"ガジュマルの根が暴いた夜" 第11話
「連れて帰って、きちんと送ってあげられた。それだけでも、15とは違います」
恵美の胸にもいものが込みげた。
事件を解決するとは、者をき返らせることではない。
失われたを戻すことでもない。
ただ、嘘のへ置きりにされたへ本当の物語を返す。
それしかできないもある。
々が帰った。
恵美は川崎尚と境内を歩いた。
2は、再び支えられたガジュマルの老のでち止まった。
根のくは傷ついている。
幹にも台の跡が残っていた。
それでも枝の先には、さな緑の葉が何枚か芽吹いていた。
「きていますね」
恵美が言った。
川崎は頷いた。
「古いはいものです」
「あの台がなかったら、3はまだここにいたんでしょうね」
「そうかもしれません」
「尚さんの言った因果って、こういうことですか」
川崎はし笑った。
「私にも分かりません。ただ、が永に隠せるものなど、そうくはないのでしょう」
恵美はを見げた。
15。
健は、正を見つけた。
見なかったことにはできなかった。
そのため命を落とした。
美玲とまで巻き込まれた。
あまりにも理尽だった。
方、吉田敬吾は15、社会な成功を続けた。
富を得た。
名声を得た。
々から尊敬された。
それでも最には、自分が築いたものを何つ守れなかった。
広告
龍と虎も、罪から逃げ切れなかった。
田は恐怖に負けて真実を話せなかったが、最の線だけは越えなかった。
そのさな選択が、15の正義につながった。
の事件が終結したも、恵美の机には1つだけい課題が残った。
吉田がの直に渡した黒い帳だった。
ある夜。
京都府警の執務に、恵美は1残っていた。
窓のにはの灯りが広がっている。
机のには温かい茶。
その横に黒い帳。
恵美はゆっくり表をいた。
コードネーム。
付。
送額。
座番号。
の分からない記号。
健が15に追っていたものが、このにまだ残っている能性がある。
吉田1の犯罪で終わらない。
さらにきな仕組み。
くの。
。
権力。
恵美はページをめくった。
最初のページの隅に、吉田がからいたとわれるい文が残されていた。
「正義は遅れることはあっても、消えるわけではない」
自分のしたことを考えれば、あまりにも皮肉な言葉だった。
それでも恵美は、そのページを閉じなかった。
の3をいした。
古い写真ので、はアイスクリームをべながら笑っていた。
健は娘を抱きげていた。
美玲はその2を見つめていた。
彼らが求めていたのは、きな名誉でもでもない。
ただ、ごく普通の暮らしだった。
その平凡な幸福を、の都で奪っていい者などいない。
広告
恵美は黒い帳へ線を戻した。
の事件は終わった。
しかし健が命をかけて見つけようとしたものは、まだ完全にはらかになっていない。
窓のにはい夜が広がっていた。
それでも寺の老には、しい葉が芽吹いている。
15のに閉ざされていた3は、ようやく名を取り戻した。
した族ではない。
消えた々でもない。
健。
美玲。
。
しい、同じで暮らし、ある夜突然未来を奪われた3の族だった。
彼らが眠っていたガジュマルのには、もう遺骨はない。
がればは濡れ、が吹けば葉が揺れる。
そしてになれば、またしい芽がる。
川崎はそのも毎朝、老のを通るたびにをわせた。
田も折、い漁から寺へを送った。
の親族はようやく3の墓へを供えられるようになった。
田恵美だけは、事件の先に残されたしい扉を見つめ続けていた。
15、健が1でこうとした扉。
その向こうに何があるのかは、まだ分からない。
だが今度は、1ではない。
恵美は帳を閉じ、めかけた茶をんだ。
夜はまだかった。
それでも、暗が永に続くわけではないことを、彼女はっていた。
なぜなら15、のに隠され続けた真実でさえ、最にはガジュマルの根を押しげるようにして、この世へ戻ってきたのだから。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
白線の先の女たち
昭和三十九年、女子競輪が終わりを迎えようとしていた。三十四歳の佐伯久美子は、最後の地元決勝で優勝する。しかし彼女が真っ先に求めたのは、花束でも拍手でもなく、次の出走表だった。返ってきたのは、もう走る場所はないという答え。そんな久美子の前で、十九歳の新人・夏子は「私は来年も勝ちたい」と訴える。仕事、家族、怪我、そして失われた競走の舞台。走ることを諦められない女たちは、それぞれの暮らしを背負いながら、新しい一歩を探し始める。時代|歴史|昭和|ミステリー3.0万字5 200 -
完結第15話
姉の身代わりで嫁いだら、冷酷当主の本命でした
家族に冷遇され、姉の身代わりとして“冷酷な当主”のもとへ嫁がされた澄乃。しかし初対面で、偽りの花嫁だと見抜かれてしまう。 追い返される覚悟をした澄乃に、静は「お前で構わない」と告げる。さらに帳簿を読む彼女の才能と、恐れながらも嘘をつかなかった誠実さを認めていく。歴史|昭和|ミステリー|夫婦|第二の人生2.0万字5 697 -
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 218 -
完結第12話
昭和44年、終電後に消えた駅員――28年目に見つかった記録
昭和44年、長野県の小さな駅で働く杉原修一は、最終列車を見送った夜、8万6,400円の現金とともに姿を消した。父を泥棒と呼ばれながら育った娘の美緒は、28年後、取り壊しが決まった駅舎で古い駅務日誌を発見する。そこには、父が終電の55分後、赤いランプを持って七号橋へ向かったという不可解な記録が残されていた。運休したはずの貨物列車、書き換えられた帳簿、沈黙を守る関係者たち。父はあの夜、何を知り、なぜ帰ってこなかったのか。昭和の小駅に封じられた28年間の謎を追う、家族と真実の物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|真実2.9万字5 337 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 334 -
完結第13話
疎開から戻った娘が、再び村へ帰りたがった理由
昭和二十年の秋。戦争で夫と家を失った文江は、集団疎開から戻った十二歳の娘・幸子と、焼け跡の東京でようやく再会した。 ところが三日後、娘は突然「あの村へ帰りたい」と言い出す。母との暮らしを喜んでくれると思っていた文江は、深く傷ついた。 やがて娘の行李から見つかった一通の手紙。そこには、長野の農家で暮らす九歳の少女・千代との、切実な約束が隠されていた。 自分たちの生活さえ苦しい母娘は、その約束にどう向き合うのか。戦後の厳しい暮らしの中で、家族の絆と本当の居場所を見つめ直す、心温まる物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|親子関係2.8万字5 262 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 255 -
完結第16話
雪の空港で消えた四人と第七格納庫
1989年のクリスマスイブ、北海道の空港から四人の客室乗務員が姿を消した。車には荷物と靴だけが残され、手掛かりのないまま35年が過ぎる。 2024年、解体中の旧格納庫で隠し部屋が発見され、事件は再び動き始めた。浮かび上がったのは、空港内部を熟知し、彼女たちを密かに監視していた元整備士だった。ミステリー|真実|真相1.9万字5 1221 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 429