"8年目の遺失物" 第9話
警察は裕子本であることを確認し、失踪事件としての捜査を終える続きをめた。方で、誠との婚姻関係については、別の法続きが始められることになった。
誠が失踪直に通報しなかったことや、裕子へい言葉を浴びせていたこと、美紀との関係についてもらかになった。
美紀は当初、夫婦関係を壊すつもりはなかったと説した。しかし、誠との通話や裕子との面会について証言し、その関係がく続いていたことを認めた。
裕子が最も恐れていたのは、警察や夫と向きうことではなかった。
8会わなかった息子に、母親として受け入れてもらえるのかということだった。
翔太はすでに10歳になっていた。母親の写真を見せられながら育ち、幼い頃の記憶もわずかに残っていた。
再会の、裕子は兄のに付き添われ、翔太が待つ部へ入った。扉をける、裕子のは震え、何度も取っかられそうになった。
は何も言わず、妹の肩へ軽くを置いた。
裕子が部へ入ると、窓際にっていた翔太が振り返った。写真でしからなかった母親を、いをかけて確かめるように見つめた。
裕子は数歩んだところでち止まった。すぐに抱き締めることも、名を呼ぶこともできなかった。
沈黙ので、翔太が先にをいた。
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「どうして、こんなに遅く来たの」
裕子は唇を震わせたが、答えを言葉にすることができなかった。ゆっくりと膝をつき、翔太が差ししたを両で包んだ。
そのは、2歳の頃に握っていたさなではなかった。8、母親のらないをきてきた、10歳の子どものだった。
裕子は何度も謝ろうとした。しかし声にできたのは、息子の名だけだった。
「翔太……」
翔太はを引かなかった。裕子もさず、いそので握り続けた。
すぐに以の親子へ戻れたわけではなかった。翔太には疑問もりもあり、裕子にも説できないいが残っていた。
それでも2は、失われたを急いで埋めようとはしなかった。会えるに会い、話せることからしずつ話すようになった。
裕子はそのも、8暮らした方都で活を続けた。縫製の仕事を辞めず、翔太との関係ををかけて築いていった。
ベージュのバッグを理していた遺失物センターの伊藤は、に自分が見つけた物について尋ねられ、静かに答えたという。
「ただの古いバッグだとっていました。でも、あのには1ののが入っていたのですね」
さなバッグは、棚の奥で8を待った。
財布も分証も、幼い翔太と写った族写真も、くことしかできなかった言葉も、持ち主が戻るまで残り続けた。
19978、富士川サービスエリアのかりので、28歳の裕子はそれまでのから姿を消した。
けれど、本当に消えたわけではなかった。
誰にも居所をられないを選び、息子に会えない痛みを抱えながら、それでもき続けていた。
裕子は8、帰る勇気を失っていた。そして古いバッグのから見つかったが、止まっていたを再びかした。
それは、方になった女性が発見された物語ではなかった。
き残るためにった1の女性が、自分の名とを取り戻し、ようやく息子のもとへ帰り始めた物語だった。
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