"三十年目の指輪" 第4話
「いつから?」
気づいたら、そう聞いていました。
夫はしだけ考えて、目を伏せました。
「はっきりとは言えないけど、だいぶから」
その言葉を聞いて、なぜかしだけしました。
昨、急に決まったわけじゃない。
それはつまり、私たちのが昨で終わったわけではないということでした。
もっとから、しずつ終わっていた。
そうったのです。
「そのって……」
そこまで言って、私はを閉じました。
名を聞くことにがあるのかどうか、分からなかったからです。
けれど、夫の方から言いました。
「会社ので」
それだけでした。
詳しいことは話しませんでした。
私も、それ以聞きませんでした。
ただ1つだけ、気になったことがありました。
「そのは、あなたのこと、よくってるの?」
夫はしだけ驚いたような顔をしました。それから、ゆっくりとうなずきました。
「分」
その言で分でした。
私はそれ以何も言いませんでした。
でもので、何かがはっきりと形になりました。
ああ、そうなんだ。
あのは、どこかでちゃんと見てもらえていたんだ。
私が見ていなかったところを。
事の、夫は珍しくリビングに残っていました。テレビもつけずに、ただ座っていました。
私もしれたところに座りました。同じ空にいるのに、どこかいじがしました。
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しばらくして、夫がをきました。
「にさ、話そうとしたことあったよね」
その言葉に、私のがしだけきました。
「いつ?」
そう聞くと、夫は苦笑いのような顔をしました。
「だいぶ。子どもがさかった頃」
私は、アルバムの写真をいしました。
言いかけて、やめたあの。
「その、ちゃんと話してたら違ったのかなって」
夫はそう言いました。
責めているわけではありませんでした。ただ、いしているだけのようでした。
私はすぐには答えられませんでした。
違ったかもしれない。
違わなかったかもしれない。
どちらも、私にはもう分かりませんでした。
「ごめん」
また夫がそう言いました。
でも、その言葉はよりもしだけはっきり聞こえました。
私はしばらく何も言いませんでした。そして、ゆっくりとをきました。
「私も」
そこまで言って、し止まりました。
「ちゃんと聞いてなかったかも」
その言葉は、っていたより自然にてきました。
夫は何も言わず、ただうなずきました。
その、初めてしだけ同じ所にっている気がしました。
でもそれは、もう戻るための所ではありませんでした。
ただ、終わるための所でした。
それからの数、のは議なくらい静かでした。
きな変化は何も起きていないのに、何かが確実にいている。
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そんな覚がずっと続いていました。
夫は、必なことだけを話しました。
「これ、使う類」
「ここに置いておく」
それだけでした。
私も同じように答えるだけでした。
これ以、何かをすことはありませんでした。
でも、とは違う静けさでした。
は、何も言わなくても続いていくのようなものがありました。今は、言わないことで終わりがづいているとじる静けさでした。
ある、洗濯物を畳みながら、夫のシャツに目が止まりました。
見たことのないシャツでした。柔らかいで、し若い印象のもの。タグを見ると、最買ったものだと分かりました。
そのシャツを、私はらなかった。
そのことが、ったよりもに残りました。
30も緒にいて、そのの持ち物をらない。
それはさなことのようで、とてもきなことでした。
夕方、夫が帰ってきました。
そのシャツを着ていました。
私は何も言いませんでした。ただ、しだけ見てしまいました。夫は気づいたのか、瞬だけ線をそらしました。
その、普通の声で言いました。
「来週あたり、向こうにこうとってる」
向こう。
その言い方がしだけ引っかかりました。
でも、はすぐに分かりました。
あののところ。
「そう」
私はそれだけ答えました。
聞きたいことは、たくさんありました。
どんななのか。
いつからなのか。
本当に幸せなのか。
でも、それを聞いたところで、何かが変わるわけではありませんでした。
夜、1で台所にっていると、ふと昔のことをいしました。
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