"青いハンカチの花嫁" 第17話
母の震えるが、俺の腕に残るきな傷をそっと撫でた。
「あなたが事故に遭ってから、お母さん、ずっと仏壇ので謝っていたのよ。元気な体で産んであげられなくてごめんねって。でも違ったのね。あなたはこんなにも派に、自分のをきていたのね」
俺は静かに首を振り、母のさな背を撫でた。
「母さん、もう謝らないでくれ。俺は今、初めて自分のを誇りにえたんだ」
母は涙に濡れた顔をげた。
「はかなくなったけれど、俺の命はちゃんと由美さんの未来につながっていた。俺が失ったものは、決して無駄じゃなかった。だから母さん、もう自分を責めるのはやめてくれ。俺を産んでくれて、育ててくれて、本当にありがとう」
その言葉を聞いた母は、俺の膝に顔を埋めて声をげて泣いた。
10、母の背にのしかかっていたい字架も、ようやくろされたのだとった。
俺は、もう自分の役目は終わったとった。
由美は悪魔のから解放され、正社という派な父親に守られている。これからは本当ので、彼女の幸せをくから静かに祈ることができる。
俺は子の輪にをかけた。
これ以ここにいては、彼女のしいの邪魔になってしまう。
誰にも気づかれないよう、静かに会をろう。
そうって輪をゆっくりかそうとした、そのだった。
広告
「浩司さん」
背から凛とした声が俺を呼び止めた。
子を止め、静かに振り返る。
そこには、純のウェディングドレスを着た由美が、まっすぐ俺を見つめてっていた。
彼女の瞳には、さっきまでのりやしみはもうなかった。
あるのは、未来を見据えるような、く温かいだけだった。
由美は両で切そうに、あのあせた青いハンカチを握りしめていた。
そしてゆっくりと俺の子のまで歩み寄ってくる。
ドレスの裾が絨毯をこするかすかな音が、静かな会に響いた。
由美は俺の目のでち止まると、静かにしゃがみ込み、俺と目線をわせた。
「どこへくんですか?」
その声はしだけ震えていた。
「私の命の恩さん。私たちのは、まだ始まったばかりですよ」
その言が、俺の止まっていた10の計の針を、再びきくかした。
「由美さん、俺はもう、自分の役目は終わったとっているんだ。君はあの恐ろしい嘘から解放された。お父さんもいる。君にはこれから、誰にも縛られない自由で素らしい未来が待っているんだよ」
俺は努めて穏やかな声で言った。
俺のような子の男がそばにいれば、彼女のに暗いを落としてしまう。そのいが、まだのどこかに残っていた。
しかし由美はさく首を横に振った。
広告
「私の未来は、10のあのからずっと、あなたと共にありました」
由美は両で包んでいた青いハンカチを、俺の腕の傷跡にそっと当てた。
「あなたが私をトラックから突きばしてくれた瞬、私の命はあなたからもらったものです。そしてあなたが、自分のプライドを捨ててまで私のために1でをかぶり続けてくれた10。そののさを、私は忘れません」
由美のから、温かい体温が伝わってくる。
「健さんの嘘に気づけなかった私を許してください。あなたの孤独に気づけず、本当にごめんなさい」
「謝らないでくれ」
俺は由美の震えるを、自分のでそっと包み込んだ。
「君がずっと笑顔でいてくれた。それだけで俺の10は分に報われていたんだ。俺の犠牲なんて、しも気にする必はない」
「犠牲だなんて言わないでください」
由美のい声が、俺の言葉を遮った。
「私はあなたと緒に笑いたいんです。あの2通目のにいた気持ちは、のも今も、しも変わっていません」
由美は粒の涙を流しながら、それでもしっかりと俺の目を見つめた。
「あなたが子なら、私があなたのになります。だからもう、私のために自分を犠牲にするのはやめてください。私の本当の幸せは、あなたと緒にきることです」
その言葉を聞いた瞬、俺の胸の奥で、10ずっと凍りついていた氷が音をてて溶けていくのをじた。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
団地に残された17通
