"43番の帰還" 第6話
この事件は、1の女の失踪では終わらない。
を番号に変え、記憶を奪い、世代を超えて続いてきたそのものを暴くことになる。
美咲は資料を閉じ、静かに目を閉じた。
過がどうであれ、自分は今、この所にいる。
そして目のには、消さないでと託された声を抱えて戻ってきた女がいる。
逃げることはできない。
美咲はそうった。
恵子の裁判は、ったよりくんだ。
弁護はついたが、恵子自がほとんど抗弁せず、事実を認める姿勢を示したためだった。起訴内容には、監禁への関与、証拠隠滅、そして娘を危険にさらした為が含まれた。
判決は懲役刑だった。
恵子は控訴しなかった。
法廷で、彼女は最にこう言った。
「私は母である資格を失いました。けれど、彼らはまだ終わっていません」
その言葉は、傍聴席にいた者たちの胸にく残った。
彩佳は法廷になかった。
母がどんな罰を受けても、失われた9は戻らない。46番の女の声も、消えた子どもたちの名も、簡単には戻らない。
判決のの夜、美咲は辞表を提した。
9追い続けた事件が終わったわけではなかった。むしろ、事件が自分自のにもくい込んでいたとった以、警察官としてのを続けることができなかった。
自宅の机で古い資料を理しながら、美咲は静かに呟いた。
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「私はもう、追わない」
それは諦めではなかった。
自分の境界線を引く決断だった。
児童相談員の直美は、事件、しい支援活を始めた。期監禁や虐待から還した子どもたちを支援するプログラムだった。
その名は「46の部」。
失われた女の番号を忘れないためだった。
直美は子どもたちにできる居所を与え、しずつ言葉を取り戻させていった。彼女の帳には、こうかれていた。
「沈黙を破るのは勇気ではなく、居所だ」
兄の暁は学に戻った。
卒業は遅れたが、論文をきげた。題名は「喪失の科学」。失われた妹との、自分の無力、族の崩壊、それらを図形や迷の比喩で表したものだった。
読む者のくが、内容の難しさとは別に、胸を締めつけられた。
暁はその論文をくことで、ようやく自分のを再び歩き始めた。
彩佳は、判決から6週、町をれた。
座を空にし、古のさなを買い、必なものだけを積んだ。き先を誰にも告げなかった。
ただ、美咲の机のにさな箱を残した。
には折りたたまれた図、きの迷、そして「43」と刻まれたタグが入っていた。
片には、1だけかれていた。
「は私ではない。私は通り抜けただけ」
聞やテレビは、彩佳のことを「9ぶりに帰還した女」とだけ報じた。
複雑な背景や、46番の女の声や、番号で管理された子どもたちの真実は、い記事にはならなかった。
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世に残ったのは、方から戻った女という簡略化された見しだけだった。
けれど、関わった者たちはっていた。
あれは単なる帰還ではなかった。
犠牲のに成りった約束の継承だった。
その、ある町の図館で、しい職員として働き始めた若い女性がいた。
彼女の過を尋ねるはいなかった。彼女は子どもたちの読を伝い、特に静かで声をせない子に寄り添った。
折、に迷の絵を描いて見せた。
迷のには、いつもさな窓があった。
子どもが尋ねた。
「これは何?」
彼女はしだけ微笑んだ。
「迷っても丈夫、という印だよ」
その言葉を聞いた子どもは、したように笑った。
季節は巡り、京都の町では、あの事件を語るもなくなっていった。
だが、どこか静かな所で、彩佳は迷を描き続けていた。
には、いつもかれた窓がある。
そのに、さな文字が添えられていた。
「き延びることは、抵抗の1つの形」
はに、過を背負い続けなければならない。
けれど、き延びるという為そのものが、消されなかった証になる。
彩佳の物語は終わらない。
彼女がき続ける限り、あのさな声もまた、誰かので響き続ける。
消さないで。
その言葉を、彼女はこれからも忘れない。
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