みかん小説
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"消えなかった500円" 第6話

娘たちも頻繁に顔をした。

あるの午

が林檎を剥いていると、正雄が窓のを見ながら言った。

「何?」

「いろいろ悪かったな」

は包丁を止めた。

「何、急に」

「昔から」

「そんな話、今する?」

正雄は笑わなかった。

「おには苦労かけた」

「夫婦なんだから、お互いさまでしょう」

「娘たちにもな」

「2ともちゃんとになったよ」

「そうだな」

は切った林檎を皿へ乗せた。

「ほら。べて」

正雄は切れだけにした。

はあえて何も聞かなかった。

500円のことも。

昔の仲のことも。

夫が何か言おうとしているような気がしたが、結局そのはそれ以話さなかった。

それからしばらくして。

正雄はくなった。

部分を旋盤として働き、族を養い、ほとんど自分のことを語らないまま。

葬儀が終わった

は静かになったへ戻った。

いつも正雄が座っていた所だけが、自然に空いて見えた。

正雄がくなってから、はなかなか遺品を片づけられなかった。

娘たちは、

「急がなくていいよ」

と言った。

確かに急ぐ理由はない。

正雄の

具。

古い本。

鏡。

全部、そのままにした。

ただ数かが過ぎると、しずつ理しようとえるようになった。

ある

は押し入れの奥にある箱を引っ張りした。

見覚えのない箱だった。

かしていなかったらしく、蓋には埃が積もっている。

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布で拭き、ける。

には昔の領収

賀状。

古い写真。

の名札。

娘たちが幼い頃に描いた絵まで入っていた。

「こんなもの取ってたの」

で笑った。

正雄は捨てるのが苦だった。

娘たちからもらった父のの絵。

の運会の写真。

が初めて編んだマフラーの端切れ。

そんなものまで残してある。

枚ずつ見ているうちに、を忘れた。

そして箱の

学ノートがあった。

は黄ばんでいた。

何もかれていない。

は何気なくいた。

最初のページ。

424

500円。

次の

425

500円。

が止まった。

「……え?」

ページをめくる。

6 500円。

7 500円。

8 500円。

同じ数字が何かも続いている。

の胸がざわついた。

あの500円だ。

20

料袋から消えていた

忘れていた記憶が、気に戻ってきた。

ちゃぶ台。

い封筒。

正雄の聞。

「あなた、500円どうしたの」

「ちょっと使った」

は急いでページをめくった。

数字の隣には、ときどき名があった。

田辺。

松本。

昭夫。

見覚えのない名ばかり。

額もかれている。

2000円。

2500円。

3000円。

自分の500円だけではない。

複数の500円がまとめられているようだった。

「何これ……」

は畳のへ座り込んだ。

さらにめくる。

「田辺分」

「松本分」

分」

そして々、

「昭夫宅送付」

かれていた。

の指が止まった。

昭夫。

誰なのか。

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ノートだけでは分からない。

のページまでめくる。

そこに枚の写真が挟まっていた。

黒写真。

で、若い男たちが並んでいる。

作業着姿。

全部で6

そのに、若い正雄がいた。

今よりずっと痩せている。

髪も黒い。

し照れたような顔でっている。

は写真を裏返した。

で文字がかれていた。

「昭38 業」

の胸の奥で、何かが繋がった。

業。

正雄が以働いていた

41に突然倒産した。

はノートと写真を並べた。

写真に写る男たち。

田辺。

松本。

もしかしたら、このたちなのではないか。

では昭夫とは誰なのか。

はしばらく考えた。

そして、昔聞いた話をした。

正雄の元同僚。

倒産、仕事が見つからず。

その病気になった

妻と子どもがいた。

までは覚えていなかった。

だが、もしそのが昭夫だったとしたら。

はノートを握った。

500円。

も。

それが何のためだったのか。

答えが、すぐ目のまで来ている気がした。

女へ話をかけた。

「お母さん、どうしたの?」

「お父さんの昔のこと、し調べたいの」

「昔?」

業って覚えてる?」

娘は当然らなかった。

正雄がそこにいた頃、娘たちはまださかった。

は詳しく説せず、

「昔のいを探したい」

とだけ伝えた。

正雄の賀状を調べる。

古い所録。

話番号。

も経っている。

引っ越した

くなった

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