"5枚で消された妻" 第8話
し沈黙した。
「ああ……あの件ですか」
「覚えていますか?」
「まあ。自でしたよ。特に事件性はなかった」
佐藤は資料を見ながら尋ねた。
「2か、夫が5000万円の命保険をかけていたことは確認しましたか?」
話の向こうが静かになった。
「……その部分は、確認していません」
「なぜです?」
「当は現の状況から自と判断したんです」
「夫のアリバイは?」
「……」
「ホテルまでの移経は?」
「昔のことです。もう終わった事件でしょう」
声がくなった。
「林さん」
「私にはもう関係ない」
話が切れた。
佐藤はしばらく受話器を握ったままかなかった。
過の捜査担当者を責めても、証拠は戻らない。
必なのは今から集められる事実だった。
次に、美幸が最に眠薬を買ったとされる薬局を調べた。
はすでになく、別の舗になっていた。
しかし佐藤は薬剤師会などを通じ、当の主だった松本の所を突き止めた。
数週。
県で薬局を続けていた松本を訪ねた。
「12ののお客さんなんて覚えてませんよ」
松本は困ったように笑った。
「毎何も来ますから」
「顔を覚えているかどうかではありません」
佐藤は資料をした。
「1994当、あなたので扱っていた販眠薬について教えてください」
松本は古い医薬品カタログを探してきた。
ページをめくる。
「ああ、これですね」
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つの商品を指さす。
「1箱の錠数は?」
「12錠です」
「違いありませんか」
「規格品ですから。12錠ですね」
現にあった空箱は2つ。
つまり24錠。
佐藤は次に、司法解剖記録をいた。
当の鑑定には、血濃度と胃内容物などから推定した用量について記載があった。
推定30錠以。
佐藤は文字を何度も見直した。
24錠。
30錠以。
数がわない。
もちろん血濃度からの推定には誤差がある。
だが、6錠以の差。
さらに販薬にはない成分が混じっていた能性も考えられた。
佐藤は、当司法解剖を担当した元医師の本田を訪ねた。
すでに現を退き、静かな活を送っていた本田は、古い鑑定へ老鏡越しに目を落とした。
「用量の逆算には誤差があります」
「24錠で、この濃度になる能性は?」
本田はすぐには答えなかった。
しばらく数字を追い、ゆっくり息を吐いた。
「絶対にないとは言えません」
「では自然ですか?」
また沈黙。
「……自然とは言いにくい」
本田は鑑定を机へ置いた。
「当もっと調べるべきだったかもしれません」
佐藤はその言葉を聞き逃さなかった。
署へ戻ると、司へ再捜査を直訴した。
「状況は怪しい」
司は佐藤のメモを見ながら言った。
「だが、今あるのは状況証拠ばかりだ」
「それでも調べる価値はあります」
「12だぞ。ホテルもない。薬局もない。関係者も散っている」
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「だから今やらなければ、もっと消えます」
司はく黙った。
「正式な再捜査としてかすには、もうついものが必だ」
佐藤は頷いた。
そのから、違法薬物事件の捜査と並しながら、12の関係者をずつ訪ね始めた。
元取引先。
隣民。
ホテル関係者。
会社関係者。
ほとんどのは何も覚えていなかった。
「昔すぎる」
「名も聞いたことがない」
「分かりません」
10。
11。
そして12目。
倉庫業を営む島という男性が、1994412という付を聞いた瞬、表を変えた。
「そのなら……覚えてます」
佐藤は子へ座り直した。
「何をですか?」
「健が、うちの倉庫のくに来たんです」
「何頃?」
「午2から3くらいだったといます」
美幸の取りが途絶えたとなる。
「でしたか?」
島は眉に皺を寄せた。
「いや」
佐藤の臓がく打った。
「女性と緒でした」
「顔は?」
「かったからはっきりしません。でもは何か言い争っていた」
「どうして当、警察に言わなかったんです?」
「誰も聞きに来ませんでしたから」
その言に、佐藤は返す言葉を失った。
誰も聞かなかった。
だから証言は12、しないものと同じだった。
美幸はで姿を消したのではない。
事件当、健と会っていた能性が極めてくなった。
残るのはホテルだった。
ホテルの元フロント従業員、渡辺は本側の町で暮らしていた。
佐藤は距をでり、彼の自宅を訪ねた。
から吹くがいだった。
「12のホテルのことですか」
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