みかん小説
本棚

"新郎が消えた結婚式" 第3話

「兄妹2きりなんだ。のことは智にも伝ってもらうかもしれない。でも活のことは配しなくていい」

あまりにも当たりのように言われて、私は返事ができなかった。

そのの航太には、私を引き受ける義務などなかった。

私たちは血のつながらない兄妹だ。

両親が再婚してから、まだそれほどいも経っていない。

実の両親でさえ私たちを置いて逃げたのだから、航太が自分のを優先して私とれたところで、誰も責めることはできなかった。

それなのに航太は、私を置いていかなかった。

言葉通り、学へ通いながらアルバイトをいくつも掛け持ちするようになった。

居酒。

引っ越しの仕事。

がいと聞けば、空いたに別の仕事も入れた。

朝くをて、学へき、そのまま夜遅くまで働く。

帰宅する頃には、顔が悪いことも珍しくなかった。

「お兄ちゃん、ちゃんと寝てる?」

ある晩、玄関から入ってきた航太を見て、私はわず聞いた。

「寝てる寝てる」

「嘘。顔悪いよ」

「丈夫だって」

靴を脱ぎながら航太は笑った。

「それより智、飯った?」

「べたよ。お兄ちゃんは?」

「俺はでいい」

「またそう言って何もべないんでしょ」

「ちゃんとうって」

そんなやり取りが常になった。

私は申し訳なさでいっぱいだった。

自分の活費。

広告

の学費。

制や教材。

費。

それらを航太が働いて払っている。

ある夜、できずに言った。

「お兄ちゃん、ごめんね」

「何が?」

「私のせいで、こんなに変ないさせて」

航太は瞬きょとんとした、眉をひそめた。

「智のせいじゃないだろ」

「でも――」

「俺たちを置いて逃げたあのたちが悪い。智が責任じることじゃない」

「……」

「何も気にしなくていい」

その言葉に、何度救われただろう。

血のつながりなど関係なかった。

航太は、私がそれまで会ったどんなよりも族だった。

だからこそ、私は何とかへ通い続けたかった。

航太が無理をして払ってくれている学費を、無駄にしたくなかった。

けれど現実は、うようにはいかなかった。

へ入ると、学代に私をっていた徒と同じクラスになった。

「あの子のお母さん、男と逃げたんだって」

「再婚相とも緒に?」

「借もあったらしいよ」

さな声で話しているつもりなのだろう。

けれど、聞こえていた。

母の過。

再婚。

失踪。

借。

私が必で隠したかったことを、面い噂話として広げられた。

また教へ入れなくなった。

朝、制を着る。

玄関へ向かう。

それだけで悸がした。

それでも航太のためにかなければとった。

「丈夫」

自分に言い聞かせ、学へ向かった。

しかしの方が先に限界を迎えた。

広告

ある朝、どうしても布団から起きがれなくなった。

があるわけではない。

体のどこかを怪したわけでもない。

ただ、体が鉛のようにかった。

数休めば戻れるとった。

けれど1週、2週と経っても、教へ戻ることを考えるだけで涙がた。

私はとうとう航太へ言った。

「、辞めたい」

航太はすぐに答えなかった。

「本当にいいのか?」

「……うん」

「無理してない?」

「無理して通う方が、もう無理」

それを聞いた航太は、しばらく私の顔を見てからさく頷いた。

「分かった」

らなかった。

「無理するのはよくない。学だけが全部じゃないから」

「でも、お兄ちゃんが払ってくれた学費……」

「そんなこと気にすんな」

結局、私はを退した。

航太があれほど苦労して通わせてくれたのに。

そのことへの申し訳なさは、になった今でも完全には消えていない。

しばらくはでを休めた。

しずつへられるようになると、アルバイトを始めた。

私も働けば、航太の負担をし減らせる。

そんないだった。

兄妹2で計を支える活が続いた。

やがて航太は学を卒業し、企業へ就職した。

私は正社員として働ける職を見つけた。

派なことは何もなかった。

それでも、親に振り回されることのない々は、私にとって分すぎるほど穏やかだった。

そして数。

あるの夕、航太が珍しく緊張した顔で箸を置いた。

「智」

「何?」

「実は……結婚を考えてるがいるんだ」

私はわず箸を落としそうになった。

「え、本当に?」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: