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"ATM扱いされた父の正体" 第9話

直美の顔が僅かに張ったが、何も言わなかった。それは当然だった。贈ると正式に約束していたではなく、博と私が将来のために密かに考えていた援助だったからだ。

「孫に必なことがあれば、孫本のために使う。教育資なら信託にして、裕介たちが自由に引きせない形にする。それが嫌なら、何も受け取らなくていい」

裕介はゆっくり頷いた。

「それでいい。もう父さんたちのを当てにしない」

はしばらく息子の顔を見ていた。すぐ信用したわけではないだろう。それでも、クリスマスイブ以来初めて、夫の目から刺すようなさがしだけ消えた。

私は裕介へ尋ねた。

「あなた、あの『学費をすのは親なら当たり』って言ったでしょう」

「……うん」

「私は今でも、親としてしてよかったとってる。でもね。当たりだったからしたんじゃないの。あなたにできるだけ選択肢を残したかったから、私たちが自分で選んでしたのよ」

裕介の目が赤くなった。

「親のすることを全部『当たり』で消してしまったら、謝するものが何もなくなるわ。でも逆に、親も『してやった』と言い続けたら子供を縛ることになる。たぶん私たち、どちらも距の取り方を違えたのね」

私はそう言った。

それは息子夫婦だけを責める言葉ではなかった。

3、無理をしてでも孫を預かることがだとい込んでいた私自にも。

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向けた言葉だった。

づく頃、私は38勤めた介護施設を定退職した。最終勤務の、職員たちがさな送別会をいてくれ、以担当していた利用者の族からもが届いた。若い頃から何度も辞めたいといながら続けてきた仕事だったが、最になって初めて「よくここまで来た」と自分へ言ってやれた。

帰宅すると、博きな封筒をテーブルに置いて待っていた。

子。退職祝いに相談したいことがある」

に入っていたのは旅のパンフレットではなく、域福祉法の設に関する資料だった。私はてっきり夫が世界周クルーズでも予約したのかとっていたため、ページをめくりながら首を傾げた。

「これ、何?」

「俺が持っている資産の部を使って、介護職を目指す若いの奨学を作ろうとってる」

私はわず夫の顔を見た。博は以から「介護職は切なのに、待遇や社会評価が追いついていない」と話していたが、まさか自分の資産を使って制度を作るところまで考えているとはわなかった。でも、資格取得費用や実習期活費を支援できる基にしたいという。

「名はまだ決めてない。ただ、子が38やってきた仕事を、誰かに『汚い仕事』と言わせたまま終わりにしたくないんだ」

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胸の奥がくなった。

私はクリスマスイブの玄関をした。あの、息子に仕事を侮辱されたことは、が経っても完全には消えていない。それでも夫は息子を社会に潰すのではなく、私が歩いてきた38を別の形で未来へ残そうとしてくれていた。

「博。私の名は付けないでね」

「なぜだ?」

「恥ずかしいもの。それより、普通の名にして。介護を続けたいが、誰でも使えるものにしてほしい」

夫はし残そうに笑った。それでも「分かった」と頷き、基の仮称から私の名を消した。私はその横顔を見ながら、このが本当にったに選ぶ方法は、私がっていたよりずっと静かでいのだとった。

裕介の会社もしずつ変わっていた。代表権はまだ戻っていなかったが、本は役員として労務改善と顧客対応に取り組み、役員報酬を半分くまでげたと聞いた。亜精との契約も全面解除にはならず、取引額を縮したうえで半ごとの評価を受けることになった。

ある、裕介からが届いた。

そこには会社のことより、私とのかれていた。夜勤けなのに運会へ来てくれたこと、学受験のに駅まで送ってくれたこと、初任で何か買おうとしたら「自分のために使いなさい」と言われたこと。

は忘れていたわけではなく、さなくなっていただけなのだといてあった。

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