2021年秋、名古屋の高校生5人は、廃れた農村建築を記録する学校プロジェクトのため、岐阜県の山中にある古い廃農場を訪れた。 崩れかけた母屋、苔むした倉庫、森に飲み込まれた敷地。そこで彼らが見つけたのは、まるで人の形をしたように歪んだ一本の杉の木だった。 不気味なこぶの中央には、小さな裂け目があった。 ライトを当てた瞬間、木の奥に見えたのは、自然のものとは思えない白い影。警察の調査によって、その木の内部から、人間の骨格が発見される。 遺骨の身元は、20年前に「東京へ行った」とされ、行方不明になっていた22歳の女性・南沙織。 彼女は本当に自分の意思で農場を去ったのか。なぜ遺体は木の中に飲み込まれていたのか。そして、当時農場にいた父子は何を隠していたのか。 20年間、年輪の奥に閉じ込められていた少女の秘密が、一本の木によって静かに語られ始める――。