毎朝5時、誰よりも早く団地へ来て、廊下も階段もごみ集積所も黙って掃除してきた61歳の藤本志津江。 13年間続けてきた仕事は、ある日突然、31世帯の署名によって終わりを告げられる。理由は「住民の生活をのぞいている」「勤務時間外に声をかけすぎる」というものだった。 志津江は反論しながらも、自分の善意が誰かにとっては重荷になっていたことを知る。 そして契約終了が決まった直後、清掃用具庫から見つかったのは、長年誰にも届かなかった17通の手紙だった。 その中には、15年前に団地で起きた火災と、当時責任を負わされた元管理人、そして亡くなった女性が残したはずの言葉が含まれていた。 志津江は本当に住民を見張っていたのか。 17通の手紙は、なぜ用具庫に残されていたのか。 そして、団地が長年隠してきた火災の真相とは――。因果応報|人生逆転|真実1.8万字5 465 -
完結第8話
孫の一言で、三億円の家を売りました
72歳の和子は、7歳の孫が配達員に「お金を払ってるんだから、ありがとうって言わなくてもいい」と言うのを聞き、言葉を失った。さらに48歳の息子・健一まで「間違ってない」と笑う。健一一家が12年間家賃0円で暮らしている一戸建ては、和子が1億4800万円で購入した和子名義の家。今では査定額が約3億円になっていた。ところが健一は、その家を当然のように「自分の家」と呼び、「どうせ将来俺が相続するんだから、名義を変えてもいいだろ」と言い始める。息子の言葉を聞いた夜、和子は1人で不動産会社に電話をかけた。12年間「家族だから」と与え続けてきた母親が、初めて大きな決断を下そうとしていた。因果応報|親不孝|親子関係|金銭問題1.2万字5 929 -
完結第9話
捨てられた妻の逆転人生
30年間家族を支え続けた妻・美智子に、夫は突然「もうお前は必要ない」と離婚届を突きつけた。 専業主婦として何も生み出していないと思われていた美智子は、何も言い返さず家を去る。 しかし翌朝、夫が残された古いファイルを開いた瞬間、30年間隠されていた衝撃の真実が明らかになる。 会社を支えていた取引先、危機を救った技術、築き上げた成功――そのすべての裏側には、誰にも知られず夫を支え続けた美智子の存在があった。 「家政婦」と呼ばれた妻が、本当は誰よりも会社と家族を守っていた理由とは。 そして、すべてを失った夫が初めて気づいた、取り返せない30年間の後悔とは――。因果応報|夫婦|熟年離婚1.4万字5 2735 -
完結第11話
22年目の母席
7歳の時から、美緒を育ててきた高瀬京子。 血のつながりはなくても、熱を出した夜にそばにいたのも、弁当を作ったのも、卒業式や成人式に付き添ったのも、すべて京子だった。美緒もまた、いつしか彼女を「お母さん」と呼ぶようになっていた。 しかし結婚式を前に、22年間ほとんど姿を見せなかった実母・麗子が現れる。 実の母親という分かりやすい肩書。結婚祝いの200万円。そして、相手方の家族が求める“普通の形”。 やがて美緒は、京子に告げる。 「今回は、麗子さんにお願いしたい」 さらに結婚式当日だけは、自分を「京子さん」として扱ってほしいと頼まれた京子。22年間積み重ねてきた日々は、たった一言で母親の席から外されてしまう。 本当の母親とは、産んだ人なのか。それとも、そばに居続けた人なのか。 娘の結婚式を前に、京子が初めて自分の傷と向き合う、静かな家族の物語。因果応報|親子関係1.7万字5 1935 -
完結第10話
墓前の偽息子
夫の命日、文子は一人息子の誠と並んで墓前に手を合わせていた。 その時、文子の携帯に「誠」から電話がかかってくる。 しかし、本物の誠は今、すぐ隣で父の墓に手を合わせていた。 電話口の男は、息子のふりをして言った。 「母さん、仏間の金庫の暗証番号を教えてくれないか」 相手は、文子の家に金庫があることも、最近暗証番号を変えたことも知っていた。さらに電話の向こうから聞こえてきたのは、誠の妻・和子の声だった。 これはただの詐欺なのか。 それとも、家族の中に裏切り者がいるのか。 亡き夫が残した言葉を胸に、文子は慌てず、静かに確かめることを選ぶ。 そして家へ戻った母子が見たのは、想像もしなかった妻の本性だった――。因果応報|親子関係1.5万字5 2702 -
完結第12話
赤身を笑った女の末路
