"止められた12枚" 第6話
弓の言葉に、健と都は完全にみ込まれた。
弓がいなくなれば、自分たちののなるがなくなる。そうったのだ。
「いくら必なの?」
都がのめりになる。
「急をしのげれば丈夫です。1億円ほどあれば座の凍結を解いて、また資を回せます」
「1億円……」
「でもしてください。私には100億円が入ってくる予定があるんです。それさえ入れば、お義母さんのこの古いマンションを売って、都のペントハウスにお連れします。本当です」
「ペントハウス」
その言で、都の目が欲望にった。
1億円をせば100億円が入り、ペントハウスにめる。正常な判断など、できるはずがなかった。
に着くなり、都は寝に駆け込んだ。
そして壁にかけてあった古い額縁をした。その裏には、さな庫が隠されていた。
「お母さん、そこに庫があったのか」
健が目を丸くする。
「静かにしてちょうだい。これは私が、あんたのお父さんにも、あんたの嫁にも内緒で貯めてきた老資なのよ。ぬまでけるつもりはなかったけど、うちの嫁を助けるためには仕方ないわ」
都は震えるで暗証番号を押した。
い音とともに、庫の扉がく。
には黄ばんだ類封筒、の亀、のネックレス、現、通帳、保険の解約の類まで入っていた。
「これで全部で7000万円くらいにはなるはずよ。
広告
この通帳には私の保険の解約が入っているし、これは健の初節句のにもらったの指輪まで全部集めたものよ」
弓はので歓声をげた。
ったよりある。
だが表にはさなかった。
「お義母さん、本当にありがとうございます。でも……3000万円りません」
都は健を振り返った。
「健、あんたは何か持っていないの?」
「俺は何も持ってないよ。全部、彩子のカードで払ってたから」
その、健は何かをいついたようにスマートフォンを取りした。
「そうだ。消費者融なら」
普段なら迷惑メールとして扱っていた利の融業者に、健は自分から話をかけた。
無職で信用報も悪かったが、即で借りられる利の借は能だった。利は法だったが、今の健にはそんなことはどうでもよかった。
「もしもし。今すぐ3000万円振り込んでもらえますか。はい、利息が30%でも構いません。来には返せますから」
こうして1のうちに、都がかけて貯めた財産と、健が魂まで売るように借りた借をわせ、1億円が現と貴属の形でショッピングバッグに詰められた。
弓はそのいバッグを受け取り、激したように両で抱えた。
「お義母さん、健さん。本当にありがとうございます。この恩は忘れません。今すぐにって入してきます。
広告
座の凍結が解け次第、すぐに倍にして返しますから」
「くってらっしゃい。帰りに美しいものでも買ってきてね」
「弓、してる。く帰ってきてくれ」
健と都に見送られ、弓はマンションをた。
エレベーターのドアが閉まった瞬、彼女の表は酷に変わった。
鏡に映る自分の顔を見ながら、元を歪める。
「馬鹿な連。100億円ですって。ペントハウス? 笑わせるわ」
1階にりると、弓はタクシーではなく、あらかじめ配していたレンタカーに乗り込んだ。
スマートフォンのSIMカードを抜き取り、窓のの排溝に投げ捨てる。
「成田空港までお願いします」
は夜のへ消えていった。
彼女が残したのは、空っぽの庫と、に負えない借だけだった。
同じ頃、彩子のオフィス。
彩子は弁護士と向かいって座っていた。机のには、分い類の束が置かれている。
「代表、元姑様と元ご主様名義の座履歴を確保しました。そして今朝、ご主様名義で消費者融から3000万円が引きされた記録も確認しました」
弁護士は類をめくりながら言った。
「おそらく詐欺師に渡ったものとわれます」
彩子は苦々しい表でコーヒーをんだ。
「予通りね。最まで愚かで助かったと言うべきかしら」
「弓という女性は、今頃空港に向かっているでしょう」
「国阻止の申請はしておきました。ただ、捕まえるのは警察の仕事ですもの。私たちは第2段階に入りましょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
湖底の五本柱
1999年2月、記録的な豪雪に閉ざされたダム建設地・鏡谷で、3人の男が忽然と姿を消した。 彼らが乗っていた黒いセダンは、エンジンをかけたまま雪原に残されていた。ドアは開き、所持品もそのまま。だが、車の周囲には人が降りた足跡が一つもなかった。 やがて龍鳴寺の床下から見つかった1台のカメラが、事件を思わぬ方向へ動かしていく。そこに写っていたのは、消えた3人と作業員たちが、吹雪の中で何かを巡って激しく対立する姿だった。 さらに、ダムに沈むはずだった村からは、古い拳銃、止まった懐中時計、血に染まった作業車、そして「五つの柱」という不気味な言葉が浮かび上がる。 これは単なる失踪ではなかった。 ダムの底へ沈められようとしていたのは、村の風景だけではない。30年前に隠された罪と、ひとりの老人が命をかけて仕掛けた復讐だった。 雪の中で消えた男たちは、どこへ行ったのか。 そして、水没した地下から響く時計の音は、何を告げていたのか――。ミステリー|行方不明|金銭問題3.0萬字5 15 -
完結第14話
追放嫁と姑の鍵
8年間、夫の連れ子を育て、病気の姑を支え、家族のためだけに生きてきた美咲。 しかし、夫・健二は突然、8年前に子どもを捨てて出ていった前妻リナを家に呼び戻す。実の母親が帰ってきたという理由で、美咲は離婚届に判を押し、何も持たず家を出ることになった。 ベランダの花も、子どもたちの絵も、彼女が守ってきた居場所も、すべてリナの手で消されていく。 そんな美咲に、姑の芳江がそっと差し出したのは、古びた1本の鍵だった。 「神戸の元町の裏通りに、空き店舗が1つある。行って、開けてご覧」 8年間、足を引きずり、弱々しく見えていた姑が、なぜその鍵を持っていたのか。 そして、家を追い出された美咲を待っていた“本当の居場所”とは――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 78 -
完結第19話
青いハンカチの花嫁
親友の結婚式に招かれた浩司は、車椅子で会場の隅に座っていた。 10年前、雨の交差点で車に轢かれそうになった少女を助け、代わりに自分の足の自由を失った浩司。だが彼は、その少女の未来を守るため、自分が命の恩人であることをずっと黙っていた。 ところが披露宴の最中、花嫁の由美が突然、浩司を見つめて呟く。 「ずっと探していました」 彼女の手には、10年前の事故現場に残された青いハンカチ。浩司の腕には、消えることのない傷跡。 その瞬間、新郎・健一の顔色が変わる。 本当の恩人は誰だったのか。なぜ浩司は10年間も沈黙していたのか。そして、親友を名乗る男が隠し続けてきた嘘とは――。 祝福に包まれるはずだった披露宴で、10年前の真実が静かに暴かれていく。因果応報2.8萬字5 631 -
完結第9話
赤い口紅と信託離婚
定年退職の日、香川週一郎は40年勤めた会社を静かに去ろうとしていた。 その日は、妻・のり子の誕生日でもあった。だが朝、赤い口紅を引いて出かけていく妻を見ながら、週一郎はすでにすべてを知っていた。 大学時代の恋人との再会。共通口座からの不審な出金。退職金を使った「別人生」の計画。 のり子は、夫が何も気づいていないと思っていた。 しかし週一郎は半年間、何も言わずに証拠を集めていた。そして退職金2700万円は、妻が一切触れられない場所へ移されていた。 その日の夕方、妻が帰宅した時、家から夫の痕跡だけが消えていた。 ダイニングテーブルに残されていたのは、手紙と信託公正証書、そして離婚調停申立書。 翌朝、銀行の窓口に立ったのり子は、初めて知ることになる。 夫が怒らなかった本当の理由を――。因果応報|夫婦|金銭問題1.4萬字5 1030 -
