった。
そのうちの冊をき、私は息をんだ。
名義は義母の佐子になっているが、そこには毎健の座から万円が振り込まれ続けていたのだ。
「お母さん、健からの活費は毎万円しかないのよ。これじゃあべていけないわ」
「ゆみさん、あなた自分の貯があるんでしょ?りない分はあなたが払いなさい」
義母はいつもしそうな顔をして私にそう言っていた。
しかしそれは真っ赤な嘘だったのだ。
広告
健は毎に入れるおとして万円を義母に渡していた。
義母はその事実を隠し、私から活費を絞り取っていたのだ。
消えた活費は全てこの通帳のに溜め込まれていた。
残はすでに百万円を超えている。
私はが震えるのを抑えながら隣にあった学ノートをに取った。
表をくとそこには義母の細かい字で毎の来事やおの計算がき込まれていた。
記兼計簿のようなものだった。
ページをめくり、最の付のところを読んで私は全に鳥肌がつのをじた。
「まあ、今も嫁に費がりないと言ってやった。また自分の貯からお肉を買ってきた。本当に扱いやすいバカな女」
「まあ、今健から今の活費万円を受け取った。これも全て私の老資に回す。嫁のは私の」
「、嫁の親が残した遺産、まだ数百万円はあるはず。なんとかして通帳と実印を取りげなければ。寄りのない女だからし脅せばすぐに渡すだろう」
ノートの文字が歪んで見えた。
目から粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
しかったからではない。
あまりにも残酷なの悪に。
そしてそんなたちを族だと信じて尽くしてきた自分自の愚かさにの底からりが湧きがってきたのだ。
両親は私が将来困らないようにと、自分の命を削るようにして働き私におを残してくれた。
広告
おすすめ作品
-
完結第27話
中卒の兄、結婚式で覚醒す
弟が名医として結婚式を挙げた日。 学歴至上の親戚たちは、医者の弟を持ちながら中卒でトラック運転手の俺を見下し、笑いものにした。 「こんな底辺な兄がいるなんて、恥ずかしいわw」 「せっかく医者になったのに、身内が足を引っ張る」 義父である大病院の院長まで、俺を蔑み、権力で圧しつけてくる。 誰もが俺を惨めな負け組だと決めつけたその瞬間―― ずっと黙っていた弟が、冷めた声で義父に告げた。 「院長。あなたはまだ、兄の正体に気づかないんですか?」 たった一言で、豪華な結婚式会場は一瞬で凍りついた。 彼らが馬鹿にした中卒の底辺兄。 実は、年商数百億の企業社長で、弟の夢を全部支えてきた男だった。 続々と入る国税局捜査、崩壊する権力、覆される階級。 学歴と肩書きだけで人を見下すエリートたちの顔面が、地に落ちる―― 最強兄の無双逆転、最後まで必見!因果応報|人生逆転|怒り|兄弟姉妹|親子関係4.1萬字5 85 -
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 169 -
完結第6話
他人と言われた娘
5歳の娘・マリが、義実家のクリスマスパーティーで泣きながら尋ねた。 「おばあちゃん、マリのは?」 長男嫁の子どもたちにはプレゼントを渡した姑。けれどマリにだけは、冷たい言葉を浴びせた。 「低学歴の嫁から生まれた子なんて、うちの孫じゃない」 施設で育ち、大学には行けなかった美優。結婚当初から姑に見下され続けても、夫の母だからと我慢してきた。しかも美優は、姑が知らないところで、何年も仕送りを続けていた。 しかし、娘まで“他人”扱いされた瞬間、美優の中で何かが切れる。 「分かりました。今後は他人として接します」 翌月、姑は初めて知ることになる。 自分の生活を支えていた仕送りが、誰から届いていたのかを。 そして、他人だと笑った相手に頼っていた姑の暮らしは、静かに崩れ始める――。嫁姑|親子関係9.2千字5 4 -
完結第10話
母が家を消した日
75歳の高橋幸は、お盆の夜、廊下の向こうから聞こえてきた家族の会話に足を止めた。 「おばあちゃんが施設に行ったら、この家、私たちのものになるの?」 息子夫婦は、幸を介護施設へ入れ、そのマンションを売って自分たちのローンや教育費に充てる計画を立てていた。しかも、その話は一時の思いつきではなく、すでに何か月も前から進められていたものだった。 翌朝、息子と嫁は何事もなかったように優しい顔で接してくる。病院での認知症検査、施設リスト、マンション売却後の資金計画――幸は静かに証拠を集めながら、最後の決断を胸に秘める。 そして、息子一家が海外旅行へ出かけた日。 幸は長年暮らしたマンションを売り、誰にも告げず東京を離れた。 旅行から戻った家族を待っていたのは、もう開かないオートロックと、母が残した一通の手紙だった――。因果応報|絶縁|親子関係1.4萬字5 2 -
完結第7話
何もしない姑の居場所
68歳の絹江は、息子夫婦の家に5年間住み続けていた。 料理も掃除も洗濯もせず、昼はテレビを見ながらお菓子を食べ、嫁のリナが作り置きした食事を当然のように食べ尽くす毎日。リナは仕事と家事に追われ、限界を感じながらも、姑だからと黙って耐えていた。 そんなある日、仕事を辞めた娘・夏帆が家に戻ってくる。 何もしない姑と、社会に疲れて動けなくなった娘。家の中に増えた“何もしない人たち”に、リナの心はついに折れかける。 しかし深夜のリビングで、絹江と夏帆が交わしていた本音を聞いた時、リナは初めて知る。 姑は本当に怠けていただけなのか。 娘は本当に甘えていただけなのか。 壊れかけた家族が、不器用に変わろうとする物語。嫁姑|親子関係1.1萬字5 3