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完結第9話
壁の中の合唱団
1991年、川崎市の市民文化会館で、合唱団に所属する3人の女性が練習後に忽然と姿を消した。 通帳も財布も身分証も残されたまま。家族を置いて消える理由など、誰にも思い当たらなかった。だが、手がかりは見つからず、事件はやがて「自発的失踪」として片づけられていく。 それから20年後。 老朽化した文化会館の解体工事中、作業員が地下の図面にないコンクリート壁を発見する。そこだけ不自然に塞がれた壁。ハンマーで崩した先にあったのは、20年間誰にも見つからなかった暗闇だった。 なぜ3人は消えたのか。 誰がその壁を作ったのか。 そして、合唱団の歌声が響いていた会館の地下で、本当は何が眠っていたのか――。ミステリー|行方不明1.4万字5 6298 -
完結第6話
7時15分の黒い日記
昭和56年、浜松市で29歳の銀行員・吉田道子が忽然と姿を消した。 毎朝7時15分、同じ停留所から同じバスに乗り、銀行へ向かっていた道子。真面目で几帳面な彼女は、ある日から家の前に残る見慣れない吸い殻と、背後からの視線に怯えるようになる。 「誰かに見られている気がする」 そう夫に訴えても、気のせいだと片づけられた。 そして11月の夜、親睦会の帰りに乗ったはずのバスを最後に、道子は家までわずか300mの場所で消息を絶つ。 事件は未解決のまま7年が過ぎた。 昭和63年、1人のバス運転手の遺品から十数冊の日記が見つかる。そこに記されていたのは、道子を3年間見つめ続けた男の、あまりにも歪んだ記録だった――。ミステリー|行方不明9.4千字5 571 -
完結第10話
白いドレスの告白
昭和57年、東京のホテルで行われた一つの結婚式。 純白のドレスに身を包んだ花嫁・田中京子は、幸せの絶頂にいるはずだった。だが披露宴の途中、高校時代の同級生たちが口にしたある名前を聞いた瞬間、彼女の表情は凍りつく。 佐藤美智子。 8年前、昭和49年の伊豆旅行中に忽然と姿を消した、京子の親友だった。 「美智子ちゃん、ごめんなさい……」 化粧室で泣き崩れる花嫁の声を、偶然聞いてしまった同級生。その一言をきっかけに、未解決のまま眠っていた失踪事件が再び動き出す。 親友との再会、伊豆の夜、月明かりの展望台。 8年間、誰にも言えなかった嫉妬と罪が、花嫁の白いドレスの下から静かにこぼれ落ちていく――。ミステリー|行方不明1.5万字5 1650 -
完結第8話
十年目の数珠
昭和60年、長野県の山奥にある古い寺で、参籠会に参加していた印刷所経営者・田中誠が忽然と姿を消した。 朝4時のお勤めの時間になっても現れず、部屋には畳まれた布団と鞄だけが残されていた。財布も着替えもそのまま。だが、彼がいつも手にしていた茶色い数珠だけが消えていた。 事業の不振、義弟との対立、取引先との金銭トラブル、そして最後に田中と会話していた若い僧侶――。 疑われる者はいた。けれど、決定的な証拠は何一つ見つからず、警察は田中が自ら山に入った可能性が高いと判断する。 それから10年後。 寺の修繕工事中、かつて若い僧侶が使っていた部屋の床下から、田中の数珠が発見される。 なぜ、消えた男の数珠が僧侶の部屋に隠されていたのか。 山寺に沈黙していたあの夜の真実が、10年の時を経て静かに動き出す。ミステリー|行方不明1.2万字5 425 -
完結第8話
消された天才少女の証明
