"22年目の母席" 第5話
「これ、に」
美緒が受け取る。
には通帳ではなく、の振込細が入っていた。
200万円。
美緒の顔が変わった。
「何これ」
「結婚祝い」
「こんなにもらえない」
「結婚式っておかかるでしょう。今まで何もしてやれなかったから」
美緒はすぐ返そうとした。
麗子は受け取らなかった。
「お願いします。私にも、しくらい親らしいことをさせて」
親らしいこと。
またその言葉だった。
静はしたように言った。
「ありがたいですね、美緒さん」
達也も困った顔をしていたが、そのではく断れなかった。
結婚式の見積もりは、当初よりかなり膨らんでいた。
約420万円。
は貯から250万円ほどし、残りを双方のからし援助してもらう予定だった。
京子は50万円を渡すつもりだった。
修平とに貯めていた、美緒の結婚用のだった。
浦からは100万円。
そこへ麗子の200万円が入れば、の負担はほとんどなくなる。
帰宅、京子は美緒へ聞いた。
「受け取るの?」
美緒はテーブルに振込細を置いた。
「分かんない」
「嫌なら返せば」
「でも達也のお母さん、すごくんでた」
「静さんのおじゃないでしょう」
美緒が黙った。
「お母さんは、どうう?」
京子はし考えた。
「私なら受け取らない」
美緒の顔が曇った。
「やっぱり麗子さん嫌い?」
「そういう話じゃないよ」
「じゃあ何?」
「22何もしなかったことと、200万円は別でしょう」
広告
言ってから、京子はしすぎたとった。
美緒はしばらく黙っていた。
「でも、おに罪はないじゃん」
それは正しい。
京子には返す言葉がなかった。
数、美緒から話があった。
「麗子さんのお、受け取ることにした」
「そう」
京子はそれだけ答えた。
「達也とも話した。今、親として何か求められても、それとは別ってちゃんとする」
「美緒が決めたならいいよ」
「ってる?」
「ってない」
本当だった。
ってはいなかった。
ただ。
母親という所にも、値段がつくのだろうかとった。
50万円の京子。
100万円の浦。
200万円の麗子。
もちろん誰もそんな計算はしていない。
それでも結婚式の準備がむにつれ、麗子の発言権は目に見えてきくなった。
ドレス選びにも参加した。
料理の試にも来た。
招待客の話にもをした。
そしてついに、
ベールダウンの話になった。
京子が度も「自分がやりたい」と言わなかった役割だった。
それなのに失った瞬、
こんなにもやりたかったのだと初めて気づいた。
ベールダウンの打ちわせから、美緒がで京子のへ来た。
にはコンビニのケーキをつ持っていた。
昔、美緒が何か頼みにくい話をするによく使った方法だった。
「コーヒー淹れる?」
京子が聞くと、
「私やる」
と美緒が言った。
で向かいって座った。
しばらくケーキをべた。
広告
美緒はなかなか本題を話さなかった。
「何?」
京子から聞いた。
美緒がフォークを置いた。
「式のことで、もう個お願いがある」
京子は嫌な予がした。
「何?」
「当だけなんだけど」
美緒は目をわせなかった。
「麗子さんがいるでは、私がお母さんって呼んでも……返事しないでもらえる?」
京子はが分からなかった。
「どういうこと?」
「浦のお母さんが、親族紹介とかで混乱するからって」
「誰が混乱するの?」
「向こうの親戚とか」
京子は美緒を見た。
「じゃあ私は何て呼ばれるの?」
「京子さん」
答えは用されていた。
22に戻る。
「式のだけ?」
「うん」
「美緒も私を京子さんって呼ぶの?」
美緒の目が赤くなった。
「ごめん」
京子は急にケーキが甘すぎるとじた。
「そこまでしないと結婚できないの?」
「そういうわけじゃない」
「じゃあ何で?」
美緒は俯いた。
浦の親戚には、古くから付きいのあるもい。
事を細かく説すると余計な質問がる。
麗子が実母として席する以、京子まで母として扱うと「どういう関係なのか」となる。
「普通にしておきたいの」
美緒は言った。
その言葉で、京子のの何かが切れた。
普通。
何度も聞いた。
「美緒」
「うん」
「私は普通じゃなかった?」
美緒が顔をげた。
「そういうじゃ」
「7歳の子がいると結婚して、血のつながってない子を育てて、夫が先にんでもそのまま親子でいるのは、確かに普通じゃないかもしれない」
「お母さん」
美緒が反射に呼んだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
凍える孫と消えた家
