"父の残した翼" 第13話
「でもチャンスは与える。このにみ続け、僕の妻でいたければ、お母さんが残した遺産を全て僕に渡せ。そうすれば婚は考え直してやってもいい。もちろんお母さんの介護はこれからは君の仕事になるがね」
卑劣という言葉でもぬるい。
彼は私が母を見捨てられないことをっている。それを盾に遺産の全てを求してきたのだ。
「介護獄からの解放」という甘い言葉をちらつかせ、私に究極の選択を迫がる。
さえに入れば、病気の母をこのに閉じ込めて、自分はで自由な暮らしを満喫するつもりなのだろう。
彼は最の切り札を切るように言った。
「さあ、選ぶんだ。ゆみ。遺産を渡して形だけでも僕の妻であり続けるか。それともこのお荷物のお母さんと緒に文無しでこのからていくか。君の賢な判断を期待しているよ」
彼は私が泣いて彼にすがるとでもったのだろう。
その目は獲物を追い詰めた狩のように、見苦しい優越に満ちていた。
しかし私はもう、かつての無力な私ではなかった。
私は目のの婚届けと、徹な目で私を見ろす夫を静かに見つめ返した。涙は滴もなかった。は氷のようにたく固まっていた。
父が残してくれた言葉が鎧となって、私のを守ってくれていた。
「わかりました。
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し考えるをください」
私の予に静な声に、直さんは瞬戸惑ったような表を浮かべた。
「まあいいだろう。の朝まで待ってやる。よく考えて、僕にとって番いい答えをすんだな」
そう言い残し、彼は寝へと消えていった。
リビングに残された私はゆっくりとちがった。
そしてまっすぐに部の隅に置かれた仏壇へと向かった。
扉をけ、線のりが漂う、私は静かにをわせる。
「お父さん、見ていてください。私、もう迷わないから」
そうのでつぶやくと、私は仏壇の番にあるさな引きしにをかけた。
父が残してくれた次の、このに眠る最の切り札で、あの悪魔に裁きをすが来たのだ。
仏壇のにしゃがみ、私は静かに番の引きしをけた。
には父が使っていた数珠と古いお経の本が入っているだけ。見何の変哲もない、どこの庭にもあるような仏壇の引きしだ。
私は教えられた通り、引きしの奥にそっと指を入れた。
すると指先にの板の継ぎ目のようなわずかな触があった。
爪をてて慎に引き寄せると、音もなく奥の板がすっとにずれた。
そこにはののひらほどの隠された空が現れた。
息をみながらにを入れる。指先に触れたのは分い封筒と、もうつくてさな箱だった。
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取りし、を確認する。
封筒のに入っていたのは数枚の類と枚の写真だった。
類はこののと建物の権利証の写しだった。
そしてその名義は父・佐藤健から私・佐藤ゆみへと、すでに贈与の続きが完していることが記されていた。
付は父がくなるヶ、私が直さんと付きい始めてすぐの頃だ。
父は直さんがこのを狙っていることを見抜き、先を打って法に私のものであることを確定させてくれていたのだ。
「このからていけ」という直さんの脅しが、もはや何のも持たないことを証する力な武器だった。
そしてもう枚の写真。それを見て私は言葉を失った。
ここに写っていたのは見覚えのある派な若い女性と腕を組んで、ショーウィンドウに微笑む夫・直さんの姿だった。がっているのは級ブランドショップの。
写真の裏には「する直へ あより」という見慣れない女の文字がかれていた。
あいつ、どこかで聞いたことがある名だ。私は記憶を辿った。
そうだ。直さんが抱えていた借の督促状のに、何度かその名がてきた。
彼が最も額な借をしていた相、個での貸借かりだろうか。
この女が直さんの本当の恋、いやそれ以の何かい関係があるに違いない。
だとすれば私との結婚は、借を返すための蔓を見つけるための壮な詐欺だったということになる。
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