1896年、東京帝国大学の数学演習室。 誰もいないはずの夜の教室で、黒板に残された未解決問題が、何者かによって解かれていた。 大学院生たちが数週間かけても辿り着けなかった証明。その式を直したのは、清掃員の母に連れられて校舎に入っていた、わずか12歳の少女・黒田ハナだった。 学校にも通えず、浅草の長屋で貧しく暮らしていた彼女。しかしその頭脳は、帝国大学の教授たちでさえ説明できないほど異質で、圧倒的だった。 だが、時代は彼女を“天才”とは呼ばなかった。 下層出身の少女であること。女子であること。正式な教育を受けていないこと。そのすべてが、彼女の才能を認めない理由にされた。 やがてハナは、学ぶ者ではなく“研究対象”として扱われ、歴史の表舞台から姿を消していく。 そして1964年。 大阪の古い長屋で、無名の女性が残した大量の紙束が見つかる。そこに記されていたのは、日本の学術史を根底から揺るがす、ある理論の原型だった。 黒田ハナとは何者だったのか。 そして、彼女の名はなぜ歴史から消されたのか――。ミステリー|行方不明1.2万字5 5334 -
完結第6話
松の根の告発
2008年の梅雨の夜、都内の10億円の豪邸から、70代の母と40代の長女が忽然と姿を消した。 玄関の鍵は開いたまま。台所には作りかけの料理、寝室には飲まれないままの薬。金庫の中の現金や貴金属は手つかずで、強盗の形跡もない。 ただ、防犯カメラだけが不自然に切られていた。 疑いの目を向けられたのは、海外出張中だった末の息子・西村匠。だが彼には、ホテルの記録、カード決済、目撃証言までそろった完璧なアリバイがあった。 事件は未解決のまま15年が過ぎ、匠は莫大な遺産を受け継ぎ、慈善家として世間の表舞台に立つようになる。 しかし2023年、豪邸の解体工事中、庭の松の木の下から古い2つ折り携帯が発見される。 そこに残されていたのは、長女が命の最後に録音した“ある声”だった。 15年間、コンクリートの下で眠っていた母娘の真実が、ついに動き出す――。ミステリー|行方不明9.0千字5 2819 -
完結第7話
古井戸の満点少女
1999年、埼玉県秩父市。 女子高生・高橋桜は、センター試験の自己採点で全科目満点という驚くべき結果を出した。貧しいながらも自分を支えてくれた父のため、将来は良い仕事に就き、楽をさせてあげたい。そんな夢を胸に、桜の未来は大きく開けようとしていた。 しかし、その数日後。 予備校で最後の写真を撮られたあと、桜は忽然と姿を消す。 父親との進路のすれ違い、親しくしていた家庭教師、宣伝に利用しようとした予備校講師。疑われる人物は次々に浮かぶが、決定的な証拠は見つからない。 桜の部屋だけが、19歳のまま時間を止めていった。 そして10年後、秩父郊外の古井戸から白骨化した遺体が発見される。そばに残されていたのは、泥にまみれた受験番号の一部。 失踪ではなかった。 桜の未来を奪ったのは、誰だったのか。 10年間、父が信じ続けた帰り道の先に、あまりにも残酷な真実が待っていた――。ミステリー|行方不明1.0万字5 1762 -
完結第7話
十六年目の雪足跡
2003年2月14日、23歳の看護学生・森彩佳は、近所の高齢女性に借りた器を返すため、恋人に「すぐ戻るね」と告げて家を出た。 財布も鍵も携帯電話も置いたまま。ほんの数分で戻るはずの外出だった。 しかし、彼女はそのまま姿を消した。 雪の上には、彩佳が自宅へ向かった足跡が残されていた。だがその足跡は、玄関の数歩手前で不自然に途切れていた。家は内側から施錠され、争った形跡もない。 恋人、母、警察、町の人々――誰もが答えを探し続けたが、真相は長い間、闇の中に沈んだままだった。 そして16年後。 保管されていた証拠品から、当時は見つけられなかった“ある人物”の痕跡が浮かび上がる。 誰も疑わなかった身近な人。 あの雪の夜、彩佳に何が起きたのか――。ミステリー|行方不明1.0万字5 4002 -
完結第7話
山寺に消えた妻
