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"赤い口紅と信託離婚" 第9話

調では、婚の、慰謝料300万円、財産分与、今切の直接連絡禁止を求める方針だった。

第1回期、俺は席せず、原先が代理として席した。

のり子は本席した。

のり子はすべてを認めたという。

岡崎との貞。

退職を自分の計画に使おうとしていたこと。

40の結婚活を軽したこと。

慰謝料300万円。

財産分与として現2000万円相当。

信託財産2700万円については、受益者が俺1に指定されているため、財産分与の対象から除された。

自宅は売却せず、のり子が当面み続けることを認めた。

のり子の活基盤を完全に破壊することは、俺の目ではなかった。

のり子に与えるべきものは、経済な破滅ではない。

事実のさだった。

原先居を訪れた。

「のり子さんから、お宛てのを預かっている」

俺は封筒を度だけに取った。

のり子の丁寧な跡で、「週郎さんへ」とかれていた。

しばらく見つめた、俺は封筒をけずに返した。

原先、処分してください。今、のり子の言葉を受け取りたくありません」

「わかった」

はそれ以何も言わなかった。

その夜、俺は居のリビングで、本酒を1杯だけ注いだ。

40勤めた会社の同僚が退職祝いに送ってくれた酒だった。

な液体が喉を通ると、胸の奥にさなが灯った。

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俺の40は静かに終わった。

だが、俺のは続いていく。

終わりと続きが、ここで切り分けられたのだとった。

婚調から3か

俺は居での活にしずつ馴染んでいた。

朝、自分で噌汁を作る。

聞を読む。

昼は所の堂で定べる。

は図館へき、俳句の本を読む。

退職に始めた俳句教では、毎週にメンバーと集まり、持ち寄った句を読みった。

料理は最初、目玉焼きと噌汁だけだった。

のり子が40作ってくれていた料理を、俺はしずつ覚え直した。

汁の取り方。

だし巻き卵の巻き方。

里芋の皮の剥き方。

失ってから初めて、のり子がどれだけのを積みげてくれていたのかを具体った。

俳句教のメンバーに、子さんという女性がいた。

59歳の未だった。

2に夫を病で見送り、趣として俳句を始めたという。

初めて隣の席になった藤さんは俺の句を見て言った。

川さん、このの静けさがよくていますね」

その言葉には、余計な踏み込みがなかった。

それがよかった。

、数で喫茶くうち、俺と藤さんは自然に話すようになった。

藤さんはくなった夫との々を静かに語った。

俺も、婚のことを簡潔に伝えた。

彼女は「変でしたね」とだけ言った。

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それ以、聞かなかった。

痛みの種類は違っても、失ったの流れ方はどこか似ていた。

週に1度、俺と藤さんはさなレストランで事をするようになった。

というより、半を静かに歩く旅の仲のような関係だった。

やがて1が過ぎ、俺は子さんと入籍した。

さな事会を、州の温泉宿でいた。

な式ではない。

の友と、静かな卓を囲んだだけだった。

その、共通のから、のり子の況を聞いた。

のり子は実に戻り、母と暮らしているという。

パート先は退職し、実くのさな堂で働いているらしい。

岡崎拓也は、婚約者との結婚準備銭トラブルが表面化し、破談になったという。

のり子はにこう話したらしい。

「あの、週郎が退職緒に温泉へこうと言ってくれた。素直に答えていれば、全部違ったかもしれない。あれが最会だったんだと、で気づいた」

俺はその話を、静かに聞いた。

のり子に会いにくつもりはない。

連絡が来ても、直接会うつもりはない。

のり子が背負うさは、のり子自が選んだものだ。

俺がそれを軽くしてやる必はない。

夜、居のリビングで、藤さんが言った。

くの神社に梅を見にきませんか。咲きの梅があるそうですよ」

んで」

俺はそう答えた。

窓のには、の夜景が広がっていた。

藤さんは湯呑みのお茶をゆっくりすすった。湯呑みの縁に、の跡がついた。

俺はそのを見つめ、藤さんのを取った。

の指先は、し温かかった。

若い頃にのり子と見げた夜空と同じが、今もくに見えている。

けれど、俺はもう過へ戻らない。

のり子が自分の選択のさを背負うのは、のり子のだ。

俺のは、ここから先の穏やかな々を積みねていくことだ。

俺は湯呑みに残った最み、藤さんのをもうしだけく握った。

― 完 ―

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