年末、麻子が息子夫婦の家を訪ねると、十四歳の孫・音実が靴も履かず、凍える庭に置き去りにされていた。父親たちは義姉を連れて海外旅行へ出たという。ところが空港から逃げ帰った義姉・杏奈の告白により、二人の少女が受けていた仕打ちと、音実に掛けられた一億五千万円の生命保険が明らかになる。 これは単なる育児放棄ではなかった。実の娘の命まで金に換えようとした息子に対し、土地も家も握る麻子は静かに反撃を開始する。三週間後、旅行から戻った夫婦を待っていたのは、豪邸が跡形もなく消えた更地と、彼らの人生を根底から崩すさらに大きな罠だった――。祖父母と孫|絶縁|親子関係|修羅場2.5万字5 804 -
完結第14話
1000万円のハワイ旅行を贈ったら、私だけ家族から外されました
亡き夫との夢を叶えるため、息子一家と両家の親が参加するハワイ旅行に一千百二十万円を支払った静江。ところが出発直前、息子の健太から「行くのは妻の両親だけ。もう連絡しないでほしい」と告げられる。六年間続けてきた住宅ローン援助や孫の送迎まで当然のように扱われていた静江は、息子の希望どおり、すべての支援を打ち切った。 息子夫婦がハワイを満喫している間、静江のもとに旅行代理店から精算書が届く。そこには、健太が二か月前から母を旅行者名簿から外し、「重度の認知症と末期癌の疑いがある」と虚偽の申告をしていた記録が残されていた。 さらに義弟からの電話で、健太が静江を判断能力のない高齢者に仕立て、成年後見人として財産管理権を握ろうとしていることが判明する。狙われていたのは、資産価値八千万円の自宅と三千万円の老後資金。しかも計画には、嫁とその父親、虚偽の診断書を作った医療関係者まで関与している疑いがあった。 静江は弁護士と任意後見契約を結び、正常な認知機能を証明する診断書と旅行代理店の通話記録を確保する。そして帰国した息子夫婦を待っていたのは、止められた送金、返送された孫の荷物、そしてホテルのテーブルに並べられた逃げ場のない証拠だった。家族旅行から排除した母が、自分たちの計画をどこまで知っているのか――二人がそれを理解した時、作り上げた“幸せな家族”の姿が崩れ始める。嫁姑|親不孝|親子関係2.2万字5 787 -
完結第16話
退職金を狙った息子夫婦と、亡夫の最後の記録
三十八年勤めた病院を退職した夜、久美子は息子夫婦から一枚の振込用紙を差し出された。 金額は、退職金の全額にあたる千八百万円。 「孫の将来のため」と迫られた久美子は署名を拒み、亡夫が残した通帳を調べ始める。すると、死後も三年間続いていた謎の送金と、《健太には知らせるな》という赤い文字が見つかった。 さらに孫本人は、息子夫婦が語る私立高校も医学部も望んでいなかった。 家族のために用意されたはずのお金は、いったい誰の借金を埋めていたのか。亡夫の署名が入った二通の承諾書、銀行へ持ち込まれた偽の委任状、そして貸金庫に隠された最後の手紙。 久美子が送金を止めた瞬間、息子夫婦が長年隠してきた金の流れが、静かに崩れ始める。親不孝|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.1万字5 817 -
完結第17話
娘の席を愛人に譲った夫の末路
夫・敬吾が愛人を優先し、6歳の娘・陽菜を飛行機の後方席へ一人で追いやろうとした瞬間、さゆりは離婚を決意する。実は彼女こそ、敬吾の出世を陰で支えてきた一流の法務コンサルタントだった。 さゆりは娘とプライベートジェットで北海道へ向かいながら、夫の不正経費と愛人関係を会社へ告発。敬吾は部長職を失い、北陸の倉庫へ左遷され、慰謝料と養育費の支払いも背負う。 その後、さゆりは自分の名で事務所を開き、娘との生活を再建する。一年後、母娘はあえて普通席の35列目に並んで座り、誰にも奪われない二人だけの旅へ出発した。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 2972 -
完結第24話
息子が私を認知症にした日
七十歳の誕生日、息子は親戚十二人の前で私を「認知症」だと決めつけた。 「来月から施設へ入れよう。財産の管理は俺がする」 差し出されたのは施設の申込書と、実印を押すだけの財産管理委任状。けれど私は二週間前、すでに病院で検査を受けていた。 《認知機能に年齢相応以上の低下を認めない》 息子が欲しかったのは私の安全ではない。私名義の駅前の家と、その財産を自分で動かす権利だった。 翌朝、私は司法書士へ連絡し、息子一家に無償で貸していた家の調査を始める。すると、工事をしていないはずの家に《改修費一千二百万円》の完了書類が作られ、会社の借金返済に使う計画が判明した。 さらに見つかった三百万円の借入申込書には、孫の進学費用ではなく、私の家を担保にするための記載があった。 そして、その書類の立会人欄には、最も信じたくなかった家族の名前が書かれていた。親子関係|修羅場1.6万字5 557 -
