"父の残した翼" 第15話
「先、おはようございます。準備はよろしいでしょうか?」
「ええ、お待ちしております」
話を切ると私は玄関のドアを指し示した。
「もうすぐお客様がいらっしゃいます。あなたの言う『秘密のコミュニケーション』が体どのようなものだったのか、皆さんのではっきりとさせていただきましょう」
直さんはまだ私ががりを張っているとでもっているのだろう。その顔には焦りと侮りが入り混じった複雑な表が浮かんでいた。
彼はまだらなかった。父が残した本当の最の札が、彼自の声で彼の全ての罪をのにさらすことになるということを。
インターホンのチャイムが、静まり返ったリビングに鳴り響いた。
私が玄関のドアをけると、そこには本先が厳しい表でっていた。
その隣には見慣れない若い男性が、ブリーフケースを抱えて控えている。おそらく本先の事務所の部だろう。
「先、お待ちしておりました。どうぞお入りください」
私がをリビングへ案内すると、直はソファにふんぞり返ったまま、威張った態度でを睨みつけた。
「なんだあんたは?弁護士か?ゆみ、こんな得体のれない男をに入れてどういうつもりだ?」
その横柄な態度に本先は眉つかさず、静かに名刺をテーブルのに置いた。
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「直さん。私は故・佐藤健氏の顧問弁護士を務めておりました。本と申します。本は健氏の遺言執者として、そして佐藤ゆみさんの代理としてお話を伺いに参りました」
その落ち着いた、しかし言い逃れを許さぬ迫力に、直さんは瞬たじろぐが、すぐにがりを張って嘲るように笑った。
「遺言執者だ、ふん。結構だ。だがあんたがてきたところで何も変わらん。このの財産は俺にも権利がある。それにゆみが俺と婚するというなら、それ相当の慰謝料を支払ってもらう。俺がこれまでこいつの母親の介護にどれだけ尽くしてきたとってるんだ」
彼の理尽な抗議に私は奥歯をく噛みしめた。本先はそんな彼を静に見据えながら淡々と続けた。
「そうですか。その件についても詳しくお伺いしたいとっておりました。あなたが毎晩、け子夫に対してっていたという『マッサージ』について、ご本からも証言をいただきたいと考えております」
そう言って本先は私の背に線を送った。
いつのにか母の佐藤け子が、私が押す子に乗ってリビングの入りに姿を表していた。
母の姿を見た直さんの顔が瞬こわばった。しかし彼はすぐにいつものの良さそうな笑みを浮かべ、勝ち誇ったように言った。
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「お母さん、ちょうど良かった。この弁護士先に、僕がどれだけお母さんのために尽くしてきたか、お母さん自のから話してあげてくださいよ。僕が毎晩汗だくになってをマッサージしてあげたおかげで、随分楽になったでしょう」
彼は母が恐怖で自分に逆らえないことを確信しているのだ。体の自由な母が、自分の脅迫のでは無力だとをくくっている。
母は俯いたまま、か細い声で「はい」とだけ答えた。そのは子の肘掛けので刻みに震えている。
その様子を見て直さんは満げに頷いた。
「ほら、聞いたでしょう先。お母さんも僕の献な介護に謝しているんですよ。慰謝料の額、し乗せさせてもらわないといけませんが」
彼は完全に自分がこのの勝者になったとい込んでいる。借の証拠も謎の女との写真も、この「介護の実績」という札のでは無力だと信じているのだ。
彼はまだ本当の札が、この私と本先のにあることをらない。父が残したあのボイスレコーダー。そして庫に眠る、彼の息の根を止めるための特別遺産。
私は彼の見苦しい勝利宣言を、ただたい目で見つめていた。
本先は震える母のを優しく包み込むように握った。
「け子さん、もう何も恐れることはありませんよ。
正直に話してください。健さんが国で見ています」
その言葉に母はゆっくりと顔をげた。その目には涙が溢れていたが、その奥にはこれまで見たこともないようない決のが宿っていた。
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