"断髪新郎の逆転婚礼" 第4話
私は言葉を失った。
「邪魔って……」
「もしあなたの体調が悪化したら、誰が世話するの? お兄さんと美紀でしょう? つまり、あなたは2にとってお荷物なのよ」
あまりにもためらいなく言われ、胸がたくなった。
「だからって、族の縁を切れなんて……。私には兄しか族がいません。それに兄にとっても――」
「だから問題なのよ」
礼子さんは私の言葉を遮った。
「ご両親がくくなって、今までずっと健太さんに面倒を見てもらってきたんでしょう?」
「面倒を見てもらったというより、2で支えってきました」
「今回の病気でも助けてもらったんでしょう?」
「それは……兄妹ですから」
「じゃあ、もう分じゃない」
礼子さんは真顔だった。
「あなた、自分がお兄さんにどれだけ迷惑をかけているか分からないの?」
その言葉が胸に刺さった。
治療、兄が病院に付き添ってくれたこと。
体調が悪いは事を作ってくれたこと。
夜に吐き気で眠れない、何も言わずにそばにいてくれたこと。
確かに私は兄に助けてもらった。
「誰だって病気のの世話なんて嫌に決まってるでしょう」
礼子さんは言い切った。
「健太さんはこれからしい庭を作るの。あなたからそろそろ解放してあげたら?」
「解放……」
「病気の妹がいつまでもくにいたら、幸せな庭なんて作れないわよ」
私は唇を噛んだ。
広告
「兄たちが結婚したら、緒にむつもりはありません」
「そんなの当たりでしょう。でも何かあれば、健太さんは族だからあなたを助けようとする。美紀まで巻き込まれることになるのよ」
礼子さんはしを乗りした。
「美紀は幸せになるために結婚するの。あなたの病をするためじゃないのよ」
「それは分かっています」
「本当に分かってる?」
その目は、私を厄介者を見るように捉えていた。
「正直、あなたは健太さんのお荷物よ。まだ働き盛りなのに、自分の病気に付きわせてかわいそうだとわない?」
「私は……兄には幸せになってほしいとっています」
「だったら邪魔しないで」
礼子さんは迷いなく言った。
「病気のあなたがれるのが1番なの。あなたがいなくなれば健太さんは病気の妹から解放されるし、美紀もあなたのことを配せずに済む」
「でも、縁を切ったら、私には族がいなくなります」
「健太さんには美紀が族になるわ」
礼子さんはたい声で続けた。
「結婚すれば私たちだって健太さんの族になる。でも逆に言えば、私たちはあなたとは族になりたくないの」
私は何も言えなくなった。
「だから彩佳さん。健太さんと族の縁を切って。分かったわね」
礼子さんはそう言い残し、自分の注文した分の支払いさえせずにをていった。
広告
帰宅してからも、私はリビングのソファに座ったままけなかった。
のでは礼子さんの言葉が何度も繰り返されていた。
お荷物。
迷惑。
解放してあげろ。
病気になったから、自分でも度も考えなかったわけではない。
もし私がいなければ、兄はもっと自由にきられたのではないか。
その疑問を、私はずっと見ないようにしていた。
夕方になり、仕事を終えた健太が帰宅した。
玄関から入ってきた兄は、いつものように声をかけようとして、私の様子を見てを止めた。
「彩佳、丈夫か?」
「え?」
「体調悪いのか? 顔おかしいぞ」
「いや……体調じゃない」
健太は着を脱ぎながら、私の向かいへ座った。
「じゃあどうした? 何かあっただろ」
私はし迷った。
けれど礼子さんの言葉が本当なのか、確かめずにはいられなかった。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「もし私が、お兄ちゃんと族の縁を切ろうって言ったら……どうする?」
健太の顔が険しくなった。
「は?」
「だから、私とお兄ちゃんが族じゃなくなるっていうか」
「何言ってんだ。そんなもの切るわけないだろ」
兄は本気で理解できないという顔をした。
「なんで突然そんなこと言いすんだよ」
私は膝のでを組んだ。
「病気の私って、迷惑かなって」
「何言ってるんだよ」
兄はすぐに否定した。
「俺たちは父さんと母さんがくなってから、ずっと2でやってきただろ。
助けうのは当たりだ」
「でも、お兄ちゃんにはこれからしい庭ができる」
「だからって、おを捨てる理由にはならない」
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
妊娠8か月の私に28人分のおせちを作らせた義母
