"田舎姑の一億円裁き" 第12話
かつて同じを見ていたはずの2のには、もはや信と憎悪しか残っていなかった。
翌朝、崩壊はさらに加速した。
健太が恐る恐る社すると、オフィスの空気はらかに変わっていた。
昨まで彼を社と持ちげていた社員たちは、よそよそしい態度で巻きに彼を見るだけだった。
誰も彼に話しかけてこない。
誰も彼の指示を仰ごうとしない。
彼がもはやこの会社のトップではないことを、誰もがっていた。
レナもまた、別の獄をわっていた。
スマートフォンには、昨のパーティーに参加していた友や同僚から、ひっきりなしにメッセージが届いていた。
「変だったわね」
「話は聞いたわよ」
っぺらい同の言葉。
しかしその裏には、彼女の失墜をぶ悪に満ちた好奇が透けて見えた。
彼女が今まで築きげてきた華やかな関係は、夜にして崩れった。
誰もがのひらを返したように、彼女から距を置き始めたのだ。
孤。
それは、プライドのいレナにとって、ぬことよりもつらい罰だった。
午になると、会社の主な取引先から、相次いで契約見直しの連絡が入った。
友商事をはじめとする企業が、斉にを引いたのだ。
嵐専務が裏でを回していることは、を見るよりらかだった。
会社の経営は、もはや完全に麻痺状態に陥った。
広告
絶望の淵にたされた2のもとへ、追い打ちをかけるように1通のメールが届いた。
差は、佐藤かよ子。
件名は、「臨株主総会催のご通」。
メールには簡潔な文面で、こう記されていた。
株主として、臨株主総会の催を求いたします。
は午10。
所は貴社オフィスにて。
議題はただ1つ。
健太とレナは息をのんで、最の文に目を落とした。
代表取締役佐藤健太の解任、及び任取締役の選任について。
それは刑宣告にも等しい通告だった。
かよ子は彼らに、考えるも、言い訳をするも、逃げるすら与えるつもりはなかった。
復讐の刃は、容赦なく彼らの喉元に突きつけられていた。
翌朝午10。
ケンタテクノロジーズのガラス張りの会議は、凍てつくような緊張に包まれていた。
代表取締役である健太、レナ、数名の役員たちがい表で席についている。
しかし、この部の真の主は彼らではなかった。
座に静かに腰をろしているのは、佐藤かよ子。
その隣には、顧問として松田弁護士が控えている。
かよ子は今、品格のある黒の着物姿だった。
それはまるで、これから始まる儀式を取りう神官のようにも見えた。
その佇まいには、無を言わせぬ威厳と、絶対な支配者の空気が満ちていた。
「定刻となりましたので、これより株式会社ケンタテクノロジーズの臨株主総会を会いたします」
広告
松田弁護士の事務な声が、静まり返った内にく響いた。
「本の議は株主であります佐藤かよ子様にお願いいたします」
かよ子はゆっくりとちがった。
その線は、誰にも向けられることなく、ただ虚空の点を見つめている。
「議を引き受けいたします。それでは速、議案の審議に入ります」
声は驚くほど静だった。
切のが乗っていない。
そのの欠如こそが、彼女のりのさを物語っていた。
「第1号議案。代表取締役佐藤健太氏の解任議案について、本議案の提案理由をご説いたします」
かよ子は元の分いファイルをいた。
そこには数ヶにわたって集めてきた、健太の経営者としての怠と失敗の記録があった。
売と経費の推移。
資の流れ。
会社カードの利用履歴。
レナのSNSに投稿された華やかな活と、会社の経費細。
級ブランドでの買い物。
ファーストクラスでの旅。
連夜のパーティー費用。
そのくが、交際費や福利費といった名目で会社の経費から支払われていた。
「これらは経営者としてあるまじき為であり、の株主、そして何より真面目に働く従業員に対するな背任為であります」
かよ子は1つ1つの事実を、淡々と、しかし容赦なく突きつけていった。
健太は顔を真っ赤にして俯き、レナは血の気を失った真っな顔で震えていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
母の小さな食卓
三年ぶりに実家へ帰った直人は、母の誕生日の食卓に、ご飯と味噌汁、漬物しかないことに驚く。冷蔵庫もほぼ空なのに、玄関には弟へ渡す高価なりんごが三箱も積まれていた。 さらに母の通帳には、弟へ毎月八万円を送った記録が残されていた。弟ばかりを優先する母への古い不満がよみがえるが、その金は、直人が失業した三年前から、息子・悠人の学費として渡されていたものだった。裡の顔|親子関係|修羅場2.8万字5 16 -
完結第16話
夫の不倫相手の娘を9年育てた私の離婚
「離婚します。息子2人は連れていきます」 そう告げた雪に、夫と義母は11歳の理子まで連れて出ろと言い放った。だが理子は、雪の親戚の子ではない。夫が不倫相手との間にもうけ、9年前に雪へ押しつけた実の娘だった。 血のつながらない理子を母として育ててきた雪。ところが夫は、再び理子の実母と関係を持ち、3人の子どもをすべて雪に背負わせて「自由」になる計画を進めていた。 しかし二人は知らなかった。雪と理子の間に法的な親子関係がないことが、彼らを逃げ場のない立場へ追い込む最大の切り札になることを。嫁姑|夫婦|真相|ATM扱い|親子関係2.4万字5 417 -
完結第13話
長女の命日、夢に現れた娘が告げたこと
