"「介護が悪い」と責めた家族の3日後" 第27話
「弓がね、毛布を2枚もかけてくれたから、全然寒くなかったのよ。」
弓はし照れたように笑った。
「お母さん、それ以褒めないでよ。」
その笑顔には、以のような無理な見栄も疲れ果てた暗さもなかった。
介護という現実から逃げずに向きったことで、弓は本当のでの族の顔になっていたのだ。
のに入り、3でテーブルを囲んだ。
弓は私が頼んでおいたシフォンケーキを、さくフォークで切り分ける。
そして義母さんがみ込みやすいように、しだけ茶を浸して柔らかくした。
それは私が11のに見つけし、あの介護ノートにき残した夫の1つだった。
「お母さん、ゆっくりでいいからね。」
弓はスプーンを元に運び、義母さんがみ込むのをじっと待つ。
義母さんの喉がき、無事にみ込めたのを確認してから、弓はほっと息を吐いた。
むせることなく、義母さんは美しそうにケーキをわっていた。
その景を見つめながら、私は胸の奥が温かくなるのをじた。
私が1で孤独に戦ってきた11のは、決して無駄ではなかった。
私がき留めた記録は、こうして確実に次の誰かへと引き継がれている。
そして義母さんの命と穏やかな笑顔を、今もしっかりと守っているのだ。
その頃、元夫である俊夫は実の暗いリビングで、1きりの曜を迎えていた。
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をつけるのも面倒で、毛布を被ったままソファーに横たわっている。
テレビの音だけが空しく部に響いていた。
のには私が11磨き続けていた清潔さはなく、至る所に埃が積もっている。
彼のスマートフォンの画面には、の残照会が表示されていた。
今も料のきな額が、使い込んだおの返済として引き落とされている。
元に残ったわずかな活費では、週末にパチンコへくことも輩に酒を奢ることもできない。
会社でも孤し、親族からも軽蔑され、彼は完全に居所を失っていた。
コンビニで買ったいカップ麺にお湯を注ぎ、3分を待つ。
俊夫は誰もいない静かな台所で、ふと自分の老を像した。
誰も自分を配してくれない。
病気になっても病してくれるは1もいない。
自分が母親の介護を放棄し、妻を奴隷のように扱った報いが、完全な孤独となって彼を待っているのだ。
俊夫はすすり泣くことすらできなかった。
涙を流しても、それを慰めてくれる族はもうこの世界にはしないからだ。
ただえ切ったカップ麺の容器を握りしめ、自分自の愚かさに押しつぶされるだけだった。
そのい絶望にを差し伸べる者は、もう誰もいない。
喫茶での穏やかなが過ぎ、義母さんがし疲れた様子を見せ始めた。
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「そろそろ帰りましょうか。」
私が声をかけると、弓は頷き、バッグのから1冊のファイルを取りした。
それは私が弓に渡した、あの分い介護ノートだった。
「さん、これ最のノートです。」
弓がいたページには、私がっている文字とは違ういくつかの跡が並んでいた。
朝は弓の字、昼は訪問介護のヘルパーさんの字、夕方は訪問護師さんの字。
それぞれの専と族が、義母さんのそのの状態を細かく共していた。
「お母さん、昨はし血圧がかったんですけど、護師さんの指示でゆっくり休ませたら、今朝は落ち着きました。」
弓が誇らしげに説してくれる。
ノートのページには、1で抱え込んでいた頃のような愴なメモはない。
『昨夜はよく眠れました。』
『おかゆを全部べました。』
という向きな記録が続いていた。
私はそのノートの隅に、自分の持っていたボールペンでくき込んだ。
『今はケーキを半分べられました。とても良い笑顔でした。』
私の字がしいノートのページに加わった。
4つの跡が同じページに並んでいる。
誰か1だけが全てを背負って壊れていく夜は、もうない。
族のとは、誰か1が限界まで犠牲になることで証するものではないのだ。
全を守り、苦痛を減らし、そのらしいを支えること。
そして同じくらい、介護する側が壊れない仕組みを作ること。
それが本当の介護なのだと、今の私にははっきりと分かる。
「さん。」
義母さんが帰り際に、私のを握った。
「あなたのこれからのが、幸せでありますように。私毎祈っているからね。」
その言葉に、私はく頷き、からの笑顔を返した。
介護タクシーを見送り、私は駅のを1で歩きした。
のたいが頬を撫でるが、私の取りは羽のように軽く、を向いていた。
私のはもう、誰の犠牲にもならない。
失いかけていた私自のを、これからゆっくりときていくのだ。
私は見げたの青空に向かって、静かにそしてく息を吸い込んだ。
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