みかん小説
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"預かったままの革靴" 第2話

誰かに追いされるより、自分でた方がしだけましだとった。

で靴磨きのを見たのは、その頃だった。

箱のに男を座らせ、だらけの靴を磨く。仕事が終わると貨を受け取り、そのべ物を買っている。

は、それなら自分にもできるかもしれないとった。

最初にに入れたのは、捨てられていた箱だった。し割れていたが、板を拾って打ちつければ使えた。

ブラシは、古具を扱っていた男から譲ってもらった。

はあるのか」

「ない」

「じゃあ、これで最初に稼いだら返せ」

男は使い古しのブラシと、残りない靴墨を健へ渡した。

は何度もげた。

そうして駅の隅に座った。

は、誰も来なかった。

さな子どもに自分の靴を任せようとなかった。

「靴磨き、どうですか」

声をしても無された。

くします」

それでも通り過ぎていった。

夕方、ようやく1の客が来た。

だが健は緊張して靴墨をつけすぎ、客から叱られた。

「こんなにべたべたにしてどうするんだ」

「ごめんなさい」

そのは代をもらえなかった。

それでも健は次のも駅へった。

の靴磨き元を見て覚えた。ブラシのかし方。靴墨の量。革を傷めない拭き方。

誰も親切に教えてくれたわけではない。

自分から盗むように覚えた。

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しずつ客がつくようになった。

「この子、丁寧だよ」

そう言ってくれるてきた。

それでも稼ぎはなかった。

21

京にはたいが続いた。

そのも朝から空は暗く、駅面はぬかるんでいた。

根の張りしの箱を置いていた。それでもが吹くたび、横から細かなが入り込んだ。

昼を過ぎても客はほとんど来なかった。

は朝から何もべていなかった。

腹が空きすぎると、最初はぐうぐう鳴っていた腹も静かになる。その代わり、体から力が抜けていくような覚があった。

たかった。

履いていた靴は、どこかで拾ったものだった。健にはきく、底の部が剥がれていた。

を詰めていたが、は簡単に染み込んできた。

まで濡れ、の指は覚がなくなりかけていた。

それでも帰ることはできなかった。

今夜の宿代がりなかったからだ。

「あと1

は自分に言い聞かせた。

「あと1来たら、何とかなる」

夕方がづいた頃だった。

駅からてきた々のに、1の男がいた。

は30代くらいに見えた。

古びた套を着て、きな荷物を背負っていた。髪はく、頬はひどく痩せていた。

何より目ったのは、男の歩き方だった。

い距を歩いてきたのように、取りがかった。

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男は健を通り過ぎかけた。

しかし数歩んだところでち止まった。

振り返り、箱のに座る健を見た。

それからゆっくり戻ってきた。

「坊主」

は顔をげた。

「磨いてくれるか」

は反射がった。

「はい」

その、ようやく来た客だった。

男が履いていたのは、黒い革靴だった。

だらけだったが、粗末な靴ではなかった。何度も修理した跡があり、切に履いてきたものだということは、9歳の健にも分かった。

「ここにを乗せてください」

さな台をした。

男はを乗せた。

はブラシを握り、を落とし始めた。縫い目に入ったをかきし、濡れた革を布で拭く。

寒さで指がきにくかった。

それでも健は必だった。

この仕事を失敗したくなかった。

男は何も言わず、健元を見ていた。

が終わると、次は

は靴墨をほんのし布へ取り、く伸ばした。

「ずいぶん丁寧にやるんだな」

男が言った。

を止めずに答えた。

「きれいにしないと、次から来てもらえないから」

男はし笑った。

「そうか」

に布で磨きげると、濡れてくすんでいた革にが戻った。

がって靴を見た。

自分なりに、うまくできたとった。

男も元を眺めた。

「うまいな」

その言葉を聞いた瞬、健の胸の奥がくなった。

誰かに褒められることなど、久しぶりだった。

「ありがとうございます」

男は套のポケットへを入れた。

しばらく探したのひらに何枚かの銭をした。

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