みかん小説
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"帰りたくない少女と赤い車" 第13話

リンは気を紛らわせるため、ドリンクホルダーの缶コーヒーにを伸ばした。

プルタブをけ、めたコーヒーをむ。

ブラックコーヒーだったため、その苦さにわず顔をしかめた。

カップをホルダーに戻し、助席に投げしたままのパンの袋をに取る。

袋をけ、パンをかじろうとしたそのだった。

ある音が聞こえ、彼女のきはピタリと止まった。

微かではあったが、リンの違いなくその音を捉えていた。

鋭く甲い、ガラスが激しく割れる音だった。

リンの臓が、再び鐘を打ち始める。

彼女は音の所を探ろうと、パンを置いてを澄ませた。

の方角から聞こえたのは違いない。

数秒、周囲は再びな静寂に包まれた。

気のせいだったのだろうか。

リンが息を潜めていると、静かな夜の空気を切り裂くように、声が響き渡った。

それは血の凍るような、女性の鳴だった。

「やめて! お願い!」

その声には、限界を超えた恐怖と絶望が満ちていた。

「娘のでだけは!」

れたにいるリンのにも、その言葉ははっきりと届いた。

リンは考えるより先に、持っていたパンを助席に放りした。

彼女は震えるで、ポケットからスマートフォンを取りした。

画面をタップし、カメラアプリを素く起する。

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次に何が起きても証拠として録画できるように、ビデオモードに切り替えた。

スマートフォンを両で持ち、の方向へとレンズを向ける。

画面をズームすると、1階のリビングの窓にくのがはっきりと見えた。

背のさからして、匠とわれる男のだ。

そのは、窓がいていることに気づき、慌てて窓を閉めた。

そして、勢いよくカーテンをシャーッと閉めたのである。

で起きている暴を隠そうとする、素く決定きだった。

リンは激しく波打つ胸を片で押さえながら、スマートフォンの録画ボタンを押した。

いカーテンが引かれていても、壁越しに微かな音が漏れてくる。

女性のくぐもった泣き声と、りに満ちた男の号。

突然、リビングのるいによって、いカーテンにきなが映しされた。

リンはそのを見て、ヒッと息をんだ。

誰かが、くて太い属バットのようなものをく振りげるシルエット。

それが、カーテンになほどはっきりと浮かびがったのだ。

鋭く、容赦なく振りろされるき。

その瞬、リンので全ての点と点が恐ろしい形で線に繋がった。

保育園から帰るのを極端に嫌がり、パニックになったメイ。

『おとは違う』という、痛な謎めいた言葉。

での酷な言葉と、森での匠の異様な振るい。

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その全てが、リンが『そうであって欲しくない』と願っていた恐ろしい現実を指し示していた。

リンは震える指で画面をタップし、録画を止した。

彼女はすぐに話アプリをき、110番にダイヤルした。

発信音が鳴る、彼女は必呼吸をして声を落ち着かせようとした。

「はい、110番です。事件ですか? 事故ですか?」

通信指令の警察官の静な声が、スピーカーから聞こえてきた。

「DVの通報です」

リンは震える声で、しかし極めて切迫した調で状況を伝えた。

めて監しているんですが、から女性の鳴が聞こえます」

リンは窓のから目をさずに言った。

「命の危険があるかもしれません。急いでください」

所を教えていただけますか?」

リンはカーナビの画面を確認し、所をすらすらと伝えた。

そのも、彼女の目はから瞬もれることはない。

「お願いします、急いでください。には、さな子供もいるんです」

「現、付の警察官が現に向かっています」

指令員の落ち着いた声が、リンの焦りをしだけらげた。

「お名と、今全な所にいるかどうか教えてください」

「勇気リンです。れたところにめたにいます」

リンは周囲を見回した。

「相は、私がここにいることに気づいていないといます」

「わかりました、勇気さん。そのまま全を確保してください」

指令員は確に指示をした。

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