"十六歳の毒薬花嫁" 第10話
でも、あのの顔は違った。っているの顔というより、何かを確かめに来たの顔でした」
凛は返事をしなかった。だが茂が父の帳簿を奪うほどの決断をした理由が、しだけ分かった。
その頃、野では湊が再び回復へ向かっていた。玄庵の薬を完全に止め、凛が最初に選んだ薬を青の協力で用すると、激しい発作は収まり、には自分で粥をべられるようになった。の力だけは簡単に戻らなかったが、壁へをつけば数歩歩けるほどにはなっていた。
「調べのは、いつですか」
湊は澄へ何度も尋ねた。澄が「あなたはなくてよい」と止めても、本は首を振った。、自分の命のことをに決められ続けたから、最だけは自分のでそこへきたいという。
そして、玄庵が「」と告げたから、ちょうど目。
野の庭で、藩役ち会いのもと調べがかれることになった。
蔵はそのらせを聞いても笑っていた。
証拠はすべて焼いた。
吉もんだ。
の娘がどれだけ騒ごうと、数字のった帳簿を見せれば終わる。
まだ、そう信じていた。
調べの、野の庭には族、奉公、取引商までくの者が集まった。の名残を含んだが砂を巻き、軒先の薬束を揺らしていたが、誰も寒さをにしなかった。
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庭の央には役が座り、そのへ蔵、澄、凛が順に呼ばれた。
蔵は落ち着いた取りでみた。「すべては幼い嫁のい込みでございます。父親がに罪を受けたため、本を逆みしているだけにございましょう」と説し、帳から冊の帳面を運ばせた。
役が冊ずつ調べ、藩へ提された控えと数字を照らしわせた。いの、「この帳面にある仕入れ数と納品数に、きな違いはない」と告げられると、蔵は勝ち誇るでもなく、当然のようにさくをげた。
「ご覧の通りでございます」
凛の胸がえた。帳へ忍び込んだ夜に見た帳面とは数字が違う。蔵がすでに差し替えていることは予していたが、本物の帳簿を茂が持ちしたことを、役がいつすのかまでは聞かされていなかった。
蔵が続けようとした、庭のろから声がした。
「その帳面は、父が先作らせたものです」
垣がへ分かれ、茂がきな呂敷包みを抱えて歩いてきた。蔵の顔から初めて余裕が消えた。
「茂、お……」
「父。父が焼いたのは、こちらの控えです。本物は焼かれるの夜に私が持ちしました」
茂は冊の帳面を役のへ置いた。つの帳簿を並べると、の古さ、綴じ糸の摩耗、墨の沈み方がらかに違っている。しい帳面は分を装っていたが、表だけが自然に擦られ、古く見せる細まで施されていた。
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役が本物の帳面と藩側の記録を照し始めた。庭にはの擦れる音しか聞こえなくなり、蔵は腕を組んだまま微だにしなかった。やがて役が顔をげる。
「い違っている。分、藩へ納めるべき等薬の部が毎抜かれている。特にここは量が増え、帳面では粗悪な品を同量として埋めている」
庭がきくざわめいた。蔵はすぐ「その帳面こそ作り物です」と声を張ったが、今度は青がへて、封印つきの薬包みをつ差しした。
「この、裏の仕入れで何度も同じものが回ってまいりました。藩の封がついたままです。売りに来る者は替わっても、元をたどれば野の薬蔵からたと聞いております」
役が包みを改め、藩の印であることを確認した。蔵は「そんな古具の話を信じるのか」と吐き捨てたが、続いてキヌが垣からみた。
「私は野の台所を預かってきた女でございます。字は満に読めません。けれどから、若旦様へ煎じる薬の匂いが変わりました」
蔵がで笑った。「では薬の名を言ってみろ。つでも言えれば認めてやろう」と挑発すると、キヌの指が膝のでく絡んだ。それでも女は逃げなかった。
「名はよう分かりません。ですが煎じたのも、鍋肌に残るぬめりも、それまでとは違いました。
若旦様がお元気だった頃に使っていた薬は、洗っても指へ苦い匂いが残りました。
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