"預かったままの革靴" 第2話
誰かに追いされるより、自分でた方がしだけましだとった。
駅で靴磨きのを見たのは、その頃だった。
箱のに男を座らせ、だらけの靴を磨く。仕事が終わると貨を受け取り、そのでべ物を買っている。
健は、それなら自分にもできるかもしれないとった。
最初にに入れたのは、捨てられていた箱だった。し割れていたが、板を拾って打ちつければ使えた。
ブラシは、古具を扱っていた男から譲ってもらった。
「はあるのか」
「ない」
「じゃあ、これで最初に稼いだら返せ」
男は使い古しのブラシと、残りない靴墨を健へ渡した。
健は何度もをげた。
そうして駅の隅に座った。
初は、誰も来なかった。
さな子どもに自分の靴を任せようとうはなかった。
「靴磨き、どうですか」
声をしても無された。
「くします」
それでも通り過ぎていった。
夕方、ようやく1の客が来た。
だが健は緊張して靴墨をつけすぎ、客から叱られた。
「こんなにべたべたにしてどうするんだ」
「ごめんなさい」
そのは代をもらえなかった。
それでも健は次のも駅へった。
の靴磨きの元を見て覚えた。ブラシのかし方。靴墨の量。革を傷めない拭き方。
誰も親切に教えてくれたわけではない。
自分から盗むように覚えた。
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しずつ客がつくようになった。
「この子、丁寧だよ」
そう言ってくれるもてきた。
それでも稼ぎはなかった。
昭21の。
京にはたいがるが続いた。
そのも朝から空は暗く、駅の面はぬかるんでいた。
健は根の張りしのに箱を置いていた。それでもが吹くたび、横から細かなが入り込んだ。
昼を過ぎても客はほとんど来なかった。
健は朝から何もべていなかった。
腹が空きすぎると、最初はぐうぐう鳴っていた腹も静かになる。その代わり、体から力が抜けていくような覚があった。
もたかった。
履いていた靴は、どこかで拾ったものだった。健のにはしきく、底の部が剥がれていた。
聞を詰めていたが、は簡単に染み込んできた。
靴まで濡れ、の指は覚がなくなりかけていた。
それでも帰ることはできなかった。
今夜の宿代がりなかったからだ。
「あと1」
健は自分に言い聞かせた。
「あと1来たら、何とかなる」
夕方がづいた頃だった。
駅からてきた々のに、1の男がいた。
は30代くらいに見えた。
古びた套を着て、きな荷物を背負っていた。髪はく、頬はひどく痩せていた。
何より目ったのは、男の歩き方だった。
い距を歩いてきたのように、取りがかった。
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男は健のを通り過ぎかけた。
しかし数歩んだところでち止まった。
振り返り、箱のに座る健を見た。
それからゆっくり戻ってきた。
「坊主」
健は顔をげた。
「磨いてくれるか」
健は反射にちがった。
「はい」
その、ようやく来た客だった。
男が履いていたのは、黒い革靴だった。
だらけだったが、粗末な靴ではなかった。何度も修理した跡があり、く切に履いてきたものだということは、9歳の健にも分かった。
「ここにを乗せてください」
健はさな台をした。
男はを乗せた。
健はブラシを握り、を落とし始めた。縫い目に入ったをかきし、濡れた革を布で拭く。
寒さで指がきにくかった。
それでも健は必だった。
この仕事を失敗したくなかった。
男は何も言わず、健の元を見ていた。
が終わると、次は。
健は靴墨をほんのし布へ取り、く伸ばした。
「ずいぶん丁寧にやるんだな」
男が言った。
健はを止めずに答えた。
「きれいにしないと、次から来てもらえないから」
男はし笑った。
「そうか」
最に布で磨きげると、濡れてくすんでいた革にが戻った。
健は歩がって靴を見た。
自分なりに、うまくできたとった。
男も元を眺めた。
「うまいな」
その言葉を聞いた瞬、健の胸の奥がしくなった。
誰かに褒められることなど、久しぶりだった。
「ありがとうございます」
男は套のポケットへを入れた。
しばらく探した、のひらに何枚かの銭をした。
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