7年前、財閥一家の御曹司・健斗は、妻の雪を“不倫した女”だと信じて家から追い出した。 宝石を盗み、若い男に貢ぎ、海外で贅沢に暮らしている――。母・良子の言葉を信じた健斗は、雪の弁解も聞かず、離婚届を突きつけた。 だが7年後、心身ともに追い詰められた健斗は、山奥の寺で思いがけない人物を見つける。 そこにいたのは、尼僧となり、雑巾がけをして暮らす雪だった。 贅沢どころか、質素な寺で静かに修行を続けていた元妻。荒れた手、粗末な部屋、そして何も語ろうとしない瞳。 本当に彼女は裏切ったのか。 健斗が7年前の“相手の男”を探し出した時、すべての疑惑は崩れ始める。雪が背負わされた汚名の裏には、財閥一家を揺るがす恐ろしい陰謀が隠されていた――。ミステリー|第二の人生1.1万字5 2610 -
完結第9話
盗まれた120頁
1995年、東京の名門大学の卒業式当日。 青森から夜行列車で駆けつけた両親が見たのは、14列目の席に残された卒業ガウンと、そこにいるはずの息子・木村誠の不在だった。 前夜まで「これで人生が変わる」と電話で語っていた誠。だが、警察は事件性を認めず、彼の失踪は“家出”として処理されてしまう。 両親は故郷の家を売り、10万枚のチラシを配りながら、10年もの間、息子を探し続けた。 しかし、誠の部屋から消えていたのは、財布でも通帳でもなかった。 命を削って書き上げた論文データと、破り取られた実験ノートの最後の1ページ。 そして10年後、定年を目前にした教授が警察署を訪れ、封印していた茶封筒を差し出す。 「10年間、ずっと息ができませんでした」 その中に眠っていたものが、青年の失踪を“家出”から“事件”へと覆していく――。ミステリー|行方不明1.3万字5 827 -
完結第7話
ロッカー裏の花嫁
1991年5月、新婚旅行へ向かう途中の足柄サービスエリアで、結婚してわずか3日目の妻・鈴木彩が突然姿を消した。 「すぐ戻るわね」 そう言ってトイレへ向かったはずの彩は、売店にも食堂にも駐車場にもいなかった。財布だけを持って車を降り、身分証明書も荷物も残したまま、彼女は人混みの中から跡形もなく消えてしまう。 夫の佐藤匠は必死に妻を探し続けたが、目撃者も防犯カメラもなく、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 しかし10年後、サービスエリアの改装工事中、古いロッカーの裏から埃まみれの財布が見つかる。 そこに残されていた指紋が示したのは、夫でも通りすがりの犯人でもない、彩の過去にいた1人の男だった。 新婚3日目の花嫁は、なぜサービスエリアで消えたのか。 そして、10年間ロッカーの裏に眠っていた財布は、どんな真実を語り始めるのか――。ミステリー|行方不明9.8千字5 10477 -
完結第7話
27枚目の真実
1999年、秋の連休で混み合う足柄サービスエリア。 健二の妻・雪は、「お手洗いに行ってくるわ」と言い残し、人混みの中へ消えた。助手席には財布も鞄も残されたまま。防犯カメラにはトイレへ向かう姿だけが映っていたが、その後の行方はぷつりと途絶えていた。 警察は捜索を続けたものの、手がかりは見つからず、やがて雪には借金があったことが判明する。世間は「夫を捨てて逃げた妻」と噂した。 けれど健二だけは、雪が自分から消えたとは信じなかった。 そして26年後。 リニューアル工事中のサービスエリアで、排水管の下から1台の使い捨てカメラが見つかる。そこに残されていた27枚の写真には、雪が最後に見たもの、そして彼女が命をかけて残そうとした証拠が写っていた。 あの日、雪はなぜカメラを持っていたのか。 黒いセダンの男は誰だったのか。 26年間止まっていた時間が、たった1台のカメラによって再び動き出す――。ミステリー|真相1.0万字5 9456 -
