"実印を押さない母" 第9話
「親が息子から賃取るのかよ」
佳代子は息子を見た。
「息子は親のを無料で使って、事作ってもらって、洗濯してもらって、子どもの送り迎えしてもらって、それでも将来は自分の名義にするの?」
直は何も言えなかった。
「どっちが普通なのか、私にはもう分からない」
美が泣きそうな顔になった。
「私たち、お義母さんを利用してたって言いたいんですか?」
佳代子はし考えた。
「最初からじゃなかったとうよ」
それは本だった。
最初、美はきちんと謝していた。
直も庭を刈り、買い物へった。
いつから変わったのかは分からない。
「しずつ、当たりになったんでしょうね。私も、やるのが当たりになった」
佳代子は自分のを見た。
「だから回、終わらせたいの」
直が子からった。
「俺、こんなの納得しないから」
佳代子は頷いた。
「納得するまで話せばいいよ」
「ていかないって言ったら?」
司法士ではなく、佳代子が答えた。
「そのは、弁護士さんを通します」
直の顔が固まった。
そこで初めて、本気だと分かったらしい。
佳代子は鞄のの実印を触った。
今は判子を押すために来た。
ただしを渡す類ではない。
この、産会社との媒介契約に使う予定だった。
佳代子はまだを売ると決めたわけではなかった。
けれどつだけ決めていた。
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自分ののな類へ、もう「族だから」という理由だけでは判子を押さない。
司法士事務所から戻ったから、のは別のになった。
直は必最限しか佳代子と話さなくなった。美は子どものでは普通に振るっていたが、になるとたい表を見せる。夜になると階から夫婦が話しう声が聞こえ、々「お義母さん」「賃」「引っ越し」という言葉だけが廊へ漏れた。
佳代子は、なら耐えられなかったとう。
族が同じ根のでをきかない。
孫に気を遣わせる。
卓の空気が悪い。
それを避けるためなら、自分が謝っていたかもしれない。
今回は謝らなかった。
代わりに、活を完全に分けた。
蔵庫の半分は直。
半分が佳代子。
調料や米まで完全に分けるつもりはなかったが、美が買った物と佳代子が買った物が分かるようにした。
洗濯も別。
事も別。
ゴミ当番も曜を決めた。
最初の週で、直は度ゴミのを忘れた。
美は朝6半に起きて弁当を作るようになった。
佳代子は自分分の朝をべながら、その姿を見ていた。
以は同じに分を作っていた。
ある朝、美が言った。
「お義母さん、楽になったでしょうね」
嫌だった。
佳代子はし考えた。
「うん。かなり」
美は何も言わなかった。
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本当に楽だった。
洗濯物は分の。
米もなかなか減らない。
スーパーの買い物袋は軽い。
末に計簿をつけると、費がより4万3000円減っていた。
とガスはすぐには変わらないが、それでも数字を見て佳代子は笑った。
自分が「族のため」に使っていた額を、初めて具体に理解した。
方、直の方は余裕がなくなっていた。
美は仕事を終えて買い物をし、夕を作り、洗濯をする。
直も以より事をするようになった。
曜の朝、掃除をかけている息子を見て、佳代子は妙な気分になった。
できないのではなかった。
しなくて済んでいただけだった。
杏奈は々、佳代子の部へ来た。
「ばあば、本当に私たち引っ越すの?」
「パパとママが決めることだよ」
「ばあばってる?」
佳代子は正直に考えた。
「ってた。でも今は、ちょっと違うかな」
「何が?」
「ちゃんと分けたいの」
杏奈は分からない顔をした。
佳代子は無理に説しなかった。
「あなたと悠斗が嫌なわけじゃないよ」
「分かってる」
「本当?」
「だってばあば、私の誕プレゼントもう買ってるでしょう」
佳代子は驚いた。
クローゼットのへ隠していた。
「何でってるの」
「袋見えた」
学は侮れない。
「パパとママには言わないで」
「何を?」
「プレゼント」
「のことじゃないの?」
佳代子は笑った。
杏奈も笑った。
子どもに必なのは、の事を全部背負わせることではない。
佳代子はそれだけを守ろうとった。
12に入ると、直が所の賃貸物件を見始めた。
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