みかん小説
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"車が狭いからと言われた妻" 第6話

私が何もらない。

そう信じていた。

 

夜、子はいつになく嫌だった。

は朝いから、朝は簡単でいいわよ。あなたはどうせにいるんだから、私たちがたあとゆっくり片付けて」

浩司も隣で笑い、「悪いな。帰ってきたら産買ってくるから」と言った。

私はへ笑い返した。

「楽しんできてください」

それ以、何も言わなかった。

そして翌朝。

が狭いから、あなたは留守番ね」

最初の面へ戻る。

発したあと、私は最器を洗い、仏壇へ線げた。

父の写真がある。

作業着姿。

器用な笑顔。

「お父さん、ごめんね」

私はわせた。

を守れなかったんじゃない。やっと、私を守ることにしたの」

の煙が細く揺れた。

父が何か答えてくれるわけではない。

それでも私は、ようやく言うべきことを言えた気がした。

10過ぎ。

玄関のチャイムが鳴った。

佐藤さんと、鍵業者、それから荷物の搬送を伝うスタッフが来た。

弁護士とも事に確認し、浩司と子の個物は処分せず、写真を撮ってリストを作り、契約したトランクルームへ移すことになっていた。着物、類、具、浩司の仕事具まで、つずつ業者が確認して梱包していく。

「由美ちゃん、本当にこれでいいんだね」

佐藤さんがもう度尋ねた。

私は父の剪定鋏を鞄へ入れながら頷いた。

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「はい。お願いします」

私が持ちしたのは、自分の類、父と母の遺品、アルバム、類、それから自分で買った具の部だけだった。

15

暮らした。

それなのに。

私自のものは。

ワゴン台にも満たなかった。

鍵の扱いについても、勝な締めしにならないよう川先を通じて面を準備していた。売買契約に伴って物件管理を佐藤さんの会社へ引き渡し、浩司と子の荷物については保管所と受取方法を通する。には旅なので、弁護士から留とメールの両方で連絡する配になっていた。

つまり、が帰宅して目にするのは「嫁の嫌がらせ」ではない。

すでに法続きを伴って始まった。

私のからの退だった。

1過ぎ。

私は玄関へった。

黒柱へを当てる。

幼い頃の。

私の

父の字。

5」。

1」。

入学」。

指でなぞった。

を売ると決めてから、ここだけはずっと胸が痛かった。

けれど佐藤さんが、「使える柱は解体のに取りして保管できる」と言ってくれた。すべてを残すことはできなくても、黒柱の部と父が残した材は、別の所で再利用できるよう相談することになっている。

はなくなる。

でも。

父とのまで。

壊れるわけではない。

私は最に玄関を閉めた。

しく管理会社用へ交換された鍵の音が、乾いたさな音をてた。

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それは15の結婚活が終わった音ではなかった。

私が初めて自分のへ鍵をかけ直した音だった。

しく借りたマンションは1LDKだった。

と比べればずっと狭いが、窓から午差しが入り、誰の趣でもないいカーテンが静かに揺れていた。

私は荷物を置き、コンビニで買ったサンドイッチをべた。

たい噌汁はない。

子の声もない。

浩司のため息もない。

ただ。

静かな部

その静けさが。

胸へ染みた。

の夜。

温かいお茶を入れてソファへ座っていると、源を切っていたスマートフォンを久しぶりにつけた。

数秒

音が。

次々と鳴った。

浩司。

47件。

子からも。

量のメッセージ。

《鍵がかない》

《どこにいるんだ》

《どういうつもりだ》

《今すぐ話しなさい》

私は画面を数秒見つめた。

それから。

スマートフォンを。

静かに伏せた。

もう。

私が。

慌てる番ではなかった。

 

翌朝、私はいつもより遅く目を覚ました。誰かに朝を作る必もなく、子の通院予定にわせる必もないため、目覚まし計さえセットしていなかった。さなキッチンでトーストを焼き、自分のためだけにコーヒーを淹れると、部にはばしい匂いがゆっくり広がった。

テーブルのには昨夜伏せたスマートフォンがある。充器につなぐと再び通が表示され、浩司からの着信は60件を超え、子からも30件く入っていた。

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