完結第8話
残高4800円の老後
退職金2200万円。 38年間まじめに働き、ようやく手にした老後の安心資金。宮田哲夫は、自分の人生を「堅実に生きてきた」と信じていた。 投資詐欺に遭ったわけでもない。ギャンブルに溺れたわけでもない。派手な贅沢をした覚えもない。 それなのに8年後、通帳に残っていたのはわずか4800円だった。 年金13万円の暮らし。車、ゴルフ、息子への援助、家の修繕、物価高――。ひとつひとつは“普通”に見える出費が、退職金を静かに削っていく。 妻のせつ子は何度も家計を見直そうとした。だが哲夫は「なんとかなる」と言い続け、通帳から目をそらした。 そしてある朝、せつ子は家を出ていく。 老後破産の本当の原因は、お金の使い方だけではなかった。哲夫が最後に気づいた、夫婦にとって一番大切なものとは――。人生逆転|退職金|金銭問題1.2萬字5 1049 -
完結第23話
見下した作業服の裏にある真実の誇り
昔、「服が汚い」「職人の家柄は恥ずかしい」と、質素な作業服を見下して婚約を破棄した家族がいました。 彼らはブランドや肩書き、お金だけを見て人の価値を判断し、汗と油にまみれる職人の誇りを「底辺」と蔑んでいたのです。 しかし、彼らが軽んじたボロボロの作業服を着た女性こそ、実は誰よりも大きな会社を守り抜いた真の会長でした。 地位や豪華な着物、華やかな生活。そんな見せかけの栄光を追い求めた一家は、最後に何もかも失いました。 一方、泥にまみれ、手にタコを作り、地道に技術と誇りを守り続けた母と娘だけが、本物の幸せと未来を手に入れたのです。 ✨人生は見た目では決まらない ✨派手な権力より、人間の誠実さが勝つ ✨長年の努力と真心は、必ず報われる ただ金や地位を追うだけの虚しい人生より、自分の仕事を愛し、誇りを持って生きる日々こそ、最高の宝物です。 年月を重ねるほど、心に染みる真実の物語です。 皆さんも、大切な方へシェアして、人生の教訓を分かち合いませんか?人生逆転|金銭問題|修羅場3.5萬字5 272 -
完結第28話
十五年の我慢、裏切った家族に裁きを
長年尽くした家庭、夫のため、娘のためだけに生きてきた主婦のあなた。 毎日朝早く起きて食事を作り、家を磨き、姑のわがままも全部我慢してきたのに… 突然夫が土下座して「20 歳の若い愛人が妊娠した、早く離婚してくれ」と突きつけられたら、あなたはどうしますか? 主人公ゆみは何も泣き叫ばない。 冷めた顔で事前に用意した離婚届を差し出し「分かった、離婚する。家の貯金、家具、私の荷物以外全部持っていっていい」 夫は拍子抜けし、図々しく「娘も連れていけ、俺は新しい子供を育てるから」と言い放った。 その瞬間、ゆみが静かに突きつけた真実が、夫と姑、親族全員を地獄に落とす―― 「無理よ、この娘はあなたの血が繋がっていない子なの」 夫の隠し口座、愛人の妊娠詐欺、数百万円の借金、姑の裏切り録音… 十五年分の我慢と傷つきを、全部証拠と共に親族全員の前で暴き、夫一家を財産も居場所も全部失わせた。 夫は傷害事件で逮捕、姑は介護施設で一人孤独に暮らし、娘は自分の身勝手で誰にも頼れない人生を歩む。 一方主人公は自分の料理で人気総菜屋のパートとして、誰にも束縛されない自由な第二の人生を手に入れた。 長年家族に尽くして損ばかりしてきた主婦必見! 裏切った夫と身内にきっちり報復し、自分だけの幸せを掴む爽快完結ストーリーです。因果応報|修羅場|不倫4.2萬字5 584 -
完結第26話
十五年の忍び、本物の令嬢として帰る
離婚 3 日後、父と食事をしていたところ元夫と愛人にばったり。 「金持ちにすがっただけ」と馬鹿にして笑う二人。 私が「お父さん」と呼んだその瞬間、二人の顔から笑みが消え、全身凍りついた。 15 年間踏みにじられた尊厳、今日全部取り返す。因果応報|人生逆転|金銭問題4.0萬字5 3203