"車椅子妻の断罪" 第10話
歩き方はまだ完全ではない。く歩けば膝が震え、にはへ力が入らなくなる。
それでも加奈はち止まらなかった。
向かったのは、自分が30代の頃から設計に携わり、15かけて築きげた商業ビルだった。
設計図を完成させるため、何も眠らず机へ向かった。事現ではコンクリートのを浴びながら、壁の角度や柱の位置を自分で確認した。
そうして1階ずつ積みがった建物が、の空のにっていた。
加奈はビルのでを止め、ゆっくりと顔をげた。
ガラスの壁には、澄んだ空が映っている。
自分が引いた線。
自分が計算した構造。
自分が選んだ資材。
誰かの欲望と偽造された類によって奪われかけたものが、再び自分のもとへ戻ってきた。
加奈はく息を吸った。
たいの空気が、胸の奥まで満ちていく。
――私のは、誰かが勝に運び、捨てることのできる荷物ではない。
健は、けない加奈を荷物のように扱った。
病からへ運び、から子へ乗せ、の端へ置いた。自分の都が悪くなれば、簡単に処分できるだとっていた。
しかし加奈のは、健ののにあるものではなかった。
自分の名で、自分ので、自分ので歩いていくだった。
が吹き、コートの裾を揺らした。
から落ちた黄い葉が、加奈の肩へりる。
加奈はそれを払い落とさなかった。
から届いたさな挨拶のように、そのまま肩へ載せておいた。
そして再び歩き始めた。
1歩。
また1歩。
はまだ震えている。
けれど、その歩みは止まらなかった。
奥で子がき始めた、加奈は自分のでを止めた。
病で夫のにった、自分ので過を終わらせた。
そして今、しいへ向かって歩いている。
ゆっくりと。
しかし、度と誰にも止められない取りで。
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