みかん小説
本棚

"消えた仕送り720万円" 第6話

ち、お客様から類を受け取り、座番号と額を何度も確認する。

「ありがとう」

その言に、私は何度も救われた。

ある晩、帰宅すると、信吾と義母、敏の3が居に揃っていた。

信吾が1枚の卓に叩きつけた。

婚届だ。署名しろ」

目のに置かれたを見て、が真っになった。

「30も面倒を見てやったんだから、謝してていきなさい」

義母が言った。

「慰謝料なんて1円も払う必ないわ。むしろ、あなたが払う側でしょう」

「富代さんがいなくても、このは回るのよ。いない方が清々するわ」

も笑った。

3で示しわせていたのだ。

私を追いし、仕送りの問題をうやむやにするつもりだった。

し考えさせてください」

私はそれだけ言って寝へ戻った。

ドアを閉めた途端、膝から力が抜けた。

証拠はある。弁護士にも相談している。覚悟もしていた。

それでも、30の結婚活が終わる現実のさが、全にのしかかった。

、仕事から帰ると、玄関の鍵がかなかった。

鍵を差しても回らない。

信吾が交換したのだ。

ドアの向こうから義母の声が聞こえた。

「もう帰ってこなくていいわよ。あなたの居所はここにはないんだから」

コートのポケットには、財布とスマートフォンしかなかった。

着替えも、化粧品も、母からもらった着物も、すべてに置いたままだ。

広告

2階の窓がき、信吾が顔をした。

「荷物はで送ってやる。もう来るな」

窓が閉まる音が、暗い夜に乾いて響いた。

30暮らしたから、ゴミをすように追いされた。

涙はなかった。

ただ、2の夜が頬に突き刺さり、体の芯までえていった。

駅へ向かう途、商を通ると、すみれのかりがついていた。

内で仕入れ作業をしていたすみれは、私を見るなり駆け寄ってきた。

「富代さん、どうしたの? 顔が真っ青よ」

を話すと、すみれは何も言わず、温かいココアを入れてくれた。

カップを受け取った瞬、初めて涙がこぼれた。

丈夫。あなたは違ってない」

すみれは私の震えるを包んだ。

「追いしたことで、向こうは自分で自分の首を絞めたのよ。妻をから締めすなんて、調では圧倒利になる為だわ」

「証拠は全部、スマートフォンとクラウドに残してある」

「なら、絶対に負けない」

その夜、私は母のアパートへ向かった。

突然現れた私に母は驚いたが、事を尋ねることなく布団を敷いてくれた。

「寒くない? もう1枚、毛布をかけようか」

6畳に布団を2組敷くと、歩く所もほとんどなくなった。

それでも、広い義実より、このさな部の方がずっと温かかった。

母との2暮らしが始まった。

母のアパートからまでは片2くかかる。

広告

朝5に起き、夜9を過ぎて帰宅する毎は、体力にも厳しかった。

それでも、母と卓を囲むは穏やかだった。

さな鍋を2でつつき、テレビのバラエティ番組を見て笑う。母の蔵庫には材が並び、は当たりのようについている。

え切っていた母の指には、今ではしっかりと血が通っていた。

ある夜、鍋を囲んでいると、母が父の話を始めた。

「あんたのお父さんがきていた頃も、いろいろあったのよ」

父の会社が倒産しかけ、借取りがに来たこともあったという。幼かった私は、何もらなかった。

「夜逃げしようかって話にもなったわ。でも、お父さんが言ったの。逃げたら負けだ。踏ん張ろうって」

母は鍋から豆腐をすくいながら、穏やかに笑った。

「結局、お父さんはつずつ借を返して、会社をて直したの。はかかったけど、最まで逃げなかった」

その言葉が、の奥へ染み込んだ。

父は逃げなかった。

困難から目をそらさず、つずつ片づけていった。

「でもね、富代。お父さんが頑張れたのは、私がそばにいたからだって、から言ってくれたの」

母は私のを握った。

「だから、あんたも1で全部背負わなくていいのよ。私はここにいるから。母親っていうのは、子どもが何歳になっても母親なの」

母は、私が何に苦しんでいるのか、詳しくはらない。

それでも、何かきな問題を抱えていることはじ取っていたのだろう。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: