みかん小説
本棚

"桜袴の女組長" 第3話

だから私は、りをみ込んだ。

裏の世界できてきた私が、本気でればどうなるか。自分自番よく分かっている。だからこそ、簡単にはかない。母の言葉を胸に、ずっとそうしてきてきた。

式が終わり、保護者たちが体育館から庭へてきた。

は相変わらず穏やかな差しに包まれていた。庭の桜は満で、びらがに乗って、ゆっくりとっている。たちは、桜の族と記をしていた。

笑顔で写真を撮り族たち。

父親に抱きげられる子。

母親とをつなぎ、照れくさそうに笑う子。

祖父母に囲まれて、何度も名を呼ばれている子。

その景ので、結しだけ寂しそうにしていた。

私はしゃがみ込み、娘の目線にわせた。

「結も撮ろうか」

「うん」

さく頷いた。

私たちは桜のった。

私はスマートフォンを取りし、2で写真を撮ろうとした。破れた袖が写らないように角度を調する。結は精杯笑おうとしていた。

そのだった。

「……あら、まだいたの?」

から、再び礼子の声がした。

ゆっくり振り返ると、礼子が取り巻きたちを引き連れてづいてきていた。入学式が終わっても、彼女の気は済んでいないらしい。

「さっきはごめんなさいね」

礼子は表面な謝罪の言葉をにした。

広告

しかし、その目はまったく笑っていなかった。むしろ、私が黙っていることで、さらに楽しんでいるようだった。

「でも、本当にあなたみたいながこの学にいると困るのよ」

礼子は続けた。

「だって、学の品格ががるじゃない?」

取り巻きたちがまた笑い始めた。

私は何も言わなかった。

ただ、礼子を見つめた。

礼子は私の沈黙を勝利と受け取ったようだった。さらに調子に乗り、声をくする。

「娘さんも、お父さんがいないなんてかわいそう」

で、はっきりと言い放った。

「きっと将来、ろくなにならないわ」

の目に涙がにじんだ。

さな体が震えている。

私は娘を抱き寄せた。

「結丈夫よ」

優しく囁く。

けれど、礼子は止まらなかった。

「それに、あの袴」

礼子は私の破れた袖を指さした。

くなったお母様の形見なんでしょう?」

私の臓が、再びどくんとねた。

どうしてそれをっているのか。

私が黙っていると、礼子は得げに顎をげた。

「さっきのお母さんから聞いたのよ。でも正直、そんな古臭いボロを事にしているなんてね」

彼女はそこで度言葉を切り、わざとらしくため息をついた。

「お母様も国で恥ずかしがってるんじゃない? もっとまともな娘に育てればよかったって泣いてるわよ、きっと」

周囲から笑い声が聞こえた。

広告

その瞬、私の瞳からが消えた。

りがではなく、氷のようにたく体のを満たしていく。

空気が変わった。

私のから、極寒の威圧が漏れしたのを自分でもじた。庭のざわめきがのき、の音だけがやけに鋭く聞こえる。

くの桜のにいた鳥が、また斉にった。

ばたばたという羽音が響き渡る。

礼子が本能な恐怖でをすくめた。顔がわずかに青ざめる。

「な、何よ……」

震える声で言う。

私は静かにっていた。

拳を握りしめ、爪がのひらにい込むのをじながら、涙をこらえた。

で、母に、夫に、そして娘に誓う。

お母さん、ごめんなさい。

私は、あなたの言いつけを破るかもしれません。

でも、あなたを侮辱した者をこのまま許すわけにはいきません。

健太、ごめん。

普通の母親でいるって約束したけれど、今だけは許して。

を傷つけた者を、私は見逃せない。

私は娘のを優しく握り返した。

「結丈夫よ」

さく囁く。

そして、ポケットののスマートフォンに静かに指を伸ばした。

もうする必はない。

この女に、本物の恐怖を教えてやる。

私が何者なのか、らせてやる。

私は破れた袴の袖を見つめながら、い過していた。

この袴は、母が私の成式のために仕ててくれたものだった。

母は、私が20歳のに病気でくなった。

い闘病活のでも、最まで私のことを配していただった。

の窓辺で、母はい指で針を持っていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: