"帰る場所を奪われた妻、4階で取り戻した人生" 第7話
「そんなことどうでもいいわ! あんた、このを勝に売りにしたでしょう!」
私は眉をげた。
どうやら義母は夫の机から、マンションの売却査定を見つけたらしい。
「お義母さん、その類の依頼の欄を見てください」
「何よ」
「私の名ですか?」
をめくる音がした。
そして、沈黙。
「依頼は誰になっています?」
しばらくして、義母の声が震えた。
「……誠」
私は目を閉じた。
ようやく義母も、現実の入にった。
「嘘よ」
義母は話の向こうで繰り返した。
「こんなの、何かの違いよ」
「署名も印鑑も誠さんのものなんでしょう?」
「でも誠が私を追いすわけないじゃない」
義母の声には、りより恐怖が混じり始めていた。
「私のために級な施設を探してくれているのよ。あの子は優しい子なの」
私は暗い4階のに座ったまま、淡々と答えた。
「その施設のパンフレットを、ちゃんと見ましたか?」
返事がない。
「それから、お義母さんが預かった通帳。誠さんは何のために自分の部へ隠していたといます?」
「そんなの……」
「マンションを売ったおも、お義父さんの遺産も、しい活のために使うつもりだったんじゃないですか」
「しい活?」
義母の声が鋭くなった。
私は迷わなかった。
「今、その相の女性から話がありました」
「女?」
「誠さんは、そのと再婚するつもりだそうです」
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「嘘よ!」
義母が叫んだ。
「誠がそんなことするはずない!」
「本に聞いてください」
私はもう説する気力がなかった。
「、弁護士事務所で話しいます。真実をりたいなら、お義母さんも来ればいいでしょう」
返事を待たずに切った。
の階から慌ただしくり回る音が聞こえた。
義母が夫へ話しているのだろう。
以なら、その音だけで胸がざわついた。
今はもう、ただの騒音にしか聞こえなかった。
翌の午。
弁護士事務所へ向かう支度をしていると、佐藤から緊迫した声で連絡が入った。
「奥様、ご主が4階へ来ました」
「4階に?」
「鍵業者を連れて、無理にけようとしたようです」
私はわずち止まった。
「自分が所者だと説して、鍵を交換させようとしたそうです」
「でも、もう私の名義ですよね」
「もちろんです。ちょうどうちの社員がくにいて、登記事項を見せて止めました」
鍵業者も審にい、作業を断ったという。
夫は顔を真っ赤にし、佐藤産の社員へ鳴り散らした、そのまま帰ったらしい。
から急かされ、まともな判断ができなくなっている。
そううと、れですらあった。
「佐藤、本当に助かりました」
「のため、防犯の記録は残してあります」
「ありがとうございます」
話を切り、私はそのでへ寄った。
自分の資産について追加の確認を終え、類をバッグへ入れる。
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その、病院へ向かった。
母はベッドので体を起こし、護師とし話せるまで回復していた。
「ゆみ」
私を見ると、母は細い目をさらに細めた。
「先がね、来週には退院できるかもしれないって」
「本当に?」
わず母のを握った。
「よかった」
母はし議そうに私を見た。
「あなた、ちゃんと寝てるの?」
「丈夫」
「誠さんたちは?」
瞬だけ迷った。
けれど、今ここで全てを話す必はない。
「ちょっと々あってね。でも丈夫。退院したら、しいにこう」
「しい?」
「うん。静かで当たりのいいところ」
母は何か聞きたそうにしたが、疲れたのか目を閉じた。
私はそのを握りながら決めた。
夫が何をしようと、このだけは守る。
そのの夜。
約束のぴったりに、私は加藤先の事務所を訪れた。
応接にはすでに夫がいた。
革張りのソファにく座り、腕とを組んでいる。
「遅いぞ」
計を見る。
私は遅れていない。
夫はわざとらしくきなため息をついた。
「こっちは忙しいんだ。さっさと終わらせるぞ」
しかし、その顔には以の余裕がなかった。
目のには濃いくま。
テーブルのでは、片が細かく揺れている。
4階へ入れなかった焦りが、隠し切れていなかった。
加藤先は私へ静かにをげた。
「佐藤さん、どうぞ」
私が座ると、夫はすぐに話し始めた。
「先、こいつの言うことは信用しないでくださいよ」
「……」
「自分からをていったくせに、今さら財産を半分寄こせとか言いしてるんです」
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