"夕焼けの後継者" 第8話
秘がリモコンを操作すると、リビングの壁に埋め込まれた型画面が点灯した。
映しされたのは、敷内の防犯カメラ映像だった。
画面ので、斎藤が岡夫の部へ入っていく。しばらくして、にダイヤモンドの腕計を持っててきた。
次の映像では、斎藤が劇くの廊へ屈み込み、満の具鞄へ計を滑り込ませている。のきまで鮮に記録されていた。
拓也のから、さな呻き声が漏れた。
斎藤はそので膝から崩れ落ちた。両をへつき、肩を震わせながら何度もをげる。
「申し訳ございません。私がやりました」
声は細く、途切れていた。
「副社に命じられました。昔、私が会社のにをしたことをられていて、それを使って脅されたのです」
総郎は斎藤を見なかった。
線は、逃げを失って壁際へ追い詰められた拓也だけへ向けられていた。
「拓也」
歩。
また歩。
総郎がづくたび、拓也の肩が震えた。
「30、健へ産業スパイの濡れを着せたのも、おだな」
拓也は答えなかった。
「台照の事故を仕組み、あの子の力を奪ったのも、おだ」
総郎の声が瞬詰まった。
「それだけではりず、健がんだという偽の類まで作り、私たちへ渡した」
へ崩れた斎藤が、泣きながら頷いた。
「全て事実でございます。
広告
偽の類も事故も、若様のを示す記録も、私が副社の指示で作成しました」
総郎の両目から、太い涙が流れ落ちた。
「健はきていたというのに」
声が震えた。
「あの子は目を失っても、1で子供を育てていたというのに」
拓也は壁を背にしたまま、必にをいた。
「おじ様、私は岡を守りたかったのです。健兄さんが戻れば会社が危うくなるとい、それで……」
「黙れ!」
総郎の声が敷を揺らした。
「おの母親が、この会社のためにどれほど苦労したか、私がらないとでもったのか。その恩があったからこそ、おをが子同然に扱ってきた」
総郎は、涙を拭おうともしなかった。
「それを、おは仇で返したのか」
拓也はへ膝をついた。
「度だけ、お許しください。私は涯、おじ様のできてきました。どれほど努力しても岡の名を持てず、継者にはなれない。その悔しさでが歪んだのです」
両をへつき、額をげる。
「度だけ。どうか、度だけお許しください」
総郎は、その姿をく見つめなかった。
秘へ顔を向け、く告げた。
「警察へ連絡しろ。詐欺、横領、脅迫、窃盗の教唆、それから30の件も全て調べさせる」
拓也の嗚咽が止まった。
「おじ様……」
「続き通りにめろ」
総郎の線は、もはや拓也へ向いていなかった。
へ座り、父のノートを胸へ抱く満を見つめていた。
広告
警察が到着するまで、それほどはかからなかった。
拓也の首へ錠が掛けられる。涯、級腕計や指輪で飾られてきた腕に、たい属が鈍くった。
「おじ様、私を見捨てるのですか」
警察官にたされた拓也は、総郎へ叫んだ。
「私がいなければ、この会社がどうなっていたか、ごじのはずです!」
総郎は振り返らなかった。
拓也が連される直、その線が満へ向いた。目には悔と憎しみが入り混じっていたが、満は何も言わなかった。
リビングの扉が閉まり、い沈黙が残った。
斎藤も警察へ全てを話すと申した。
「30、罪を抱えてきてまいりました。会、奥様、許される資格がないことは承しております。しかし、もうこれ以は隠せません」
総郎は返事をしなかった。
その、廊の奥から岡夫が歩いてきた。
頬には涙が絶えなく流れていたが、取りは乱れていない。満のまで来ると、何も言わずに顔を見つめた。
額には乾き始めた血の跡が残り、目元は赤くなっている。
健と同じ目だった。
夫は、震える両腕をゆっくりと広げた。
満はどうすればいいのか分からず、そのにち尽くした。
次の瞬、夫が満を抱きしめた。
細い腕だった。
それでも、いを耐えてきたいの全てが込められているように、く背へ回された。
満は母親の顔もらず、父を失ったは、この世に自分を抱きしめてくれるなどいないとってきてきた。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
母親ではないと言われた日
「あの人は本当の母親ではありません」 小学5年生の授業参観で、姑・光江は教室中に聞こえる声で、継母の佳奈恵を否定した。 理子が5歳で実母を亡くしてから、佳奈恵は6年間、食事や通院、学校生活を支えてきた。それでも夫の俊一は「母さんに悪気はない」と繰り返すだけだった。 翌朝、佳奈恵は学校から一本の電話を受ける。理子の緊急連絡先が佳奈恵から光江へ変更され、その書類には俊一の署名まであった。 さらに姑は、英語教室や私立校への転校まで、本人に黙って決めようとしていた。 家族会議の日、11歳の理子は青いノートを抱えて現れた。表紙には《勝手に決められたこと》――そこには、祖母だけでなく父が娘へ強いてきた「我慢」が、2年分の日付とともに記されていた。因果応報|嫁姑|親子関係1.7万字5 400 -
完結第12話
離婚したら140万円の請求が来た
結婚して7年。待ち望んだ妊娠が分かったさやかは、夫の勇気へ知らせるため、体調の悪さをこらえながら豪華な夕食を用意した。 ところが、義姉から「夫のお金を浪費している」と責められても、勇気は妻をかばおうとしなかった。それどころか、さやかが「自分のお金で買った」と反論しただけで、彼はあっさり告げる。 「そんなことを言い続けるなら、離婚しよう」 さやかは離婚を承諾し、初めて妊娠を伝えたうえで、その日のうちに実家へ戻った。すると3日後、これまで彼女が負担してきた義姉の息子の塾代、約140万円の請求書が勇気のもとへ届く。 慌てて支払いを求める夫に、さやかは静かに告げた。「もう私とは関係ありません」。しかし彼らはまだ知らなかった。さやかが3年前から、義姉への送金記録と、家族の会話を記録した音声を残していたことを――。兄弟姉妹|絶縁|金銭問題1.7万字5 690 -
完結第11話
姑が剥がした私の名前
小さな菓子工房《灯菓》を営む私は、町内会の敬老会に出す96個のプリンを正式な注文として受けた。 しかし当日の朝、冷蔵庫の中からプリンがすべて消えていた。持ち出したのは義母・富美子。しかも彼女は私の店名と表示ラベルを剥がし、自分の名前を貼って「会長手作り」として配ろうとしていた。 保管温度も、消費期限も、誰が責任を持つのかも曖昧なまま、プリンは高齢者たちの前に並べられる。私は必死に止めようとするが、夫は「母さんを悪者にするな」と私の腕をつかんだ。 その夜、敬老会の参加者が体調不良で搬送される。 原因は本当に私のプリンだったのか。義母は何を隠し、夫はどこまで関わっていたのか。 一枚の貼り替えられたラベルをきっかけに、嫁の仕事を“暇つぶし”と笑ってきた家族の本音が、静かに暴かれていく――。嫁姑|親子関係|修羅場1.6万字5 936 -
完結第12話
息子の婚約者の母は、20年前の女だった
20年前、夫の不倫によって家を追われ、5歳の息子・健一を一人で育ててきたゆみ。昼も夜も働き続けた息子は医師となり、愛する女性との結婚を決めた。 両家の顔合わせの日、婚約者の母・恵子は、ひとり親家庭を遠回しに見下しながら、上品な笑みを浮かべていた。だが、ゆみの顔を見つめた瞬間、その表情が明らかに変わる。 恵子は、20年前にゆみの夫と関係を持ち、母子を雨の中へ追い出した張本人だった。 化粧室で2人きりになると、恵子は「子どもたちには黙っておきましょう」と口止めする。しかし、ゆみの鞄には、恵子の現在を調べた報告書が入っていた。 そこには多額の借金と不審な金銭の動き、そして「娘の婚約者が医師になった」と周囲へ話す恵子の姿が記されていた。20年前に家庭を壊した女は、今度は息子の人生まで利用しようとしているのか――。真実|親子関係|不倫1.8万字5 1142 -
完結第10話
消された合格通知
