"帰った家に、知らない親子がいた" 第4話
戦争が終わっても、子どもたちはすぐ京へ帰れなかった。
交通は混乱し、糧もしていた。誰の族が無事なのか、どこへ帰せばいいのか分からない子どももかった。
正は毎のように先へ聞いた。
「いつ帰れますか」
「もうし待て」
「戦争は終わったんですよね」
「終わった。でも、帰す準備がいるんだ」
「僕は所を覚えてます」
先は、その言葉を聞くたびし困ったような顔をした。
「そうだな」
それ以は言わなかった。
ようやく帰京のが決まった、正はの晩から眠れなかった。
荷物は疎したよりずっとなくなっていた。
は擦り切れ、靴も傷んでいた。
それでも胸の内側には、母が縫ったい布がまだ残っていた。
文字はしくなっていたが、読めた。
列はひどく混んでいた。
復員兵。
荷物を抱えた女性。
子ども。
老。
誰もが疲れた顔をしていた。
正たちは先に囲まれながら座り、京へづくのを待った。
「もうすぐだぞ」
誰かが言った。
正は窓へ顔をづけた。
しかし、っている景がなかなか現れなかった。
畑が減り、建物が増える。
そのはずだった。
ところが窓のに見えたのは、焼けただった。
根のない建物。
黒く焦げた柱。
ねじ曲がった鉄骨。
煙突だけがっている。
「ここ、本当に京なの?」
隣の子がさな声で言った。
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先は答えなかった。
正も黙っていた。
もっとへ入れば、いつもの京がてくる。
そうおうとした。
だが駅をりても、景は変わらなかった。
だけは勢いた。
焼け跡を歩く。
きな荷物を背負う。
面に座り込む。
探しの名をいたを持つ。
正たちは決められた所へ集められ、迎えを待った。
最初に、1の母親がってきた。
「健ちゃん!」
へ抱きつき、声をげて泣いた。
次には父親が来た。
兄が迎えに来た子もいた。
「正、またな」
友達が族と緒にっていく。
「うん」
正はを振った。
1。
また1。
周囲から友達が消えていった。
正は何度も混みの向こうを見た。
母の顔を探した。
父の背丈を探した。
きっと遅れている。
が混んでいるのかもしれない。
自分たちが帰ってくるをらないだけかもしれない。
昼が過ぎた。
夕方になった。
それでも、佐野からは誰も来なかった。
「正」
先が声をかけた。
「今はここへ泊まろう」
「もうし待ちます」
「暗くなる」
「母ちゃん、来るかもしれない」
先はしばらく黙っていた。
それから正の隣へ腰をろした。
「、緒にへこう」
正は頷いた。
へけばいい。
迎えに来ないなら、自分から帰ればいい。
所は覚えている。
父との約束通りだ。
その夜、正はほとんど眠れなかった。
のでまでの順を何度もたどった。
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駅からる。
きなを曲がる。
米。
呂の煙突。
角の菓子。
そこからし歩けば自宅。
目を閉じれば、全部見えた。
翌朝、先と川へ向かった。
正は最初、迷いなく歩いた。
しかし途からが止まった。
「先」
「どうした」
「米がない」
し先までった。
「呂の煙突もない」
さらに歩いた。
角にあったはずの菓子もなかった。
の形さえ変わって見えた。
焼け跡のには、同じような細いが何本も伸びていた。
目印が全部消えていた。
正は焦った。
「こっちです」
1本のへ入る。
違う。
戻る。
「やっぱり、こっち」
また歩く。
それも違う。
「所はってるんだよ」
正は何度も言った。
先は何も責めなかった。
焼け跡をったり来たりしながら、ようやく正は1本の柱を見つけた。
完全に同じものかは分からない。
それでも、っている所との曲がり方に覚えがあった。
正はを止めた。
「ここだ」
柱の向こうに、さな空きのような所があった。
いや、空きではなかった。
焼けた柱。
拾い集めた板。
トタン。
それらを組みわせた粗末なが建っていた。
煙突から細い煙ががっている。
正は呆然とした。
「先」
声がかすれた。
「うち、ここです」
先も黙ってを見た。
「ここに、うちがあったんです」
正はへづいた。
入に板切れが掛けられていた。
そこにいてある名字を見た。
「吉田」
らない名字だった。
正はのでち尽くした。
自分の所まで戻ってきた。
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