妊娠8か月の優奈は、義母から「家族6人分」と聞かされていたおせち作りを引き受ける。だが台所に用意されていたのは、販売用の28人分。さらに義妹の店名が入った重箱には、優奈の名前が製造責任者として無断で使われていた。 体調を崩して病院へ向かった優奈は、録音や注文表を証拠として残す。予定より早く帰宅した夫・康平は、母から合鍵を取り上げ、親戚を帰らせるが、やがて妻の署名や免許証、退職金まで利用した500万円の融資計画が発覚する。 康平は家族へ怒るだけでなく、母の越境を長年黙認してきた自分の責任とも向き合う。一方の優奈も、誰かに救われるのを待たず、自分の名前、仕事、暮らしを自ら守り始める。 28人分のおせちから始まった騒動を通して、「家族のため」という言葉に奪われていた選択権を取り戻す夫婦の再生と、境界線の大切さを描いた物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4万字5 1361 -
完結第11話
義母に通帳を渡さなかった妻
「これからは私が家計を管理してあげるわ」 月給25万円の夫にそう言われ、月収100万円を超える私は黙って義母を見た。 結婚前に自分で買ったマンションなのに、給与口座のカードと暗証番号を渡せと言う。 夫は止めるどころか、「母さんは金の管理が得意だから」と賛成した。 さらに義母は、夕食、洗濯、外食の回数まで書いた「林家の新しい生活ルール」を作っていた。 その翌日、共同口座から100万円が消えた。 振込先は、夫の弟だった。 「家族なんだから、100万円くらいで騒ぐなよ」 夫はそう言い、義母も「女は夫を立てるもの」と笑った。 私はその夜から、自分の分だけ洗濯し、夕食も作らなくなった。 3日後、帰宅した夫が「飯は?」と聞いた時、私は寝室のキャリーケースを指さした。 「そんなにお義母さんが正しいなら、これからはお義母さんの家で暮らして」 夫が固まった直後、私はもう一枚の書類をテーブルへ置いた。夫婦|第二の人生|金銭問題|修羅場1.7万字5 727 -
完結第16話
姉の代わりに嫁いで6年――総支配人夫人の姉と再会した日
姉が断った縁談を押しつけられ、三倉冬馬と結婚した紗和。相手は社員4人の小さな会社を営み、800万円の借入れを抱えていた。家族の援助もなく始まった結婚生活から6年。夫婦で訪れた高級ホテルで、総支配人夫人となった姉・瑞穂に再会する。「本当にあんたに譲って正解だったわ」。姉は紗和たちを追い払おうとするが、夫が告げた一言に、ロビーの空気が変わった。やがて見つかるのは、同じ角部屋をめぐる苦情と、不自然な無料宿泊の記録。紗和は現場に残された資料をもとに、予約を変更された客たちの事情を確かめていく。姉が誇る「総支配人夫人」の暮らしは、いったい誰の犠牲で成り立っていたのか。兄弟姉妹2.3万字5 592 -
完結第19話
251840円の正月料理を持ち去った義母
結婚以来9年間、佐伯直樹の妻・由衣は、義母・久江に命じられるまま親戚一同の正月料理を準備してきた。今年の支払額は25万1840円。ところが大晦日、冷蔵庫から料理がすべて消える。防犯カメラに残っていたのは、合鍵で侵入し、保冷箱を弟夫婦宅へ運び出す久江の姿だった。それでも久江は由衣に買い直しを命じる。直樹が領収書と録音を保存すると、今回の持ち去りだけでなく、正月に費やした累計167万8000円、さらに両親へ送り続けた毎月6万円の意外な行方まで浮かび上がり始める。兄弟姉妹|嫁姑|親子関係|金銭問題2.6万字5 2859 -
完結第10話
独身だから介護しろ
「来月で店を辞めろ。父さんの介護は、独身のお前がやれ」 父の退院祝いで、兄は私の名前だけが並んだ介護予定表を置いた。 朝食、服薬、入浴、夜間の見守り――月曜から日曜まで、休みはない。 姉も「あなたには守る家庭がないでしょう」と言った。 だが要介護2の父は、歩行器を使えば動けるうえ、介護サービスを利用する意思も示していた。 それでも兄姉は費用を惜しみ、私へ仕事を辞めさせようとした。 私は予定表を破り、「本人の前でもう一度決めよう」と告げた。 父は震える右手で、机を2度たたいた。 その意味が分かったのは3か月後だった。 ケアマネジャーから見せられたのは、私を主介護者とする《家族同意書》。 署名日は、私が北海道へ出張していた日だった。 そして費用管理者の欄には、父の通帳を預かる姉の名前が書かれていた――。兄弟姉妹|親不孝|親子関係|介護1.5万字5 384 -
完結第15話
正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番
娘がグラスを1つ割っただけで、義兄は笑いながら熱い汁物を8歳の娘へ浴びせた。 しかも泣き叫ぶ娘を前に、義母も親族も止めるどころか「正月から大げさ」と笑っていた。 夫まで兄を庇い、「今日は丸く収めよう」と私に黙るよう求めてきた。 私は娘の腕を流水で冷やしながら、警察署長を務める実兄へ電話した。 「お兄ちゃん、今度はもう手加減しないで」 だが兄が私に命じたのは、身内の力を使うことではなく、「今すぐ110番して、証拠を全部残せ」ということだった。 その言葉で私は、義実家の天井に防犯カメラがあることを思い出した。 警察が映像を確認した直後、それまで「手が滑っただけ」と笑っていた義兄の顔色が一変する。 そして夫まで知らなかった“決定的な場面”が映っていたことで、あの正月に笑っていた全員の立場がひっくり返り始めた。怒り|嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 1518 -
完結第10話
父の料亭を継いだ翌日、板長が全員連れて独立
「料理も作れないあんたじゃ、この料亭も終わりだな」 父の葬儀を終え、私が老舗料亭を継いだ翌朝だった。 板長は12人の従業員を連れ、駅前で独立すると宣言した。 「客も仕入れ先も、全部俺についてくる」 私は引き止めず、「分かりました」とだけ答えた。 13人が去った板場には、包丁一本残っていなかった。 ところが予約帳を調べると、宴会7件に謎の《保留》が記されていた。 新店舗の契約日は、父が倒れる3週間前。 酒屋にはすでに「先代は長くない」と話していたという。 さらに父の金庫から、黒ずんだ一冊のノートが見つかった。 過去に辞めた従業員の名前、その横には何度も同じ文字が残されていた。 《黒田君》 そして父が亡くなる4日前のページには、《黒田誠治 断る。二度目》の一行があった。 その下に書かれた短い文章を読んだ瞬間、私は板長を追わなかった父の本当の意図を知った。人生逆転|金銭問題|修羅場1.5万字5 1620 -
完結第10話
俺を脅し続けた同級生が、留守中の家で出会った男
「1か月後までに100万円用意しろ。無理なら、その犬がどうなるか分からないぞ」 無職の俺から金を奪い続けるのは、中学時代から俺をいじめていた同級生だった。 両親を亡くし、相談できる相手もいない俺は、言われるまま20万円以上を渡していた。 そんな雨の日、捨て犬を拾ったことで、無愛想な大男・犬塚と少女メイに出会った。 事情を聞いた犬塚は、喧嘩を仕掛ける代わりに一枚の封筒を置いた。 中に入っていたのは、海外企業の求人票と航空券。 「犬を連れて海外へ行け。その代わり、この家の鍵を貸せ」 俺が国外へ移って1か月後、同級生から映像付きの電話が来た。 俺の家に停まっていた高級車は、落書きされ、ミラーまで壊されていた。 『100万円じゃ足りねえ。今度は1000万円用意しろ』 「その車、俺のじゃないよ」 笑っていた同級生の背後から、低い声がした。 「俺の車に、何してくれてんだ?」人生逆転|怒り|修羅場1.5万字5 1210 -
完結第12話
追い出された妊婦の家
「妊婦が広い家を独占する必要はない。嫌なら、お前が出ていけ」 妊娠8か月の健診から戻ると、赤ちゃんの部屋が義妹一家の寝室になっていた。 ベビーベッドは分解され、私の仕事机まで段ボールで埋め尽くされていた。 姑は「離婚した娘を家族で助けるのは当然」と言い、相談もなく泊まり込みを決めていた。 夫まで笑いながら言った。 「お前は実家で産めばいい。空いた部屋を使って何が悪い」 私は翌朝までに全員を退去させるよう求めた。 しかし夫は「この家は夫婦のものだ」と聞く耳を持たなかった。 私は反論せず、その夜だけ家を出た。 翌朝、母と会社の先輩を連れて自宅へ戻った。 そして食卓に、登記事項証明書と退去を求める通知を置いた。 「何だよ、これ。結婚したら家の半分は俺のものだろ?」 夫はまだ、自分が6年間暮らしてきた家の名義を知らなかった。 書類の《所有者》欄に記されていたのは、私一人の名前だった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦1.8万字5 886 -
完結第10話
消された合格通知
実家のパン店《麦の灯》が改装開店を迎えた朝、34歳の直人は、弟から「今日だけは裏口から入ってくれ」と頼まれた。 店頭では、直人が27回の試作を重ねて完成させた塩麹あんパンが、《二代目・拓海が生んだ奇跡の味》として紹介されていた。取材を受ける弟とは対照的に、直人の肩書は今も「製造補助」のままだった。 そんな厨房へ、高校時代の担任が偶然現れる。直人が「専門学校には落ちた」と話すと、担任は思いがけない事実を告げた。 「君は合格していた。特待生選考にも通っていたよ」 さらに学校には、直人本人が進学を辞退したことを示す書類まで届いていたという。しかし直人は、そんな書類を書いた覚えなどない。 弟の名前で売られる自分のレシピと、16年前に消された合格通知。家族が守ろうとした店の裏で、直人から何が奪われていたのか。一枚の古い書類をきっかけに、父と母が隠してきた選択が明らかになっていく――。兄弟姉妹|親子関係1.6万字5 1270