完結第12話
兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした
理沙は、兄・幸介の結婚式に呼ばれなかった。 母から告げられた理由は「本当に親しい人だけの小さな式」。しかし式当日、偶然届いた親戚からの連絡で、実際には七十人規模の披露宴が開かれ、自分だけが意図的に外されていたことを知る。 家族のために青春を捧げ、兄を支えてきた過去。だが、母と兄は理沙の離婚歴や仕事を理由に「相手の家に見せられない存在」として扱っていた。 傷つきながらも北海道で一人過ごした理沙は、帰宅後、兄から真実を聞かされる。しかし兄の説明は、母の言葉を繰り返すだけの言い訳だった。 なぜ自分だけが家族から消されたのか。 そんな中、兄の妻となったゆかから突然連絡が届く。 「どうしても直接お話ししたいことがあります」 そこで明かされるのは、母と兄が隠していた、結婚式欠席の裏にあるもう一つの真実だった。兄弟姉妹|親子関係|修羅場1.8万字5 944 -
完結第11話
両親を亡くした私が旅行から帰ると、実家が消えていた
両親を相次いで亡くした美穂に、夫・雅也が突然、一週間の温泉旅行を贈った。初めて見せた思いやりを信じて家を空けた美穂だったが、帰宅すると、思い出の詰まった実家は跡形もなく解体されていた。 雅也は土地を売り、その金で義実家を二世帯住宅にするつもりだった。しかし美穂が遺産を相続したというのは、三人の勝手な思い込みだった。名義変更前の家を無断で壊し、所有者の承諾書まで偽造した疑いが浮上する中、美穂は両親の思い出を奪った夫と義両親への反撃を始める。因果応報|嫁姑|夫婦|金銭問題1.7万字5 928 -
完結第17話
三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く
奥羽鉱業・黒竹事業所で23年無事故を守り抜いてきた発破主任の酒井誠一は、ある朝、巨大な黒蛇の夢と坑道の異様な臭気から「発破を三日待て」と直訴する。しかし、工期短縮と300万円のボーナスに目が眩んだ現場監督・高木は酒井を即刻解任し、発破を強行しようとする。起爆まであと数秒、酒井は職を賭して大ハンマーで起爆装置を叩き壊した。 「狂人」と罵られ資材庫に監禁された酒井だったが、本社保安部長の介入と手帳に残された緻密な記録によって、高木の日報改ざんが白日の下に晒される。そして約束の三日目の朝――全坑内員120名が退避を完了した直後、山は地獄の咆哮とともに大崩落を起こした。九死に一生を得た男たちが崩落断面で目撃したのは、神の導きか、500億円の超高品位金鉱脈だった。職場逆転|因果応報3.2万字5 228 -
完結第14話
今日でクビだ」黒蛇の夢を信じて280万円の起爆装置を壊した俺。3日後、127人が退避した直後――山が崩れた
黒竹鉱山で24年間働く発破主任・酒井誠一は、黒蛇から「3日だけ待ってくれ」と告げられる夢を見る。第4区画の異臭、増えた湧水、変化した岩の反響にも危険を感じ、発破の延期を求めるが、高木監督は彼をその場で解任。さらに、同じ地点で繰り返されたガス警報まで日報から消されていた。工程を3日短縮すれば、高木には80万円の報奨金が入る。午後2時、未署名の確認表を無視して起爆準備が始まる中、酒井は工具箱からハンマーを取り出した。仕事も生活も失う覚悟で手に入れた3日後、127人の運命と山に眠る秘密が動き始める。因果応報2.0万字5 198 -
完結第11話
棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬
秋田の豪雪地帯で、七歳の少女・雪の葬儀が営まれていた。ところが愛犬ハチだけは棺に向かって激しく吠え、畳を掻き続ける。周囲が狂犬扱いする中、前妻であり元救命看護師の静子は、棺の内側から聞こえる微かな音と、雪の指先の動きを見逃さなかった。 静子が葬儀を止めて棺を開けると、雪には脈と呼吸が残っていた。静子は的確な応急処置を行い、雪はついに「お母さん」と声を発する。無力だと見下していた静子に娘を救われ、後妻エミリーと父・健一は言葉を失う。 しかし、奇跡の生還で物語は終わらない。救急搬送される娘に付き添いながら、静子は「なぜ雪が猛吹雪の夜、裏山へ出たのか」という疑念を抱く。人生逆転|真実|真相|親子関係1.6万字5 970