"米はあるのに、田を売った" 第2話
ったよりはかかったものの、族がべる米を残すこともできたため、庄吉は「ほら、とそんなに変わらないじゃないか」と笑った。源蔵も、そのは息子と同じように考えていた。
ところが、それから数。
豊作のに、源蔵は初めてることになる。
米がく取れたからといって、農が楽になるとは限らない代が始まっていた。
そののは候に恵まれた。梅の量もほどよく、そのは照りが続きすぎることもなく、から流れるも最まで枯れなかった。になると田面が黄に染まり、源蔵は稲穂をのひらで包みながら「今は久しぶりにいいぞ」と何度もにした。
庄吉も朝から嫌がよかった。刈り取る稲はずっしりく、脱穀するたびに籾が気持ちよく落ちていく。よりらかに収穫量がく、蔵へ運び込まれる米俵の数を見たトヨも「これなら太にしい綿入れを買ってやれるね」と嬉しそうに言った。
源蔵も、その夜だけは酒をし余計にんだ。今こそはした根の修理ができるかもしれないし、庄吉にもしいだけでなくしまともな着物を用してやれる。お糸が欲しがっていた櫛も買えるかもしれないと考え、久しぶりに族全員がるい顔で卓を囲んだ。
ところが数、町から戻った源蔵は別のような顔をしていた。
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肩には空の米袋を掛けていたが、夕が始まってもほとんどをつけず、囲炉裏のばかり見つめている。トヨが何度尋ねても「何でもない」としか答えず、子供たちも次第に数を減らした。
事が終わった、源蔵は庄吉を呼び止めた。
「、米を6俵、町へ持っていくぞ」
庄吉はわず父の顔を見た。税のために米を売ること自体は毎のことだったが、最初から6俵も運ぶのはい。なら4俵ほどを売れば、税と必な現をほぼ用できていたからである。
「そんなに売るのか」
「ああ。朝番にる」
源蔵はそれ以説せず、く寝ろと言った。
翌朝、父と息子はまだ暗いうちから荷に米俵を積んだ。から町まではをり、川沿いのを2ほど歩く。庄吉は荷を押しながら、これだけの米を売れば今はにもかなりが残るのだろうと考えていた。
町の米商・松井のには、すでに隣のから来た農民が何も並んでいた。軒先には米俵が積みがり、奥ではの者がでを確かめ、さや質を見て値を付けている。源蔵たちが順番を待っているにも、次々と荷が到着した。
松井は源蔵の米を俵ずつ確かめた。粒は悪くない、よく乾いていると褒めたため、庄吉はよりく売れるとった。しかし主が最に提示した額を聞いた瞬、源蔵の顔から表が消えた。
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「待ってくれ。よりずっといじゃないか」
松井は困ったように眉をげた。
「今はどこも豊作なんですよ。信州だけじゃない。米がたくさん回って、毎値ががってるんです」
「これじゃりない」
「税ですか」
源蔵は答えなかった。
松井は帳の方を見てから、「なら、もうし持ってきてもらうしかありませんな」と言った。その調には悪もびもなく、源蔵にとってはそれがかえって腹たしかった。自分たちがかけて作った米の値段が、目のの男の言で決まってしまったようにじたからである。
帰り、空になった荷を庄吉が引いていた。きよりずっと軽いはずなのに、父は無言で歩き、折ち止まっては何か計算するように指を折っていた。庄吉も最初は黙っていたが、まであと半里ほどになったところで、源蔵が突然を止めた。
「、あと3俵持っていく」
庄吉は荷の取っを持ったまま振り返った。
「あと3俵?」
「ああ」
「今の6俵とわせたら9俵じゃないか」
源蔵は返事をせず歩きした。庄吉は慌てて荷を引き、父の横へ並ぶと、今はよりたくさん取れたのに、なぜよりく売らなければならないのかと尋ねた。
「米の値ががったからだ」
「豊作だから?」
「ああ」
庄吉はしばらく考えたが、それでも納得できなかった。
たくさん取れればが豊かになると幼い頃から教えられてきたのに、実際には米がく取れたせいで値段ががり、税を払うために以の米を放さなければならない。
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