完結第5話
森で消えた夫の声
2022年8月、熊本県の国見岳へ登った会社員のTさんは、下山中に鹿を追って登山道を外れてしまう。 ほんの少し写真を撮るだけのつもりだった。だが、気づいた時には来た道が分からなくなり、Tさんは誰にも気づかれないまま深い森の奥へ迷い込んでいた。 滑落、負傷、雨、空腹、電波の届かない携帯電話。沢を下り、斜面を登り、助けを求めても声は届かない。やがて疲労と脱水で、Tさんの前には存在しないコテージや人影まで見え始める。 一方、自宅で帰らない夫を待つ奥さんは、警察の捜索だけに頼らず、SNSで必死に情報を発信し続けていた。小さな投稿は多くの人に拡散され、救助隊、登山者、ボランティアたちが山へ向かう。 遭難から数日後。 もう歩く力も残っていなかったTさんの耳に、森の奥から声が響く。 「動くな!」 「叫べ!」 それは幻聴なのか、それとも本当に助けが来たのか。 真夏の山で消えかけた命を、家族のもとへつないだ奇跡の救助劇。ミステリー7.3千字5 753 -
完結第6話
甘い部屋の72時間
2022年9月、埼玉県秩父市のアパートで、37歳の女性・渡辺咲が意識不明の状態で発見された。 救急隊員が部屋に入った瞬間、まず感じたのは異様なほど甘い香りだった。消臭剤、芳香剤、アロマキャンドル。部屋中に重ねられた香りの中で、咲はソファーにもたれかかるように倒れていた。 夫の啓介は「今朝、見つけた」と冷静に話した。 しかし、搬送先の病院で告げられたのは、咲の体が数日前から限界に近い状態だった可能性。そして母・えみ子が遺品を調べるうちに、娘が少しずつ外の世界から切り離されていた痕跡が浮かび上がっていく。 なぜ、夫はすぐに助けを呼ばなかったのか。 なぜ、部屋には不自然なほど多くの芳香剤が置かれていたのか。 そして咲が最後に残した「ごめんなさい。怒らないで」という言葉は、誰に向けられたものだったのか。 72時間の沈黙の裏に隠されていた、ひとりの女性の孤立と、届かなかった叫びを描く物語。ミステリー|行方不明9.3千字5 767 -
完結第14話
古道具屋の制服
2001年春、北海道小樽市で、卒業式を3日後に控えた女子高生・佐藤美咲が突然姿を消した。 最後に目撃されたのは、運河へ続く古い倉庫街。部屋には家出を示すものはなく、家族は15年間、帰らない娘を待ち続けていた。 そんなある日、古道具屋に持ち込まれた桐箪笥の中から、1着のセーラー服が見つかる。胸ポケットに残されていたのは、青いガラスのイルカと、涙で滲んだ一通の手紙。 そこには、同級生の名前、教師との秘密、そして「天狗山の誓い」という謎の言葉が記されていた。 美咲はなぜ消えたのか。 彼女が最後まで守ろうとしたものは何だったのか。 15年間眠っていた学生服が、小樽の町に隠された真実を静かに暴き始める――。ミステリー|真実2.1万字5 1875 -
完結第8話
洞窟に残った少年の声
1987年5月7日、京都・清水寺で撮影中だった11歳の子役・田中実が、山の方へ走り去ったまま姿を消した。 現場に響いたのは、少年の悲鳴だけ。靴跡も血痕も見つからず、事件はやがて小さな記事として世間から忘れられていく。 だが22年後、秋吉台の洞窟で見つかった一つのバッグが、すべてを動かし始める。 中に残されていたのは、古いテープレコーダー。そして、少年が最後に吹き込んだ声だった。 「僕は、彼らが何をしたか見た」 消された過去、沈黙した大人たち、声を失った母親。 清水寺で消えた少年は、なぜ22年もの間、洞窟の奥で真実を守り続けたのか。 田中実が最後に残した証言が、今、封じられた闇を暴き出す――。ミステリー|遺體発見|行方不明1.1万字5 7303 -
完結第6話
十年目の地下街
1985年、東京・品川区。 「ゲーセン行ってくる」 そう言って家を出た12歳の息子・実は、その日を境に忽然と姿を消した。 ゲームセンターを出たのは午後6時頃。家までは歩いて10分もかからない距離だった。だが、実は帰ってこなかった。母・良子は警察に届け出を出し、ビラを配り、全国から寄せられる目撃情報を追い続けた。 しかし、どれも空振りに終わる。 1年、3年、5年――。夫婦関係は壊れ、周囲も諦める中、良子だけは息子の生存を信じ続けた。 そして失踪から10年後の1995年。 銀座の地下街で、良子は床に座る若い物乞いの男に目を奪われる。痩せ細った顔、怯えた瞳、そして失われた足。 その男は、10年前に消えた息子・実だった。 「お母さん……今、監視されてる」 再会の喜びも束の間、実の口から告げられた言葉が、10年間隠されていた恐ろしい真相への扉を開いていく――。ミステリー|行方不明9.2千字5 1779 -
完結第6話
十三年目の灯火
2002年、冷たい雨の降る神戸の夜。 港交通のベテラン運転手・田村茂は、1人の乗客を乗せたまま、町から忽然と姿を消した。最後に会社へ入った無線は、「西区の方へ、長距離になりそうです」という短い言葉だけ。 車も、運転手も、乗客も見つからないまま、事件は迷宮入りした。 家族を捨てたのではないか。金を持って逃げたのではないか。心ない噂に苦しめられながらも、妻は13年間、玄関の灯火を消さずに夫の帰りを待ち続けた。 そして2015年春。 神戸の町外れにある廃車場の取り壊し中、何台もの車の下から、潰れた古いタクシーが発見される。車体に残っていたのは、すでに消えた会社「港交通」の文字。 中から見つかったのは、2人分の白骨だった。 あの夜、田村のタクシーに何が起きたのか。後部座席にいたもう1人は誰だったのか。そして、13年前に目撃された“ライトを消した黒い車”の正体とは――。 雨の夜に消えた1台のタクシーが、長い沈黙の底から真実を語り始める。ミステリー|真実9.5千字5 368 -
完結第18話
柿の木の下の守護
2007年、エリート検事・佐藤健太の妻、美咲が自宅マンションから忽然と姿を消した。 財布も靴もパスポートも残されたまま。台所には、夫の帰りを待つように冷えた味噌汁だけが残っていた。夫は涙ながらに妻の捜索を訴え、世間は“妻を失った悲運の検事”に同情した。 しかし17年後、実家を売るために庭の柿の木を抜いた時、土の中から白骨化した遺体が発見される。 右手に握られていたのは、かつて美咲が夫に贈った銀色のネクタイピン。 そこに刻まれていた文字は「守護」。 夫を守るために贈ったはずの小さな証拠が、17年間隠されていた真実を暴き始める。美咲はなぜ実家の庭に眠っていたのか。そして、母が信じ続けた義理の息子は、本当に悲しみに耐える夫だったのか――。ミステリー|真実2.8万字5 640 -
完結第14話
三輪山に消えた家族
1992年、奈良県桜井市で、一家4人が忽然と姿を消した。 食卓には湯呑みが残され、台所には切りかけのネギ。争った跡もなく、外部から侵入した形跡もない。村人たちは、その不可解な失踪を「三輪山の神隠し」と呼び、やがて誰も真相を語らなくなった。 それから25年後。 解体前の古い家を訪れた遠縁の裕二は、物置の奥から1つの桐箱を見つける。中に入っていたのは、色褪せた家族写真と、母・千代子が残した謎めいた手紙だった。 「巳の日に、あの場所へ」 「柿の葉に、真実を包む」 意味不明な言葉、写真の端に映り込んだ黒い影、口を閉ざす村人たち。 神隠しと呼ばれた一家失踪の裏には、誰にも語れなかった母の覚悟と、25年間守られ続けた秘密が隠されていた――。ミステリー|行方不明2.1万字5 1402