"トウモロコシ畑に消えた母" 第6話
健は2へを払い、沈黙させた。
けれど佐々は、健を信用していなかった。取引の付、薬物の種類、額、受取を暗号化した帳簿へ記録し、万がに備えて音声も残していた。
「は危ない。自分が絶対に正しいとい込んでいるは、いつか周りまで消そうとする」
佐々は仲へそう話していた。
その記録が表へるまで、さらにいが必だった。
2014、警庁と複数県警の同捜査により、から違法薬物を持ち込んでいた組織が摘発された。関係先から押収されたパソコンには、20い取引履歴が暗号化されて保されていた。
数かをかけてデータを解析するで、分析官が「K-TK」という顧客コードを見つけた。取引先の所は、青沢にある健の会社の旧倉庫と致した。
19997から8にかけて、健は未承認の鎮静薬を複数回購入していた。事件の3には、注射器とともに通常より濃度のい薬剤を受け取った記録がある。
さらに、取引担当者の備考欄には奇妙な文章が残されていた。
「8/17朝使用。老。類処分。農の件」
分析官は野県警へ連絡した。
未解決事件の照を担当していた松田は、保管庫から芳子の事件資料を取りした。定がづき、髪が増えていたが、現写真と健の名は忘れていなかった。
広告
「トウモロコシ畑の事件だ」
松田は古い証拠品の再鑑定を請した。
1999には特定できなかった芳子の保試料を、最の分析装置で調べ直した。その結果、毛髪の部と筋肉組織から、押収された帳簿に記された鎮静薬と同じ成分が検された。
芳子は、に薬物を注射されていた。
続いて、現から見つかったプラスチック片が再検査された。形状を3次元解析すると、それは畜用器具ではなく、製注射器の針を保護する部品だと判した。
国内で正規販売された記録はない。健が佐々から購入した注射器と、製造番号の形式まで致した。
部品の内側からは、芳子の血液と、男性の皮膚片に由来する微量DNAが検された。15の保管で劣化していたため完全な型ではなかったが、健の父系と矛盾しない特徴を持っていた。
さらに、プラスチックの溝には青沢周辺で栽培されていた特定品種のスイートコーンのと、健の会社が使用していた業用洗浄剤の成分が混じっていた。
事件の現、薬物取引、健の会社が、1つのさな証拠で結ばれた。
しかし、逮捕にはまだ壁があった。
DNAは部分で、健本のものだと断定できない。取引帳簿も裏社会の物が作った記録で、偽造の能性を完全には排除できなかった。
そして、本のアリバイが残っていた。
広告
松田は15の資料を最初から読み直した。クラブにいた男が持っていた健の携帯話、その位置報が本周辺で何度も移していることに気づいた。
個にいたはずの男の話が、午1から3のに、から300メートルれたコンビニや駐、裏通りの基局を順番に移していた。
「代わりが、本らしく見せるために携帯を持ち歩いていた」
松田は鈴の所を調べた。
鈴はすでに健の会社を辞め、埼玉県内の運送会社で働いていた。妻とは婚し、1で暮らしていた。
任の事聴取に対し、鈴は最初、何もらないと答えた。
松田は古い通信記録を机へ置いた。
「あなたが持っていた携帯話は、クラブの個にありませんでした。何度もへています」
鈴の顔が変わった。
「社に、話が鳴ったらへて応答しろと言われたんじゃないですか。暗い個で、健さんのスーツを着て」
「違います」
「では、事件の翌に500万円を受け取った理由は?」
鈴は両で顔を覆った。
15守られてきたアリバイが、音をてて崩れ始めた。
鈴は、クラブで代わりを務めたことを認めた。健から「会社のな交渉で、京にいるよう見せる必がある」と説され、スーツ、腕計、携帯話を渡されたという。
「を殺すなんてりませんでした。
翌ニュースを見て、もしかしたらといました。でも社に聞いたら、余計なことを考えるなと言われて」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
昭和44年、最終バスから消えた女性車掌