15年前、木村実乃里は“親友”を名乗る女・高子に夫を奪われた。 妊娠したと泣きながら告げてきた高子。沈黙する夫。幼い娘を連れ、実乃里はすべてを失ったような思いで家を出た。 それから15年。 実乃里は娘・由美香を育てながら、小さな店から会社を立ち上げ、ようやく穏やかな日々を手に入れていた。 そんなある日、社会人になった由美香が、初任給で母を回転寿司へ連れていく。ささやかで幸せな食事の席で、実乃里は15年ぶりに高子と再会する。 「相変わらず貧乏臭いわね」 「うちの子は国家公務員なの」 昔と変わらず人を見下し、勝ち誇る高子。 しかし次の瞬間、由美香が静かに言った。 「ママ、あの人クビにしたら?」 高子が働いている“高級ショップ”の本当の経営者。 15年前に壊されたはずの母娘の人生。 そして、高子自身が知らなかった本当の立場。 回転寿司の小さなテーブルで、15年越しの因果が静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.8万字5 2788 -
完結第12話
7階に戻るな
70歳の高橋恵子は、夫を亡くしてから6年、都心のマンションで静かに暮らしていた。 ある夕方、いつものように買い物帰りのエレベーターに乗った彼女は、隣人の老人・木村から一枚の紙切れを渡される。 「病気のふりをして、次の階で降りろ。絶対に7階へ戻るな」 意味も分からないまま指示に従った直後、エレベーターの中で木村は命を落とす。さらに残された紙には、「このマンションでは、誰も信じるな」と書かれていた。 なぜ木村は恵子を逃がしたのか。なぜ7階へ戻ってはいけなかったのか。 やがて事件は、6年前に事故死したはずの夫・優一郎の死、息子夫婦の秘密、そしてマンションから消された5分間へとつながっていく。 たった一枚の紙切れが、穏やかな老後に隠されていた真実を暴き出す――。因果応報|人生逆転1.8万字5 1581 -
完結第12話
捨てられた夏の肖像
次女・夏が生まれた日、夫は赤ん坊の顔を見るなり言い放った。 「この子は俺の子じゃない」 長女は夫にそっくりなのに、次女はまったく似ていない。たったそれだけの理由で、私は浮気を疑われ、DNA鑑定で親子関係が証明されても、夫と義母は夏を認めようとしなかった。 そして私は、生まれたばかりの次女だけを連れて家を追い出される。 残された長女には会えないまま、10年が過ぎた。 ところがある日、成長した夏とショッピングモールを歩いていた私は、夫と義母、そして長女と偶然再会する。 そこで彼らは、夏の姿を見て言葉を失った。 10年前、「他所の子」と罵られた次女には、彼らが知らない大きな秘密があった――。因果応報|人生逆転1.8万字5 1083 -
完結第12話
近道看板の逆襲
海の近い小さな村で、家族と農業を営む大平浩。 数年かけて育ててきたトウモロコシ畑が、ある日突然、何者かの車に踏み荒らされていた。畑の入口には、勝手に置かれた「国道への近道」の看板。何度撤去しても、立入禁止の表示を立てても、被害は止まらない。 やがて犯人は、入院中の村長の息子・光だと判明する。 「この村のものは俺のもの」 そう言い放つ光は、畑を道路のように使い続け、ついには浩の娘まで危険な目に遭わせる。警察に訴えても、相手が村長の息子というだけで話は曖昧に流されてしまう。 証拠がなければ、誰も動かない。 そう悟った浩は、畑に防犯カメラを設置し、光が自ら罠にはまる“ある看板”を立てることにした。 家族の畑を踏み荒らした男に待っていた、静かな因果応報とは――。因果応報|修羅場1.8万字5 1128 -
連載中第13話
20億追放妻の封筒逆転
斎藤グループ創業家の長男と結婚して5年。跡継ぎを望まれながらも子どもに恵まれず、結菜は義実家の視線に耐え続けていた。 そんなある日、夫の愛人が妊娠したことを知らされる。しかも相手の女性は双子を身ごもっていた。義父母は結菜に離婚合意書を差し出し、20億円と引き換えに日本を出るよう命じる。 家族だと思っていた場所から、金で追い出されることになった結菜。だが署名の直前、彼女は誰にも言えない“ある事実”を知る。 何も告げず海外へ渡った結菜と、愛人との結婚式を迎えようとする元夫。 すべてが斎藤家の思い通りに進むはずだったその日、式場に一通の封筒が届く。 そこに記されていた真実が、夫と愛人の未来、そして斎藤家の後継者計画を静かに崩していく――。因果応報|人生逆転|不倫2.0万字5 5192