"2本のさつま芋" 第8話
使える制度がにないか、もう度確認したい」
正夫の言葉は静かだった。
誰かを責める調でもなかった。
規則が悪いと言っているわけでもない。
ただ、その規則では届かないがいるなら、そこで考まで止めてはいけないとった。
若い職員がし戸惑ったように尋ねた。
「そこまでしますか?」
正夫はその顔を見た。
20の自分も、きっと同じだった。
目のに決まりがあれば、それを守ることが正しい。
そこから先まで考える必はないとっていた。
正夫はしだけ笑った。
「昔、やらなかったことがあるからね」
若い職員には、そのは分からなかっただろう。
正夫も説しなかった。
会議はそこで終わらなかった。
類がもう度かれた。
利用できる別の仕組みがないか、1つずつ確認することになった。
正夫は資料へ目を落としながら、母の声を聞いていた。
決まりを作るは、お腹が空いていないこともあるんだよ。
20く経って、ようやくその言葉がしだけ分かった気がした。
その会議のも、正夫の仕事は続いた。
1つの案件が終われば、また別の類が机へ置かれる。
規則にうもの。
わないもの。
判断に迷うもの。
政の仕事は、毎のようにその繰り返しだった。
正夫は規則を軽く扱わなかった。
自分の気持ちだけで例を作れば、公平さを失う。
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1を助けたいという善が、別の1を公平に扱うことにつながるもある。
だからこそ、決まりは必だった。
14歳の頃には分からなかったその側面も、になってよく理解していた。
同に、規則がすべてではないこともっていた。
のの条件に当てはまらないからといって、そのの困りごとまで消えるわけではない。
「対象」といた瞬に、腹が満たされるわけでもない。
活が楽になるわけでもない。
困っている現実は、そのまま残る。
正夫は、あのの母を何度もいした。
澄子は決まりを破った。
その事実は変わらない。
正夫自、今でも「米を買ってよかった」と言い切ることはできなかった。
もしすべてのが同じように配を無し、や物を持つ者だけがべ物をに入れれば、別の問題が起きる。
母のだけを正当化すれば、それもまた現実の面しか見ないことになる。
だから正夫は、あの来事について最まで答えをさなかった。
自分が警察へらせたことは正しかったのか。
違っていたのか。
母は悪かったのか。
自分は悪かったのか。
どちらか1つへ決めようとすると、必ず何かがこぼれ落ちた。
14歳の正夫は、それが耐えられなかった。
正解が欲しかった。
になった正夫は、正解のないことがあるとった。
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それでも、は判断しなければならない。
だからこそ、判断するに相の暮らしを見る必がある。
そのことを忘れないようにした。
職で若い職員が「規則ですから」と言うたび、正夫はすぐ否定したりはしなかった。
その言葉自体は違っていないからだ。
代わりに尋ねた。
「そのは、今どういう暮らしをしている?」
「この制度以に使えるものはないか?」
「条件かられた理由は何だ?」
1つずつ確かめた。
規則を曲げるためではない。
規則の範囲ので、できることを探すためだった。
ある、若い職員が正夫へ尋ねた。
「どうしてそこまで確認するんですか」
正夫はし考えた。
昭24のことを話そうかとった。
交番へ入った14歳の。
連れてかれた母。
空腹の弟。
野先。
しかし詳しくは話さなかった。
「類だけ見ていると、忘れることがあるからね」
それだけ答えた。
「何をですか?」
正夫は机のの申請を指で軽く押さえた。
「このの向こうに、がいるってことを」
言いながら、自分自へ言い聞かせているような気がした。
母があの、正夫へ伝えたかったことも、おそらく同じだった。
決まりをなくせという話ではない。
違反を見逃せという話でもない。
ただ、決まりだけを見て、を見なくなるなということだった。
正夫はそう理解するようになっていた。
昭24。
14歳の正夫は、米を買った母を警察へ通報した。
その来事を、正夫は涯忘れなかった。
母が連れてかれるの顔。
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