"青いハンカチの花嫁" 第4話
健の母・慶子が、たい声でをいた。
「ちょっと、由美さん。みっともない真似はやめてちょうだい」
静まり返った披宴会に、慶子の甲い声が響いた。
「こんなの自由なのところで何をしているの。健、く連れ戻しなさい」
その言葉には、俺へのらかな見しがあった。
義母になるはずの女性のたい態度に、由美の親族たちが斉に眉をひそめる。
しかし由美は、慶子の言葉など聞こえていないようだった。
震えるが、俺の差しした青いハンカチに触れる。
10という歳ですっかりあせている。それでも端の方には、赤黒い染みが洗っても落ちずに残っていた。
「この隅にある、さなの刺繍……」
由美はハンカチを両で包み込むように持ち、ぽつりと呟いた。
「私が学の、庭科の授業で初めて縫ったものです。の……」
会が再びきくざわめいた。
健の顔が、さらに気に変わる。
「ち、違う。そいつが盗んだんだ」
健が裏返った声で叫んだ。
「俺が切に持っていたのに、そいつが嫉妬して盗みしたんだよ。子のくせに、俺の幸せを妬んで」
健は俺の胸ぐらを掴もうと乱暴にを伸ばした。
しかしそのが届くに、由美が俺の子のにちはだかった。
純のウェディングドレスが、俺をかばうようにきく広がる。
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「触らないで」
由美のい拒絶の声に、健は弾かれたようにを止めた。
俺のが、しだけ救われた瞬だった。
由美は、健の嘘ではなく、俺の真実を信じようとしてくれている。
「健」
俺は静かにをいた。
りはなかった。
ただ、い呆れとしみがあった。
「おはいつも爪が甘いな」
健はぎくりと肩を震わせた。
「俺は今、すべてを墓まで持っていく覚悟でここに来た。おが由美さんを本当にしているなら、それでいいとっていた」
由美の父・正社が、鋭い線を健に向けた。
「けれど俺は聞いてしまったんだ。披宴が始まる、控の裏で」
今の昼過ぎ、俺はの親族よりしく会に到着していた。スタッフの気遣いで、目のない静かな通の奥で休ませてもらっていた。
そこは郎側の親族控のすぐ裏だった。
壁1枚隔てた向こう側から、健と慶子の声がはっきりと聞こえてきた。
最初は結婚式の段取りの話だとっていた。
しかし聞こえてきた会話は、を疑うような内容だった。
「本当にうまくやったわね。あの娘、完全にあなたを命の恩だと信じ込んでいるわ」
慶子の弾んだ声。
「ああ。あの子の馬鹿が黙っているおかげで計画通りだよ」
健の笑うような声に、俺は暗い通で息を止めた。
「結婚さえしてしまえばこっちのものだ。
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正さんの会社も、あの広なも、全部俺たちのものになる」
「そうね。あちらのお父様にはく引退してもらわないと。認症にでもなれば、い施設に入れてしまえばいいのよ」
2の品な笑い声が、い壁越しに響いた。
「由美のことなんかどうでもいいさ。ただのづるだよ。俺にはがいるしな」
その言葉を聞いた瞬、俺ので何かが音をてて崩れ落ちた。
俺が失った。
誰にも言えずに耐え続けた10。
それはすべて、由美の幸せを守るためだった。
親友だと信じていた男は、俺のその願いを根底から踏みにじったのだ。
俺が控での会話を語り終えると、会はを打ったように静まり返った。
正社の顔には、静かなりが浮かんでいた。
「健君、今の話はどういうことかな?」
くい声が会に響く。
「で、でたらめです。この子の男が、がおかしくなって嘘をついているんです」
健は必に首を振った。
慶子も慌てて正社にすがりつこうとする。
「そうですわ。こんなの言うことなんて、信じないでください」
その見苦しい言い訳は、かえって2の焦りをはっきり浮き彫りにした。
「でたらめじゃない。証拠ならあります」
俺は子のポケットから、さなICレコーダーを取りした。
健がそれを見た瞬、歯が鳴る音が聞こえた。
俺は静かに再ボタンを押した。
そこから流れてきたのは、健と慶子の声だけではなかった。
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