昭和44年、女性車掌・藤村紀子は最終バスの途中で姿を消し、車掌鞄から三万円を盗んで逃げたと噂された。25年後、娘の美和が廃校の屋根裏で十三枚の乗車券を発見する。当夜の公式記録は乗客十二人だったが、十三枚目は家庭で虐待されていた九歳の少年・高瀬誠の切符だった。 紀子は帰宅を拒む誠を継父・大島へ渡さず、夫の英一に託して鉱山会社の不正資料を取りに向かった。事故隠蔽や児童労働の証拠を掴んだものの追われて富山へ逃れ、その後三度手紙を送っていた。しかし英一は、最初は誠を守るため、後には自分の嘘が露見する恐怖から、すべて受取拒否にしていた。三万円の盗難も、運転手や営業所長らが作った偽装だった。 生存していた紀子と再会した美和は、母の潔白を証明しても、25年の不在まで無条件には許さない。会社記録は訂正され、十三枚の切符は廃校の資料室に保存される。父母は離婚し、美和は双方と境界を定めながら関係を築き直す。最後に母娘は一緒に資料室の戸締まりをし、次に会う日を、初めて誰にも決められず自分たちで選んだ。歴史|昭和|ミステリー|真相2.7万字5 441 -
完結第18話
昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた
昭和51年、深夜番組の途中で言葉を止めたアナウンサー・孝一が、そのまま姿を消した。局から消えた200万円を持ち逃げしたと疑われ、家族には盗人という噂だけが残る。18年後、娘の奈津美は放送局の壁から、当夜の未放送音声を記録したテープを発見する。 調査の末、孝一はダム建設に伴う戸籍偽装と土地補償の不正を知り、死亡したことにされた女性の娘を守ろうとして町を離れたと判明する。200万円の受領書も局幹部による偽装だった。しかし危険が去った後も、孝一は家族に拒絶されることを恐れ、自ら帰らない年月を重ねていた。 奈津美たちは父と再会するが、すぐに昔の家族へ戻ろうとはしない。父の潔白だけでなく、その後の沈黙も記録に残し、それぞれの距離で関係を築き直す。資料館では途切れた放送と地域の声が保存され、孝一は新たな記録に《今度は、返事がなくても、自分から確かめる》と書き残した。昭和|ミステリー|真相|行方不明2.7万字5 272 -
完結第16話
廃線駅に殘された最後の切符
昭和43年、廃線となった白沢駅で、老駅長・源吉は毎年3月12日になると、昭和25年の日付が入った東京行きの切符を机に置いていた。若い駅員の修一が調べると、その日は14歳の少年・健一が故郷を離れた日だった。 健一は別の少年を助けるために名前を貸し、故郷では東京へ就職したことになっていた。しかし本人は別の土地で働き、母へ送った手紙も届かないまま、帰る場所を失っていた。源吉は、東京へ行きたくない健一を時代の流れに任せて送り出したことを、長年悔やんでいた。 源吉の死後、白沢駅へ戻った健一に、修一は最後の切符を渡す。それは旅立ちを促すためではなく、「いつでも帰ってきてよい」と伝えるために残された一枚だった。健一は草に覆われた廃線跡を歩き、置き去りにした故郷との時間に向き合う。歴史|昭和|ミステリー2.4万字5 178 -
完結第19話
昭和54年、消えた母の集金袋
昭和54年の集金日、商店街の積立金86万4千円とともに母・澄江が姿を消した。金を持ち逃げしたという噂を残したまま17年。娘の直子は、父の遺品から「返すこと」と書かれた千円札を見つけ、古い帳簿を調べ始める。 調査で見つかった受領書は、澄江が集金した全額を会計担当の大竹へ渡していたことを示していた。大竹は会費の使い込みを隠すため、澄江が倉庫の点検槽へ落ちた夜に救助を呼ばず、失踪後も嘘を重ねていた。ただし、転落の瞬間に何が起きたかは分からない。 直子と弟の修司は母の汚名を晴らし、積立金の記録と返金先を調べ直す。帳簿に残った「集金係の未入金」という記述も訂正された。直子は母の集金袋を店の棚に戻し、修司と並んで帰り道を歩く。時代|昭和|ミステリー|真相2.8万字5 284 -
完結第10話
昭和51年、閉山した炭鉱町から消えた父
