"五人目の白い靴" 第11話
「でも、帰ってこられるな」
その言葉をにしたところで。
初めて涙がた。
事件にはつの族がいた。
ひとつは。
4を同に失った伊藤。
もうひとつは。
9歳の娘を7待ち続けた佐野。
そのつをつないだのは。
血でも。
親戚でも。
でもなかった。
片方だけのい運靴だった。
荒川の自によって部分はらかになった。だが、武田には最までつだけ気になることが残っていた。
い靴は本来、だった。
琵琶のテントから見つかったのは。
では。
はどこへ消えたのか。
荒川は「分からない」と繰り返した。
2003の事件。
気づいたには片方しかなく、残っていた方も怖くなって捨てたという。
「どこへ」
「覚えてません」
本当かどうか分からなかった。
武田は崎の養魚で老が証言したことをいした。
助席にあった子供靴。
は「赤っぽかった」。
い靴ではない。
なら。
荒川には凛以にも「靴」があった能性が残る。
全国の未解決事件を再度確認した。
荒川が過にんでいた域。
。
浜。
津。
崎。
その期に発した子供の方。
数件が浮かんだ。
しかし、どれも荒川との直接の結びつきは証できなかった。
荒川本も否定した。
「あの子と伊藤さんたちだけです」
その言葉が真実かどうか。
最まで分からなかった。
2009。
荒川智の裁判が始まった。
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検察は佐野凛と伊藤4に対する殺害、遺棄、未成者略取など複数の罪を追及した。弁護側は伊藤について「最初から4を殺害する計画はなかった」と主張したが、曜夕方に防シートとロープを準備していた事実、里を連れそうとしていた供述などから、い計画性が認定された。
無期懲役。
控訴。
告。
2010、刑が確定した。
最の判決の。
法廷の片側には浩がいた。
しれた席には佐野凛の母親が座っていた。
はそれまで度も会ったことがなかった。
裁判が終わり、廊へた。
浩が子を取った。
「佐野さん」
母親がち止まる。
浩はくをげた。
「凛ちゃんの靴がなかったら、兄たちは今も見つかってなかったといます」
母親は何も言わなかった。
しばらくして。
同じようにをげた。
言葉は交わさなかった。
それで分だった。
どちらの族も。
もう「ありがとう」と言えるような来事ではなかったからだ。
翌の。
伊藤が毎テントを張っていた畔に、さな追悼碑が建てられた。
豪華なものではない。
の腰ほどのさの。
浩が自分で所を決め、元の材へ頼んだ。
には4の名が刻まれた。
伊藤正彦。
伊藤美緒。
伊藤陽斗。
伊藤里。
そしてしれたところに。
もうつ。
さな文字。
佐野凛。
最初、浩は凛の名を入れるか迷ったという。
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伊藤とは血のつながりがない。
会ったこともない。
同じ学へ通ったわけでもない。
だが。
凛が残した痕跡がなければ。
い靴が伊藤のテントへ落ちなければ。
5、武田がキャビネットをけても、4の所にはたどり着けなかったかもしれない。
逆に。
伊藤が消えなければ。
い靴は警察へ渡らず。
佐野凛の名も、さらにい埋もれていたかもしれない。
つの事件は。
最悪の形でつながった。
だから浩は。
5の名を同じに残すことを決めた。
追悼碑が建った。
凛の母親も浜から来た。
さなピンクのヘアバンドをのへ置いた。
浩は本酒を本。
武田は野をさな束にして置いた。
3はほとんど話さなかった。
には穏やかなが吹いていた。
くで子供たちの笑う声がする。
もう事件のことをらない世代の子供たちだった。
武田は岸からしれたむらを見た。
20038。
9歳の里が。
い靴を拾った所。
もしあの。
里がの裏へかなかったら。
もし美緒が「捨てなさい」と言っていたら。
もし陽斗がカセットを回していなかったら。
もし写真に男が写らなかったら。
数え始めれば、いくらでも「もし」はてくる。
だが事件というものは。
から見れば本の線に見えても。
そのそのは。
何のもないさな偶然が散らばっているだけなのかもしれない。
武田は5の名を見つめた。
い運靴は、現も証拠品として保管されている。
血の染み。
消えかけた名。
赤。
擦れた靴紐。
わずか20cmほどのさな靴が。
7れていた女の名と。
5帰れなかった4を。
同じ所まで連れてきた。
が傾き始めた頃。
浩がちがった。
碑を見ながら。
昔、兄へ声をかけていたと同じ調子でさく言った。
「兄貴。また来な」
しを置いて。
凛の名にも目を向けた。
「凛ちゃんも」
から吹いたが、碑のに置かれたを揺らした。
武田は最まで、荒川が持っていた「もう片方の靴」がどこへ消えたのかをることはできなかった。
もしかすると処分されたのかもしれない。
まだどこかに残っているのかもしれない。
それだけは。
判決がたも答えがなかった。
ただつ、確かなことがある。
2003の。
琵琶のほとりで消えたのは4だった。
しかし。
あのテントの隅に落ちていた片方だけのい運靴には。
最初から。
もうの女がいた。
その名は。
佐野凛。
5から誰にも届かなかったその名を。
い靴だけが。
ずっと黙ったまま覚えていた。
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