"祝儀袋と消えた花嫁" 第2話
「事実だし」
こうして冗談を言いいながら夕ご飯をべるのも、結婚式まであと数しかないのだとうと、胸がし締めつけられた。
私が言うのもなんだけれど、優也は優しくて真面目で、いい男に育った。
姉として。
そして、母のように見守ってきた者として。
私は笑顔で祝福してあげなければならなかった。
けれど、その夜の卓で私は、し気になっていたことをにした。
「そういえば、優也のお嫁さん。あかりちゃんだっけ」
「そう。あかり」
「結局、私、まだ会ってないんだけど丈夫なの?」
私が尋ねると、優也は困ったようにをかいた。
「うーん。あかりが別にいいって」
「別にいいって、そういうわけにもいかないよ。結婚式、もうすぐなのよ」
「どうしても忙しいんだって」
「話だけでもできないかな」
優也はし考えたあと、頷いた。
「そうだな。確かに話してみるよ」
私はほっとした。
ずっと気になっていた。弟の結婚相に、姉である私が度も挨拶をしていないのは、どう考えても自然だった。
本当なら、お嫁さんの方からも挨拶に来るものではないか。
そういかけて、私は慌ててので首を振った。
だめだめ。
偉そうに常識を語ってはいけない。
結婚の形も、族の距も、今はそれぞれだ。細かいことを言ううるさい姉にはなりたくない。
切なのは、優也が幸せになることなのだから。
広告
優也はスマートフォンをに取り、あかりちゃんへ話をかけた。
私は器を片付けるふりをしながら、しれた所にった。けれど、静かな部のでは、話の向こうの声がったよりもよく聞こえた。
「あ、もしもし、あかり」
優也の声はいつもよりし柔らかかった。
「優也? どうしたの?」
話から聞こえた女性の声は、最初だけるかった。
「あのさ、俺のお姉ちゃんがさ」
「え、姉ちゃん?」
その声が、しだけくなった気がした。
「まだ挨拶してないし、話だけでもって」
「はあ? なんで?」
私は台所で皿を持ったまま、わずを止めた。
話の向こうの声は、どんどん嫌になっていく。
「あのさあ、私、忙しいの。エステに美容にネイルでしょう? もう超忙しくて疲れてんの。この状態で急に優也のお姉ちゃんと話とか、無理でしょう?」
私は優也の背を見た。優也は困ったように肩をすくめている。
「あかり、しだけでいいから」
「嫁の変さ、独のお姉ちゃんには分かんないでしょうね」
その言葉が、まっすぐ私の胸に刺さった。
独のお姉ちゃん。
私は自分で選んで独でいるつもりだった。優也のためだけにを犠牲にしたと言うつもりもなかった。まだ結婚を諦めたわけでもなかった。
けれど、会ったこともない相にそんなふうに言われる筋いはない。
広告
「結婚式に向けて懸命頑張ってるのに、これ以疲れることさせないでくれる?」
私は弟に向かって、両でさくバツ印を作って見せた。
もういい。
無理に話さなくていい。
優也は私の仕に気づき、申し訳なさそうに頷いた。
「ああ、そうだよな。ごめん、ごめん。また今度にする」
話の向こうから、くで笑うような音が聞こえた。
「ふん」
通話が切れると、部に気まずい沈黙が落ちた。
優也はスマートフォンをテーブルに置き、苦笑いを浮かべた。
「聞こえてたよな」
私は皿をシンクに置き、わざとるく笑った。
「ごめん。タイミングが悪かったね」
「いや、ごめんね、姉ちゃん」
優也の顔には、嫁をかばいたい気持ちと、私に申し訳ない気持ちが混ざっていた。
「あかりちゃん、すごく疲れてたのね」
私はそう言った。
自分でもし無理をしているのが分かった。けれど、結婚式のに弟をにさせたくなかった。
優也はさく息を吐いた。
「普段はいい子なんだけど、々きつい言い方するんだ」
「あら、はっきり自分の見を言う女性って貴よ」
「いや、わがままなんだよなあ」
優也はさな声でそう呟いた。
私は何も答えられなかった。
わがままというか、し癖のそうな子だとった。けれど、結婚式の嫁がマリッジブルーで定になることは珍しくないのかもしれない。
私はしょんぼりした弟に笑顔を向けた。
「結婚式、伝いさせてね」
「……ありがとう」
広告
おすすめ作品
-
完結第17話
母の墓に立つ母
10歳の少年・ハルトは、3年間、亡き母の墓に通い続けていた。 しかし、イギリスへの養子縁組が決まったある日、最後の別れを告げるために訪れた墓前で、彼は見知らぬ女性と出会う。 その女性は、母と同じ顔をしていた。 「……お母さん?」 震える声で呼びかけた瞬間、女性の顔色が変わる。彼女もまた、ハルトの顔に信じられないものを見ていた。 なぜ、亡くなったはずの母と同じ顔の女性が墓の前にいたのか。 なぜハルトは、突然海外へ送られようとしているのか。 そして、彼の出生に隠された真実とは何なのか。 10年前に引き裂かれた恋、双子の姉妹、山奥で守られ続けた小さな命。 すべての秘密が動き出した時、少年は初めて、自分を守るために誰が何を犠牲にしてきたのかを知ることになる。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係2.6萬字5 13 -
完結第19話
いただきますのない食卓、私は家を出た
毎日朝晩 5 人分の食事を作り、家族の体調や好みを全部気にかけてきた 27 年。 だけど食卓に並ぶ温かい料理を前に、誰一人「いただきます」の一言も口にしない。 「私はもう、この家に必要ないのね」 静かにそうつぶやいた翌朝、私は荷物をまとめて家を出た。 当たり前にされ続けた愛情が、何も言われず消えていく悲しみの物語。 自分を犠牲にして家族のためだけに生きてきた全ての女性に届けたい一冊。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.9萬字5 446 -
完結第17話
支えを手放す日
【離婚後――私は静かに仕送りを止めた。何も知らない元夫は愛人との海外旅行から笑顔で帰国した――だが空港で呼び止められた瞬間、その笑顔は消えた】 二十年間、夫のすべてを陰で支え続けた私。 借金の返済、毎月の仕送り、住まいと車の支払い、夫が外で見栄を張るための費用…… 彼は私の善意を当然だと思い、感謝もせず愛人と海外旅行へ出かけた。 離婚を決めた私は、騒ぎ立てず静かにすべての支えを断ち切った。 ハワイから満面の笑みで帰国した元夫。 空港で私と対面した瞬間、彼の虚構の自由は一気に崩れ落ちる。 使えないカード、入れない家、売れない高級車、絶縁した娘、莫大な慰謝料請求。 「あなたの笑顔も自由も、私の善意の上に成り立っていただけです」 激情なく淡々と告げた一言が、彼に何より重く突き刺さる。 優しさは永遠に捧げ続けるものではない。自分を守るため、支えを手放すことは冷たさではない。 誰かの犠牲の上に安楽を得ている人へ、必ず心に響く物語です。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6萬字5 2109 -
完結第17話
砂の城の贅沢:見下した夫婦への逆襲劇
半年間、夫と義家族の侮辱に耐え、雑用係のように扱われてきた私。ついに離婚を告げられた直後、元夫は憧れの女医と再婚し、「お前はもう用済みだ、無能な主婦は俺の人生に不要」と嘲笑った。 だが彼は知らない。自分の実家の繁栄、手にした富と地位、所有するブラックカードは、全て私が裏で支援していたものだと。 傲慢な一言からわずか10分後、私は即座に義実家の全ての信用枠・ブラックカードを完全停止。彼らが当たり前のように享受してきた贅沢は一瞬で砂の城となり、隠し続けた横領犯罪も全て暴かれ、偽エリートの女医と共に絶望の底へ。 人を見下し、恩を仇で返した愚か者たちの、完全逆転復讐劇が今、完結する。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6萬字5 218 -
完結第5話
裏表のある嫁と、優しい次男嫁の差
65000 円の年金暮らしの私に長男嫁「頼られたくないんでw今すぐ絶縁して!」私「本当にいいのね?」長男嫁「え?」 夫が他界し、都内で月 6 万 5 千円の年金だけで慎ましく一人暮らしをしていた私。 長男が 38 歳で連れてきた婚約者は、初対面では明るく礼儀正しく、安心していたのに、入籍祝いにルクルーゼの食器セットを渡した瞬間、態度が一変した。 「結婚祝いは最低 100 万円の現金が普通」 年金生活の私を貧乏人と見下し、ソファにふんぞり返り「老後の面倒なんて絶対見ない、これから一切頼らないで」と言い放つ。 後に私が自転車にはねられ骨折入院、保証人が必要で仕方なく彼女に来てもらった時も、「わざわざ呼び出すなんて最悪」「入院費払えるんですよね?」