実家のパン店《麦の灯》が改装開店を迎えた朝、34歳の直人は、弟から「今日だけは裏口から入ってくれ」と頼まれた。 店頭では、直人が27回の試作を重ねて完成させた塩麹あんパンが、《二代目・拓海が生んだ奇跡の味》として紹介されていた。取材を受ける弟とは対照的に、直人の肩書は今も「製造補助」のままだった。 そんな厨房へ、高校時代の担任が偶然現れる。直人が「専門学校には落ちた」と話すと、担任は思いがけない事実を告げた。 「君は合格していた。特待生選考にも通っていたよ」 さらに学校には、直人本人が進学を辞退したことを示す書類まで届いていたという。しかし直人は、そんな書類を書いた覚えなどない。 弟の名前で売られる自分のレシピと、16年前に消された合格通知。家族が守ろうとした店の裏で、直人から何が奪われていたのか。一枚の古い書類をきっかけに、父と母が隠してきた選択が明らかになっていく――。兄弟姉妹|親子関係1.6万字5 1120 -
完結第11話
夫の実家は空き家だった
結婚して半年。32歳の若菜は、穏やかで誠実な夫・裕介と、静かな新婚生活を送っていた。 裕介の両親は長く海外で暮らしており、日本へ戻ったばかりだと聞かされていた。正月、仕事になった夫の代わりにお年賀を届けようと、若菜は以前教えられた義実家を一人で訪ねる。 しかし、家は人が暮らしているとは思えないほど荒れていた。隣人へ尋ねると、返ってきたのは信じられない言葉だった。 「そこは5年前から空き家ですよ」 混乱した若菜が住所を尋ねても、裕介は決して教えようとせず、贈り物の蟹も自分で届けると言い張った。ところが数日後、見知らぬ男女が突然マンションを訪れ、若菜へ笑顔で告げる。 「この前は高級な蟹、ありがとうね」 5年前から誰も住んでいない「夫の実家」と、若菜の名前を知る謎の男女。裕介はなぜ家族の存在を隠し、他人の家を自分の実家だと偽ったのか――。嫁姑|親子関係|修羅場1.6万字5 1836 -
完結第17話
葬儀代10万円を拒んだ叔父――17年後、空の封筒を持って私は戻った
1996年、15歳の黒川大樹は、母の葬儀代10万円を借りるため叔父・健造の屋敷で土下座した。しかし健造は大樹を泥へ蹴り落とし、父方の親族も全員背を向ける。救ってくれたのは、貧しい隣人・佐藤正一が差し出した茶色い封筒だった。母の遺品から、健造による借金と不動産取得の記録を見つけた大樹は、証拠を抱えて町を離れる。17年後、上場企業の社長となった大樹のもとへ、75歳の佐藤に2000万円が請求されているとの知らせが届く。故郷へ戻った彼が目にしたのは、泥の中で叔父に踏みつけられる恩人の姿だった。親子関係|金銭問題2.2万字5 1622 -
完結第11話
家族席から外された弟
父の還暦祝いと、実家の弁当店《味よし》創業三十周年を兼ねた宴席。 十年間、早朝から店を支えてきた次男の章平は、兄から冷たく告げられる。 「おまえは家族席じゃない。配膳が終わったら厨房に戻ってくれ」 看板商品の味を守り、配達先を増やし、病気の妻と娘のために考えた献立まで店に捧げてきた章平。だが、会場で語られる店の歴史に、彼の名前はなかった。 さらに兄が発表した新事業には、亡き妻のレシピから生まれた料理が、兄の功績として並んでいた。 悔しさをこらえて帰宅した章平は、冷蔵庫の上に置いていたはずの青いレシピノートが消えていることに気づく。 翌朝、店に現れなかった章平。 消えたのは一人の「手伝い」ではなかった。 実家の弁当店を三十年支えてきた、本当の味そのものだった――。兄弟姉妹|相続|金銭問題1.6万字5 1116 -
完結第14話
3人の息子は、夫の隠し子だった
離婚届に署名した直後、夫・総一郎は私に言った。 「3人の息子の中から1人選べ」 名門・斎藤家の妻として、5年間、私は3人の息子を育ててきた。けれど彼らは、私の実子ではなかった。夫の愛人が産んだ子どもたちだったのだ。 そして、家の中でただ一人、冷たく扱われていた娘・小春だけが、私にとって守るべき存在だった。 「あなたの隠し子なんて、1人もいらない」 そう告げて娘の手を取った瞬間、斎藤家が隠してきた嘘が崩れ始める。 親子鑑定書、偽造された書類、奪われかけた親権、そして夫がどうしても小春を手放そうとしなかった本当の理由。 離婚は終わりではなかった。 娘を守るため、そして自分の人生を取り戻すための、静かな反撃がここから始まる――。夫婦|親子関係|不倫2.1万字5 909