"壁の中の合唱団" 第2話
美の部の鍵はいたままでした。
狭い部には、の晩の活の気配がそのまま残っていました。布団はきれいに畳まれ、炊飯器にはご飯が残され、通帳も印鑑も分証も引きしのにありました。くへくの部ではありませんでした。
同じ頃、恵里のでも騒ぎが起きていました。
母親はもできずに夜をかしていました。娘は練習が終われば、必ずまっすぐに帰ってくる子でした。し遅くなるも、必ず話を入れる娘でした。その恵里が、朝になっても帰ってこなかったのです。
母親は夜けと同に文化会館へり、交番へ駆け込みました。髪は乱れ、顔は青ざめ、娘の名を何度も呼び続けました。
裕子のも同じでした。
夫は最初、妻が実にでも寄ったのだろうとっていました。しかし、幼い2の子どもが「お母さんは」と泣き始めたことで、ようやく顔を変えました。裕子もまた、通帳も財布も分証もに残したままでした。
やがて、3つの族が文化会館に集まりました。
恵里の母親は会館の敷にへたり込み、娘の名を叫びました。美のアパートのは、けっぱなしの部ので踏みをしました。裕子の子どもたちは、事も分からず母親を探して泣き続けました。
そのになって、々はようやく気づいたのです。
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3の女性が、同じの夜、同じ所から、斉に姿を消したのだと。
文化会館は騒然となりました。館は団員たちを集め、敷のももくまなく探させました。ホール、控、広、建設のしいホールの事現まで調べました。しかし3の痕跡はどこにもありませんでした。
族たちは川崎警察署へ向かいました。
通報を受けたのは、その30歳だった刑事、健でした。刑事になってまだ数の若い男でした。
当初、警察署内の空気はそれほどいものではありませんでした。
「の女が3、自分のでてったんだろう」
そんな言葉も交わされました。当の川崎は、が入ってきてはていくことが常の町でした。職を変えるため、借から逃れるため、しいを求めて、黙って町をるもなくありませんでした。
携帯話もまだ般ではない代です。連絡が途絶えたからといって、すぐに事件だと断定することは難しかったのです。
しかし、の考えはし違っていました。
彼は族たちと1ずつ向きい、丁寧に話を聞きました。聞けば聞くほど、胸の奥にいものが沈んでいきました。
裕子は夫と子どもを持つ主婦で、族を置いて消える理由がありませんでした。美は来、母親の還暦祝いのために実へ帰る幹線の切符まで買っていました。
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恵里は病気がちの母親を1残して、どこかへくような娘ではありませんでした。
何より、3とも通帳、印鑑、分証を部に残していたのです。
くへ旅つなら、そんなことはしません。
は警察帳に几帳面な字でき込みました。
3、同刻、同じ所で失踪。荷物、、分証、すべて残置。自発失踪とは考えにくい。
それからは、文化会館周辺を何も歩き回りました。3が歩いたという正から通りまでの暗いも、最終バスの留所も、くのタクシー会社も、も、軒軒聞き込みました。
「あの夜、女性3を見ませんでしたか」
「あのに鳴や争う声を聞きませんでしたか」
しかし返ってくる答えは、どれも同じでした。
「さあ、とても静かな夜でしたよ」
管理の証言も揺らぎませんでした。3は笑いながら敷を横切って、正の方へ向かった。それだけでした。
会館には築事を請け負う作業員も入りしていました。はその点も帳にき留めましたが、事現は常にの入りがある所で、決定ながかりはつかめませんでした。
やがて捜査は壁にぶつかりました。
目撃者もなく、遺体もなく、がかりもない。
族はにビラを貼り、テレビ局にも訴えました。唱団のメンバーもしばらくは3の無事を祈り、集まるたびに空席を見つめました。
けれど、は無に流れました。
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