"鬼母の末路" 第6話
この女には、のというものが決定に欠落しているのだ。
「お、自分がどれだけ恐ろしいことを言っているのか分かっているのか」
「恐ろしい? 親に向かってお呼ばわりするあんたの方が、よっぽど恐ろしいわ。これ以気なを聞くなら、親戚に言いふらすわよ。はでが変わって、老いた母親をいじめるような酷な男になったってね。あんた、昔から世体を気にするタイプでしょう」
脅迫。
それが、自分の腹を痛めて産んだ息子に向かって放つ言葉なのか。
俺は握りしめた拳がくなるのをじながら、震える声で尋ねた。
「最にもうつだけ聞く。真由と紗英が、気もつかない真っ暗な部でお湯をすすって飢えている姿を像して、ほんのしでも胸は痛まなかったのか」
母親は、何を馬鹿なことを聞くのかというように、馬鹿にした笑みを浮かべた。
「痛むわけないじゃない。むしろいい気だとったわよ。私から事な息子を奪った憎い棒猫が、惨めにひもじいいをしているんだから。毎振り込みの額を見るたびに、あいつらが苦しんでるってえて、胸がすっとしたわ」
その言が、俺ので何かが完全に切り替わる決定打となった。
しみや絶望は、もうない。
あるのは極限までえ切った、研ぎ澄まされたような殺にも似た静かなりだけだった。
広告
そうだ。
俺が違っていた。
こいつはもう、俺の母親なんかじゃない。
ただの族をい物にしている寄虫だ。
俺はゆっくりと呼吸をし、コートのポケットので、あらかじめ録音状態にしてあったスマートフォンの触を確かめた。
ポケットので、スマートフォンの録音アプリが静かに回り続けている。
だがそんなことなどらず、母はら笑いを浮かべて、級茶のカップを傾けていた。
俺は全の血が沸騰するようなりをじながらも、必に理性を総員してそのにち尽くしていた。
力任せに鳴り散らしたところで、奪われた千百万円が返ってくるわけではない。
真由と紗英が負ったいの傷が癒えるわけでもない。
俺が沈黙しているのを、反論できずに怯んでいると勘違いしたのだろう。
母はカップをソーサーにことりと置き、勝ち誇ったような声をした。
「黙り込んじゃって、どうしたの? まさか警察にでもくつもり? 言っておくけど無駄よ」
「何が言いたい?」
「らないの? 本の法律じゃね、親と子のでおを盗んだとしても刑罰には問われないのよ。親族相盗例っていうらしいわ。この、テレビの法律番組で弁護士の先が言ってたもの。だから仮にあんたが警察に泣きついたところで、族のトラブルは民事で解決してくださいって払いされるのがオチよ。
広告
つまり私は絶対に捕まらないの」
悪びれるどころか、法律の抜け穴を盾にしてき直る母。
その用周到さと底れぬ悪に、俺は背筋にたいものがるのをじた。
「お、まさかそこまで計算して……」
「あら、私をただの田舎のばあさんだとったら違いよ。あんたが稼いだおを全に管理するために、々勉させてもらったわ。それにね、私が警察を怖がらない理由はそれだけじゃないのよ」
母はそう言うと、よっこらしょとちがり、リビングの隅にあるアンティーク調の引きしから、枚のクリアファイルを取りしてきた。
そしてそのから数枚のを抜きし、テーブルのにばさりと放り投げた。
「これ、見てご覧なさい」
「なんだ、これは?」
俺はテーブルにづき、そのに目を落とした瞬、臓を鷲掴みにされたような衝撃がり、呼吸が止まりそうになった。
そこにあったのは、真由の署名と実印が押された借用。
そしてもう枚は、同じく真由の署名と捺印が済んでいる婚届だった。
「どういうことだ……? なぜ真由が借用なんて……」
震えるで借用をに取ると、そこには、
「活費として義母・柏義子より毎万円を借り入れます。返済できないは、実の両親が連帯して責任を負います」
という文言がかれていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第27話
中卒の兄、結婚式で覚醒す
弟が名医として結婚式を挙げた日。 学歴至上の親戚たちは、医者の弟を持ちながら中卒でトラック運転手の俺を見下し、笑いものにした。 「こんな底辺な兄がいるなんて、恥ずかしいわw」 「せっかく医者になったのに、身内が足を引っ張る」 義父である大病院の院長まで、俺を蔑み、権力で圧しつけてくる。 誰もが俺を惨めな負け組だと決めつけたその瞬間―― ずっと黙っていた弟が、冷めた声で義父に告げた。 「院長。あなたはまだ、兄の正体に気づかないんですか?」 たった一言で、豪華な結婚式会場は一瞬で凍りついた。 彼らが馬鹿にした中卒の底辺兄。 実は、年商数百億の企業社長で、弟の夢を全部支えてきた男だった。 続々と入る国税局捜査、崩壊する権力、覆される階級。 学歴と肩書きだけで人を見下すエリートたちの顔面が、地に落ちる―― 最強兄の無双逆転、最後まで必見!因果応報|人生逆転|怒り|兄弟姉妹|親子関係4.1萬字5 85 -
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 169 -
完結第6話
他人と言われた娘
5歳の娘・マリが、義実家のクリスマスパーティーで泣きながら尋ねた。 「おばあちゃん、マリのは?」 長男嫁の子どもたちにはプレゼントを渡した姑。けれどマリにだけは、冷たい言葉を浴びせた。 「低学歴の嫁から生まれた子なんて、うちの孫じゃない」 施設で育ち、大学には行けなかった美優。結婚当初から姑に見下され続けても、夫の母だからと我慢してきた。しかも美優は、姑が知らないところで、何年も仕送りを続けていた。 しかし、娘まで“他人”扱いされた瞬間、美優の中で何かが切れる。 「分かりました。今後は他人として接します」 翌月、姑は初めて知ることになる。 自分の生活を支えていた仕送りが、誰から届いていたのかを。 そして、他人だと笑った相手に頼っていた姑の暮らしは、静かに崩れ始める――。嫁姑|親子関係9.2千字5 4 -
完結第10話
母が家を消した日
75歳の高橋幸は、お盆の夜、廊下の向こうから聞こえてきた家族の会話に足を止めた。 「おばあちゃんが施設に行ったら、この家、私たちのものになるの?」 息子夫婦は、幸を介護施設へ入れ、そのマンションを売って自分たちのローンや教育費に充てる計画を立てていた。しかも、その話は一時の思いつきではなく、すでに何か月も前から進められていたものだった。 翌朝、息子と嫁は何事もなかったように優しい顔で接してくる。病院での認知症検査、施設リスト、マンション売却後の資金計画――幸は静かに証拠を集めながら、最後の決断を胸に秘める。 そして、息子一家が海外旅行へ出かけた日。 幸は長年暮らしたマンションを売り、誰にも告げず東京を離れた。 旅行から戻った家族を待っていたのは、もう開かないオートロックと、母が残した一通の手紙だった――。因果応報|絶縁|親子関係1.4萬字5 2