みかん小説
本棚

"実印を押さない母" 第3話

「お義母さんのお部も、階にちゃんと作れますよ」

は続けた。

佳代子は顔をげた。

「私の部?」

「今、階でしょう? 将来階段が変になるかもしれないじゃないですか」

その瞬、佳代子は初めて、がすでにリフォーム取りまで考えていることに気づいた。

「もう図面でもあるの?」

し冗談のつもりで聞いた。

ところが直と美瞬目をわせた。

ほんの秒だった。

それで分だった。

「あるのね」

佳代子が言うと、直は苦笑した。

「仮のだよ。のリフォーム部に相談しただけ」

「私に聞くに?」

「だから相談だけだって」

佳代子は箸を置いた。

「見せて」

し迷ったあと、携帯話をいた。画面には階と階の取りが表示された。

階には、リビング、ダイニング、、浴がある。しい図面ではさなに変わり、「母」とかれていた。

畳だった畳半になっている。

その分、リビングが広がっていた。

キッチンにはきなアイランドカウンター。

階には夫婦の寝、杏奈と悠斗の個

今、佳代子が使っている畳の寝は、直夫婦の部になるらしい。

「私、畳半になるの?」

がすぐに言った。

「でも収納作りますし、階の方が絶対便利ですよ」

「そう」

「嫌なら変えられますよ。まだ案だから」

佳代子は携帯話を返した。

広告

「考える」

したようだった。

「ちゃんと考えてよ。今に方向決めれば、内着できるらしいから」

佳代子はまた驚いた。

自分は今夜初めて聞いた話なのに、ではすでに着期までんでいる。

「名義変更って、具体にどうするの?」

佳代子が聞いた。

の顔がるくなった。

「司法士入れてやるみたい。も紹介してくれるって」

「判子がいる?」

「実印と印鑑証とかだとう」

「分かった」

佳代子はそれ以何も聞かなかった。

事のあと、美が珍しく器を洗った。

そのろ姿を見ながら、佳代子はしおかしくなった。

名義の話をしただけ、美が台所にっている。

自分は考えすぎなのだろうか。

夫がきていたら何と言っただろう。

隆司は直に甘かった。

なんて最は子どもにくんだから」と笑ったかもしれない。

しかし、その夜、佳代子は夫の仏壇のに座っても答えを求めなかった。

代わりに、から使っている計簿をした。

たちから受け取った額。

費。

気。

ガス。

固定資産税。

修繕費。

自分が孫の塾代をて替えたまで、細かくかれている。

佳代子は卓をした。

最初の

次の

そして今

ほどかけて、まかな差額をした。

で、約287万円。

自分で暮らしていたより増えた支だった。

広告

もちろん全額が息子族のためとは言い切れない。

それでも、なくとも「お世話になっている」のは、自分の方ではなかった。

佳代子は数字をノートの端へいた。

そして初めて、自分のについてインターネットで検索した。

最寄り駅徒歩14分。

32坪。

築28

同じような古戸建ての価格が、画面にいくつもてきた。

佳代子はその数字を見て、しばらくかなかった。

自分がっていたより、には価値があった。

夫と暮らしただけではなく。

現実のおとしても。

翌朝。

が台所から言った。

「お義母さん、今スーパーきます?」

くけど」

「トイレットペーパーと洗剤お願いします。あと悠斗の牛乳」

佳代子は瞬黙った。

「お置いておいて」

が振り返った。

「え?」

「あなたたちの分でしょう」

に、ほんのい沈黙が落ちた。

は笑った。

「あ、もちろんです」

財布から3000円をした。

したことではなかった。

たった3000円。

それでも佳代子にとっては、ぶりに引いた本目の線だった。

名義変更の話がてから、直は以より嫌がよかった。休にはホームセンターからリフォームのカタログを持ち帰り、美材やキッチンのを話している。佳代子にも「母さんはこっちの壁どう?」と聞くようになった。

しかし佳代子が答えるに、美が「こっちの方が部広く見えますよ」

と決めることがかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: