"2本のさつま芋" 第1話
昭24。
戦争が終わって4が過ぎていたが、京の町にはまだ、戦争のがあちこちに残っていた。焼け跡だった所にはしずつしいが建ち始め、々の暮らしも以より落ち着いてきていたが、べ物だけは分とは言えなかった。
14歳の正夫は、そのの授業を終えると、教科を入れた鞄を抱えて学をた。
へ帰るの途には、さな交番があった。
いつもなら、そのを何も考えず通り過ぎる。
だが、そのだけは違った。
正夫は交番のでを止めた。
を見ると、制姿の警察官が机に向かって何かをいている。入りのを何度かったり来たりした、正夫は拳を握りしめるようにして、へ入った。
警察官が顔をげた。
「どうした?」
正夫はすぐには答えられなかった。
喉が渇いているような気がした。学で先に当てられたよりも緊張していた。
それでも、ここまで来たのだから言わなければならない。
正夫は背筋を伸ばした。
「母ちゃんが、米を買っています」
自分の声が、っていたよりきく聞こえた。
警察官は瞬、正夫の顔を見つめた。
「お母さんが?」
「はい」
「どこで買ったか分かるか?」
正夫は首を横に振った。
「農から持って帰ってきました」
それだけ言うと、胸の奥にあった何かがし軽くなった。
正しいことをした。
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そうったからだった。
学では何度も教えられていた。
配制度を通さずに米を買うことはいけない。
取引はいけない。
これからしい本を作っていくためには、が決まりを守らなければならない。
先たちはそう話していた。
戦争も、正夫はの言うことを守るように教えられてきた。国のため、族のため、みんなのためにすることが正しいと教えられてきた。
戦争が終わったは、言われることがし変わった。
これからはしい代なのだと言われた。
だからこそ、今度は自分たちが正しい国を作らなければならない。
正夫は、その言葉を真剣に信じていた。
へ帰ると、母の澄子はまだ仕事から戻っていなかった。
正夫にはに妹と弟たちがいた。
父親は戦争で帰らぬになった。
それ以来、澄子が1で子どもたちを育てていた。
昼は縫製所で働いていた。
朝くをて、夕方まで布を縫い続ける。
それでも、族全員が分にべられるだけのものをに入れるのは難しかった。
配でもらえる米だけではりないことがかった。
特に育ち盛りの子どもが何もいるでは、事のたびに誰かがしずつしなければならなかった。
正夫はそれをっていた。
っていたからこそ、母が々どこかへかけていくことにも気づいていた。
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まだ夜がけきらないうちに起き、着物や帯、布など、に残っている物を呂敷に包んでていく。
き先は千葉や埼玉の農だった。
そこで米や芋と交換し、夕方になってい荷物を抱えて帰ってくる。
々はそれを「買いし」と呼んでいた。
同じようなことをしているは、町にもなくなかった。
だが、学でははっきり教えられていた。
配制度を通さない米は米だ。
米を買うのは違反だ。
正夫は、そこに迷いを持つことができなかった。
数の夕方。
母が農から戻ってきたのことをいした。
澄子は呂敷をろすと、疲れたように腰をさすっていた。
弟たちは母の周りへ集まった。
呂敷のからてきたのは、数ほどの米と、いくつかのさつま芋だった。
「お米だ!」
幼い弟が目を輝かせた。
妹も嬉しそうに米袋を覗き込んだ。
このの卓にい米が混じった飯がるのは、毎のことではなかった。
だから子どもたちにとって、そのさな米袋はごちそうそのものだった。
正夫だけがべなかった。
袋を見つめながら、胸のに学で聞いた言葉が浮かんでいた。
取引はいけません。
みんなが決まりを守らなければいけません。
正夫は母へ尋ねた。
「これ、配じゃないよね」
澄子は瞬、を止めた。
すぐには答えなかった。
正夫はもう度聞いた。
「米なんだろ」
しばらくして、澄子はさく息を吐いた。
「そうだよ」
それを聞いた瞬、正夫のでは、母が何か確な違いを犯したになった。
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