みかん小説
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"車が狭いからと言われた妻" 第1話

 

が狭いから、あなたは留守番ね。入らずで楽しんでくるから」

の朝7過ぎ、玄関に響いた義母・子の声を聞いた瞬、私は昨から旅鞄に詰めていた着替えを見ろした。半から計画していた2泊3の温泉旅で、子の78歳の誕を祝うために私が旅館を探し、予約まで払っていた。それなのに発当になって突然、私は「族」の数からされたらしい。

夫の浩司は玄関脇にち、のキーをもなく指先で回していた。私と目がいそうになるたびに顔を逸らすところを見ると、今朝決まった話ではないのだろう。子だけが元にい笑みを浮かべ、「定員ぎりぎりなのよ。荷物もいし、あなたまで乗ったら窮屈でしょう」と、私のためをっているような言い方をした。

「そうですか。分かりました」

私は驚くほど穏やかな声で答えた。鳴りもせず、「この旅代は誰が払ったとっているんですか」と問い詰めることもしなかったので、浩司は骨に堵したように肩の力を抜いた。

子は勝ち誇ったように助席へ乗り込んだ。その部座席には、私が見覚えのないきなボストンバッグがすでに置かれていたが、私は何も尋ねなかった。浩司は度だけ「悪いな。たまにはでゆっくりしてくれよ」

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と言い残し、運転席のドアを閉めた。

「ええ。どうぞお気をつけて」

私はち、が角を曲がって見えなくなるまでを振った。の向こうで所の奥さんが植をやっていたからでも、最まで良い妻を演じたかったからでもない。

あのが戻ってきた、もう今までと同じようにはこのへ入れないことを、私だけがっていたからだった。

玄関の扉を閉めると、にはが痛くなるほどの静けさが戻った。リビングへけば、テーブルにはべ終えた茶碗と皿がそのまま残され、子がこぼした醤油が皿の横で乾き始めていた。事を作ったのも私、片付けをするのも当然私だとってかけたのだろう。

私はエプロンをつけず、黙って器を流しへ運んだ。最だからと入りに磨くつもりもなかったが、15染みついた習慣は簡単には消えず、茶碗を洗って切り籠へ伏せるところまで体が勝いた。そのつの作をしながら、私は議なくらい静だった。

これが、このでする最事になる。

そうっただけで、胸の奥に15積もっていたいものがしずつ剥がれていくようだった。

この子のものでも、浩司のものでもない。だった父が自分で建て、私に相続させてくれた、私個の財産だった。

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父がくなったあとも私はを守り続けた。浩司と結婚してしばらくして義父がくなると、子が「男と暮らすのが当然でしょう」と量の荷物を抱えて転がり込んできた。それ以来15で暮らしてきたが、いつのにかこのの主子で、私はみ込みの政婦のようになっていた。

父が残してくれただから壊したくない。庭を失敗させたくない。そう自分へ言い聞かせているうちに、私は「守る」という言葉と「耐える」という言葉の区別さえ分からなくなっていた。

けれど、それも今で終わる。

私は器を洗い終えると、寝へ向かった。クローゼットの奥からさな耐庫を取りし、暗証番号をわせて蓋をけると、通帳、の登記関係類、父から相続した財産の資料、そして3から保管していた通の封筒がてきた。

に入っているのは、浩司本が署名した婚届だった。

3、浩司が職の女性と親密な連絡を取っていることが発覚したことがある。本は「肉体関係はなかった」と泣いて謝り、「度と裏切らない証拠としてくから、婚だけはやめてくれ」と自分から婚届へ署名した。私はすぐには提せず、それを封筒へ入れて庫の奥にしまった。

浩司は、とうに私が捨てたとっているはずだった。

私自も、あの頃は本当に使うが来るとは考えていなかった。

けれど今回は違う。

3さな裏切りなど、今となっては序章にすぎなかった。

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