みかん小説
本棚

"五日婚の因果返し" 第2話

忙しい期なのだろう。

実際、夫の仕事はちょうど度替わりの期だった。定退職者がたことによる業務体制の変更や、規事業のげがなっているらしい。

この期に忙しくなることは、何ヶから聞いていた。

だから私は、何の疑いもなく夫を応援していた。

式当の朝は、よくれていた。

はホテルの宴会で、チャペルとレストランがつながっているコンパクトな作りだった。きな式ではなかったけれど、窓の向こうにが見える綺麗な所だった。

ウェディングドレスに袖を通しながら、私はずっとそわそわしていた。

嬉しいだけではなかった。

これから始まる活への期待。お腹の子供と緒に式を迎える議な気持ち。夫と私と、お腹の子供。3でこのを迎えられることが、とても嬉しかった。

式は滞りなくんだ。

夫は緊張していたのか、指輪を交換する面でもたついてしまった。私はわず笑いそうになったけれど、それも私たちらしい穏やかなになるはずだった。

宴が始まり、事が運ばれてから30分ほど経った頃だった。

「ちょっとトイレ」

卓郎はそう言って席をった。

最初は何ともわなかった。けれど、なかなか戻ってこない。

配になった私は、周囲に気づかれないように席を抜けた。

広告

の端の方で、夫が携帯話をに当てているのが見えた。

声はさかった。

けれど、廊の静けさのせいで、しだけ聞こえた。

「分かった。落ち着いて。今は無理だから」

「そうじゃなくて、話はで」

「そんなことはしない。ちゃんと向きうから」

丈夫。俺がついてるから。そんな気なこと言うなよ」

「俺は絶対方だから」

誰かをなだめるような、焦ったような、でも優しい声だった。

私は胸の奥にさな違を覚えた。

「卓郎」

声をかけると、夫はびくりと体を震わせて振り返った。

「あ、千佳。ごめん」

「仕事の連絡? こんなにかけてくるの? 変なね」

「うん。ちょっとトラブルで、話せざるを得なかったみたいだ。もう丈夫だから戻ろう」

夫はそう言って、私の背を当て、会へ戻った。

ここ最ずっと忙しかったから、こんな話がかかってくることも仕方ないのだろう。

私はそう自分に言い聞かせた。

でも本当は、で何かが引っかかっていた。

あの声のトーンは、仕事相に対するものではなかった気がした。

もっと親しい誰かに使うような、柔らかさがあった。

けれど、このは結婚式だった。

れのに、そんな幸なことを考えたくなかった。

だから私は、その違を見過ごしてしまった。

式から3が経った。

婚旅はゴールデンウィークに予定していたから、私たちはまだ活に戻ったばかりだった。

広告

その夜、9過ぎに夫から連絡が届いた。

「今夜は帰れない。泊まりになる」

私はスマートフォンの画面を見つめた。

すぐに返信した。

「何かあったの?」

しして返事が来た。

しい仕事が本当にやばくて。ごめん。詳しくは話すよ」

私はを押し殺しながら文字を打った。

「そう。分かった。無理しないでね」

しかし翌、夫は帰ってこなかった。

その次のも帰ってこなかった。

話をしてもつながらず、メッセージを送っても返事はない。何か事件に巻き込まれたのではないかと、私はで夜も眠れなかった。

そして4目の朝になって、ようやく返信が来た。

「今夜、話したいことがある。7に帰る」

話したいこと。

その文面から、たい空気が漂っていた。

私は嫌な予を覚えた。けれど、その予が何をしているのか分からなかった。ただ、胸のに黒いのようなが広がっていった。

夫が帰ってきたのは、7し回った頃だった。

スーツのまま鞄を玄関に置き、無言でリビングに入ってきた。

私はソファに座って待っていた。

「お帰り」

私がそう言うと、夫はさく「ただいま」と返した。

けれど、いつもの笑顔はなかった。

こわばった顔のまま、私の方を見ようとしない。

「話って何?」

私はできる限り優しい声を識した。夫の表い詰めていたからだ。

仕事できなミスをして遷されるのかもしれない。

誰かの借を肩代わりしたのかもしれない。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: