"消えなかった500円" 第8話
さな子ども3。
病気で働けない父親。
で計を支えようとする母親。
そこへ届く数千円。
そのに正雄の500円が入っていた。
「昭夫さんは、その……」
が尋ねる。
「しずつ良くなりました」
田辺が答えた。
何かして体調が戻り、軽い仕事から始めた。
男がを卒業して働き始めた頃には、計も落ち着いた。
その段階で正雄たちも送をやめた。
「じゃあ主は……」
は計算しようとした。
毎500円。
何か。
正確な総額は、すぐには分からなかった。
だが問題は額ではなかった。
「度も、自分がしてるって言わなかったんですね」
「ええ」
「昭夫さんにも?」
「最まで」
松本が言った。
「正雄は、ああいうこと言うの嫌いだったから」
「どういうことですか」
「を助けたって、自分で言うこと」
松本はカップを持った。
「誰かに話した瞬、いいことしたって自してるみたいになるだろ、って」
は目を伏せた。
正雄らしい。
あまりにも正雄らしかった。
何かをしても説しない。
誤解されても弁解しない。
に褒められるためにしたのではないから、わざわざ言わない。
そのせいで、では何度もけんかになった。
が責めても黙っていた。
「主、馬鹿ですね」
はさく笑った。
田辺と松本がし驚いた。
「言くらい言えばいいのに」
笑いながら、涙がた。
「の事は話せなくても、何か理由があるって、それくらい言えばよかったのに」
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田辺が静かに頷いた。
「そうですね」
はハンカチで目元を押さえた。
っているのではなかった。
ただ、20以の自分へ教えてやりたかった。
あの500円は、み代ではない。
競馬でもない。
女でもない。
夫が族に隠れて楽しんでいたではなかった。
別の族がきていくために、毎送られていただった。
帰宅したは、でちゃぶ台のへ座った。
昔と同じようにノートを置く。
そして、声にした。
「あなた」
返事はない。
「本当に説がりないだったね」
静かな部に、自分の声だけが残った。
それからしばらくして、のもとへ通のが届いた。
差の名を見ても、すぐには分からなかった。
封をける。
丁寧な字でかれていた。
田辺から所を聞き、を送ったという。
差は、昭夫の男だった。
父の昭夫はすでにくなっていること。
母も数にくなったこと。
そして、子どもの頃にへ何度も届いていたのことを、成してから父から聞いたこと。
はゆっくり読みめた。
『父は、涯、誰が送ってくれたのか確信を持てなかったようです。ただ、属業の仲たちではないかとっていたと言っていました』
の指がし震えた。
『あの頃、がは本当にべるものにも困っていました。母は米びつの底を見て泣いていたそうです』
『そこへ届いたおで、米を買い、学の集を払い、妹の薬を買ったこともあったと聞いています』
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は読むのを度止めた。
窓のを見る。
20以。
自分も同じように米代を計算していた。
学の集。
靴。
気代。
枚の500円札がなくなるたび、
どうして。
とった。
その500円は、同じように計簿を見つめる別の母親のところへっていた。
『父は何度も、いつか活が落ち着いたら返したいと言っていました。しかし送り主が分からず、結局返せなかったそうです』
『父は晩、こう言っていました』
は次のを見た。
『あのがなければ、子ども3を学へかせられなかったかもしれない』
涙が落ちた。
のに丸い跡ができた。
は慌てて拭こうとしたが、もう遅かった。
『佐々正雄様がそののおだったと田辺様から聞き、どうしてもお礼を申しげたくをきました』
『私たち兄妹3は、皆になり、それぞれ庭を持っています』
『私は父親になり、あの頃の父と母がどれほど苦しかったのか、今になってし分かるようになりました』
『に500円だったと聞きました』
『けれど私たち族にとって、その500円は決してさなおではありませんでした』
はを胸へ押し当てた。
しばらくけなかった。
正雄がきているに、このを読ませたかった。
「ほら」
と言ってやりたかった。
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