長女・真紀の命日、納骨堂へ向かう途中で眠った佳代の夢に、亡き娘が現れる。 「お母さん、私のところに来ないで。妹のところへ行って!」 胸騒ぎに従い次女・奈緒の家へ向かうと、夫と姑が奈緒名義のマンションを売らせようとしていた。1200万円の借金、腫れた手首、怯える孫。佳代は母娘を連れ出すが、夫から届いた一文によって、三年前の真紀の事故と奈緒が隠してきた秘密がつながり始める。 《真紀が死んだのを忘れたのか》 真紀はなぜ、あの雨の夜に車を走らせていたのか。亡き娘の言葉に導かれた母が、生きている娘を支配と罪悪感から取り戻す家族再生の物語。裡切られた|夫婦|親子関係|修羅場1.8万字5 868 -
完結第14話
赤ちゃんの声が聞こえる姪が、夫の嘘を見抜いた日
生後一か月の息子を見た六歳の姪・美久は、「赤ちゃん、お父さんにひどいことをしないでって言ってる」と告げる。その言葉に、夫・徹だけが激しく動揺した。 育児をせず、暴言を重ねる夫に違和感を抱き始めた亜鳥。やがて美久が書斎で見つけた封筒から、亜鳥を被保険者、徹を受取人とする高額な生命保険の書類が発見される。 さらに調べると、徹には隠していた借金と別の女性がいた。夫婦|真実|真相|親子関係1.4万字5 41 -
完結第10話
31年間、母が捨てなかったマットレスの秘密
31年間、両親が頑なに使い続けてきた古いマットレス。中央は大きく沈み、父の腰痛も悪化していたが、母はなぜか買い替えを拒み続けていた。 息子のデイヴィッドは、両親を旅行へ連れ出した隙に新しいものと交換しようとする。ところが搬出業者から、「お母様を寝室へ入れず、まず一人で確認してください」と切迫した電話が入る。 マットレスの下から現れたのは、古い手紙や小さな靴、写真、ぬいぐるみ。そこには両親が31年間、息子にさえ存在を明かさなかった幼い娘・グレースの記憶が封じられていた。 娘を失った悲しみから逃げるため、名前すら口にしなくなった父。そして誰にも見つからない場所で、毎年娘へ手紙を書き続けた母。古い寝台が取り払われた日、沈黙の下に閉じ込められていた家族の時間が、ようやく光の中へ戻り始める。ミステリー|真実|真相|親子関係1.5万字5 430 -
完結第13話
娘夫婦に貸した愛車を「名義変更して」と言われた日
67歳の修司が、娘夫婦へ半年だけ貸した愛車。返却を求めると、婿は当然のように言った。 「もう僕の名義に変えてもらえませんか」 だが車はすでに420万円で査定され、600万円を超える新車の下取りに使われようとしていた。さらに、娘夫婦へ貸した住宅資金1000万円も、返済されたはずの30万円が一度も届いていない。 調べるほど現れる、消えた500万円の投資、偽造された「300万円返済済」の記録、そして亡き妻名義の借用書。 家族への援助は、いつから「もらって当然の財産」に変わったのか。修司は車の鍵だけでなく、自分の人生を決める権利まで取り戻そうとする。親不孝|絶縁|親子関係|金銭問題1.9万字5 602 -
完結第11話
夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた
母の検査代に必要な四千円すら用意できず、加奈は夫の勇人へ震える声で助けを求めた。ところが直後、口座へ振り込まれたのは四千円ではなく、四千万円。町工場で働き、擦り切れた靴を履き続ける夫が、なぜこれほどの大金を持っているのか。 帰宅した勇人が差し出したのは、十六年前に受け取った未公開株と、巨額買収を証明する書類だった。しかし、手続きは三か月も前から進んでいた。母の病気に苦しむ加奈へ、なぜ彼は何も話さなかったのか。 不信を募らせる加奈の前で、病床の母が静かに告げる。 「この子の秘密は、あんたと結婚する前から知っていたよ」 四千万円より重い、母と夫だけが抱えてきた十六年前の約束とは――。夫婦|親子関係|介護|金銭問題1.6万字5 547 -
完結第12話
「もう連絡しないで」と言った娘から48件の着信
夫と親友に裏切られてから22年、恵子は一人娘の美咲を育ててきた。ところが結婚を目前にした娘から、突然「これからは夫の家族だけを大事にする。もう連絡しないで」と告げられる。恵子は追いすがらず、「そう、ありがとう」とだけ答え、結婚式の手配から静かに身を引いた。 翌朝、美咲から届いた48件の着信。式場への連絡が途絶えたことで、娘が密かに親族席へ加えていた二人の名前が明らかになる。それは、22年前に恵子を捨てた元夫と、かつての親友だった。 なぜ娘は、母に黙って二人を招いたのか。親子の間に積み重なった沈黙をたどるうち、元夫が語った「母が父娘を引き裂いた」という、もう一つの過去が浮かび上がる。夫婦|相続|親子関係|金銭問題|修羅場1.8万字5 1241 -
完結第13話
父が開けた祝儀袋
昭和35年、結婚披露宴の最中、恭子は父が祝儀袋を次々と開けている姿を目撃する。豪華な宴も嫁入り道具も、すべて借金で用意されていたのだ。しかも婚家からは、「あなたの結婚のための借金」と返済まで迫られてしまう。 誰が望み、誰が支払うべき金だったのか。恭子が費用を一つずつ調べると、借入額には披露宴だけでは説明できない差額が見つかる。やがて明らかになったのは、父が娘の結婚と祝儀を利用して隠そうとした、もう一つの借金だった。 「家族のため」という言葉の陰で、誰かの人生や金を勝手に使ってよいのか。見栄と古い家族観に抗い、自分たちの暮らしを取り戻そうとする一人の女性の物語。時代|歴史|昭和|親子関係1.9万字5 198