昭和51年、炭鉱が閉山した3日後、保安係だった父・修一が姿を消した。玄関には泥のついた長靴と作業帽が残され、母は「探さなくていい」と口を閉ざす。だが娘が父の作業着から見つけた紙片には、閉鎖された坑道の名と、謎の時刻が記されていた。 調べるほどに浮かび上がる、改ざんされた保安記録、帳簿から消された作業員、そして会社が隠そうとする閉山直前の事故。やがて坑道に残された録音から、父が誰かを救おうとしていた事実が明らかになる。しかし数十年後に届いた父の名札には、さらに不可解な言葉が刻まれていた。 「北の出口から出た。家へは戻れない」 父はなぜ、生きて坑内を出ながら家族のもとへ帰らなかったのか――。時代|歴史|昭和|ミステリー|真相1.5万字5 210 -
完結第11話
火曜日だけ「受取済」が増える町
昭和22年、大阪。配給日の火曜日になると、まだ米を受け取っていない家の通帳に、なぜか《受取済》の判が押されていた。 ある日、十六歳の俊夫の家も米を受け取れず、家族は一週間分の食料を失う。印影は母の判子と酷似し、配給所では叔父が帳簿を管理していた。 真相を確かめるため、俊夫は夜の配給所へ忍び込む。そこで見つけた裏名簿には、死亡者や未帰還兵の名義で今も米が支給されていた。 そして、その中には二年前に亡くなった父の名前もあった。 《高橋勇作 一人分》 《受取人 芳江》 母はなぜ、死んだ父の名で米を受け取り続けていたのか。さらに調べるうち、善意から始まった秘密の配給と、それを利用して本当に米を奪っていた人物の存在が浮かび上がってくる。歴史|昭和|ミステリー1.6万字5 158 -
完結第19話
廃線の駅で待ち続けた父
昭和37年、源吉は毎週金曜日、15年前に列車が来なくなった青谷駅のベンチで誰かを待っていた。駅員の中村が古い記録を調べると、源吉の息子・修一は終戦後の列車事故で消息を絶っていた。 しかし修一は、事故の直前に戦災孤児の健一を助けるため列車を降りていた。源吉が本当に待っていたのは息子ではなく、「修一さんに助けられた。いつか会いに行く」と手紙を送った健一だった。 中村は30歳になった健一を探し出す。修一の家族を苦しめることを恐れ、15年間会いに行けなかった健一は、最後の金曜日に青谷駅を訪れる。源吉はその顔へ震える手を伸ばし、「修一に似ている」と静かに告げた。歴史|昭和|ミステリー2.9万字5 276 -
完結第12話
消えた姉と18年後の手紙
昭和39年、19歳の佐和子は東京の洋裁店へ働きに出るため、柳行李を上野駅へ送った。しかし本人は店に現れず、上野に届いた荷物からは財布、印鑑、戸籍関係の書類だけが消えていた。家族は、佐和子の帰りを待ち続ける。 18年後、弟の浩二は父の遺品から、姉が乗るはずだった夜行列車とは別方向の列車に印を付けた時刻表と、失踪から2か月後に届いた姉の手紙を見つける。父は、佐和子が生きていることも、自ら家を離れたことも知りながら、家族へ隠していた。 横浜で姉を見つけた浩二は、佐和子が家族のために決められた人生から逃れ、自分の道を選んだと知る。やがて佐和子は弟と列車に乗り、母の墓がある故郷へ向かう。今度は誰かに決められた旅ではなく、自分の意思で選んだ帰郷だった。時代|歴史|昭和|ミステリー1.7万字5 381 -
完結第18話
消えた写真屋の父が残した一本のビデオ
昭和62年の運動会の日、写真館を営む信吾が姿を消した。店から商店街の預かり金200万円もなくなり、家族を捨てて逃げたと疑われる。8年後、娘の由美は運動会のビデオの続きに、失踪したはずの父が午後4時過ぎ、道路計画をめぐって時計店主と口論する姿を見つけた。 由美が調べると、道路の調査資料は書き換えられ、父はそれを示す写真を守ろうとしていたことが分かる。一方で信吾は生きており、家族に連絡できる時期になっても帰らなかった。母の千鶴も、子どもを守るつもりで映像と自分が受け取った金のことを隠していた。 真相が明らかになっても、失われた8年は戻らない。由美と千鶴は新しい写真の店を開き、信吾とは時間をかけて会い直す。由美は今の家族をそれぞれの居場所で撮り、自分の写った一枚も店の棚に置いた。昭和|ミステリー|真相2.7万字5 938