明治6年、信州の小さな村に新しい税の知らせが届いた。 これまで米で納めていた年貢は、これから「金」で納めることになるという。百姓の源蔵は、米を売れば払えるはずだと考えていた。田はあり、家族も働き、蔵には米俵も積まれている。何も変わらないように思えた。 しかし豊作の秋、源蔵は思い知らされる。 米はある。けれど、税を払う金が足りない。 土地には値段がつき、米にも値段がつき、農家の暮らしは少しずつ追い詰められていく。やがて源蔵は、祖父の代から守ってきた田を一枚売る決断を迫られる。 「米を作るだけじゃ、駄目な世の中になったんだ」 父がその言葉を口にした日、息子も娘も、それぞれの人生を選び始める。 明治という新しい時代の波が、一軒の農家に突きつけた残酷な現実とは――。