と金のことばかり問い詰め、最後には「今すぐ絶縁しろ」と突き放した。 私は静かに録音機を起動し、「絶縁で本当に後悔しないの?」と確認するも、彼女は「年金暮らしの貧乏人なんて頼るつもりもない、絶縁でいい」と即答。 入院リハビリの日々、何も言わず買い物や家事を助けてくれた優しい次男嫁。車が故障し電車で大量の食材を運んでくれる姿を見て、感謝の気持ちから新車をプレゼントした。 その車を見た絶縁済みの長男嫁が突然家に押しかけ、大声で怒鳴り散らす。 共働きで子供二人抱える次男夫婦に高級車など買えるはずがない、私がお金を渡したのが許せないと責め立てる彼女。 私が夫から相続したマンション 1 棟、アパート 3 棟の家賃収入で、数千万規模の資産を持っている事実を話した瞬間、彼女の顔が青ざめる。 結婚したのは長男の年収 1300 万目当て、ブランド品や海外旅行、高級車に乗りたいだけだと平気で暴露した言葉を、玄関の陰に隠れていた長男が全部聞いていた。 金銭欲に狂った嫁との結婚は短期間で離婚に。慰謝料も財産分与もなし、今はコンビニバイトで暮らしていると聞いた。 一方、次男嫁と買い物に出かける穏やかな毎日が、私の一番幸せな時間になった。 人を金額だけで見下すと、最後に後悔するのは自分自身だ。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題6.8千字5 158 -
完結第27話
中卒の兄、結婚式で覚醒す
弟が名医として結婚式を挙げた日。 学歴至上の親戚たちは、医者の弟を持ちながら中卒でトラック運転手の俺を見下し、笑いものにした。 「こんな底辺な兄がいるなんて、恥ずかしいわw」 「せっかく医者になったのに、身内が足を引っ張る」 義父である大病院の院長まで、俺を蔑み、権力で圧しつけてくる。 誰もが俺を惨めな負け組だと決めつけたその瞬間―― ずっと黙っていた弟が、冷めた声で義父に告げた。 「院長。あなたはまだ、兄の正体に気づかないんですか?」 たった一言で、豪華な結婚式会場は一瞬で凍りついた。 彼らが馬鹿にした中卒の底辺兄。 実は、年商数百億の企業社長で、弟の夢を全部支えてきた男だった。 続々と入る国税局捜査、崩壊する権力、覆される階級。 学歴と肩書きだけで人を見下すエリートたちの顔面が、地に落ちる―― 最強兄の無双逆転、最後まで必見!因果応報|人生逆転|怒り|兄弟姉妹|親子関係4.1萬字5 1081 -
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 2685 -
完結第23話
鬼母の末路
3年ぶりにドイツから帰国した俺を待っていたのは、温かい食卓ではなかった。 真っ暗な部屋。止まった電気。震える妻。 そして、7歳の娘が笑って差し出したのは、お湯をかけただけの白米だった。 毎月50万円。 家族のために送り続けた金は、どこへ消えたのか。 その夜、俺は知ることになる。 家族を地獄に落としていたのは、他人ではなく――俺の実の母だった。怒り|祖父母と孫|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.4萬字5 1375 -
完結第27話
偽りの夫婦と奇妙な夜の声
結婚初夜、夫は疲労を理由に私を拒絶した。孤独な夜を過ごし眠りについた私だったが、真夜中、義母の部屋から漏れる不穏なうめき声に目を覚ます。優しそうな夫と上品な姑の裏に隠れた歪な秘密が、一夜の怪音から次々と暴かれる、家庭闇復讐物語。祖父母と孫|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係4.2萬字5 1039 -
完結第20話
黒いゴミ袋に詰まった十五年
離婚の日、義実家を出る私に義父が一袋のゴミを渡した。 「捨ててから行け」と冷たく告げられ、私は何も問わず黙ってその黒い袋を受け取った。 家を離れ、人目のない公園のベンチで袋を開けた数分後、私は中身を見て完全に声を失った。 そこに詰まっていたのは、十五年間誰にも顧みられなかった私の全てだった。怒り|祖父母と孫|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|絶縁|親子関係3.0萬字5 4171