"米はあるのに、田を売った" 第4話
すると庄吉が、父をまっすぐ見た。
「じゃあ、田を売ってまで何を守るんだよ」
源蔵は息子を睨んだ。
庄吉も線をさなかった。
その夜、源蔵ので初めて、「田を守る」という言葉のが分かれた。
源蔵にとって田は、い扶持である以に先祖から預かったものだった。祖父がだらけのを耕し、父がを延ばし、自分が畦を直してきた。その続きを庄吉へ渡すことこそ、自分の役目だとっていた。
庄吉にとって田は、働けば族をわせてくれるものだった。どれほど先祖が切にしたでも、それを守るために族がべる米まで失い、借を増やすなら、何を守っているのか分からない。父の気持ちは理解できても、その考え方まで受け継ぐことはできなかった。
そしてお糸にとって田は、兄と父に与えられた「将来」のように見えていた。
「私は町へく」
お糸がもう度言った。
「田んぼを守るためじゃない。私、自分のためにきたい」
源蔵は娘の顔を見つめた。
「百姓の娘が町へて、何になる」
その言で、お糸の表が変わった。
「じゃあ私は、百姓の娘なの?」
源蔵は答えられなかった。
「お父ちゃんには田がある。庄吉兄ちゃんには、その田を継ぐ話がある。でも私は何になるの」
トヨが何か言おうとしたが、言葉にならなかった。
治になり、武士の髷が消え、町にはを着るまで現れ始めていた。
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それなのに、こののだけは何も変わらず、娘は嫁にくまで父のにいるものだと、源蔵は当たりのように考えていた。
その夜、族はほとんど言葉を交わさなかった。
税のために始まった話は、いつのにか田のことだけではなくなっていた。
世のが変わるということは、ので誰が何者としてきるのかまで変わっていくことなのだと、誰もまだうまく言葉にはできなかった。
数、町の米商・松井が源蔵のへやって来た。50歳を過ぎた柄な男で、紺の羽織のに帳面を抱え、川向こうの田を実際に見たでへがった。源蔵は囲炉裏端に座らせ、トヨがお茶をすもどこか落ち着かない様子で膝を何度も擦っていた。
松井が示した買値は、庄吉が像していたよりかなりかった。田はの便こそ悪くないが、川が増したに被害を受けやすく、広さも途半端だからこの程度になるという。庄吉は黙っているつもりだったが、父が額を聞いても反論しないのを見て耐えられなくなった。
「そんな値段で売るのかよ」
源蔵が「庄吉」と制した。
しかし息子は止まらなかった。
「松井さん、困ってるのをってて、この値段をしてるんだろ」
松井はらなかった。むしろ帳面を閉じ、若者の顔をじっと見た。
「嫌なら売らなくていい」
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「俺たちの米をく買って、そので今度は俺たちの田まで買うのか」
トヨが息を呑み、源蔵は「もうやめろ」とく言った。
それでも松井は庄吉から目をそらさなかった。
「おさんは、俺がずいぶん儲かってるとってるんだな」
「違うのか」
松井は持っていた帳面をいた。そこには庄吉には読みにくい細かな数字がびっしりかれており、町で売った米の値段、馬の運賃、倉を借りる費用、商売のために借りたの利息まで記されていた。
「俺だって、く買ってやれればその方がいい。だが今みたいに米がどこからでも入ってくれば、く仕入れても売れん。売れ残れば虫がつくし、値ががれば俺も損をする」
庄吉はを閉じた。
「、俺が買った米の部は、まで倉に残った。値ががるとったが、逆にがった。俺も借を増やしたよ」
松井は淡々と話した。
「商だから百姓より楽だとは言わん。だが、米の値段は俺で決めてるわけじゃない」
庄吉は何も返せなかった。
これまで庄吉は、苦しさには必ず原因となるがいるとっていた。役がい税を取る。商が米をく買う。誰かを悪者にできれば、自分たちが苦しい理由も分かりやすい。
だが目のの松井まで、値段に追われている。
それなら体、誰をめばいいのか。
松井が帰った、源蔵はい黙っていた。
やがて戸のへ目を向け、田を眺めながらをいた。
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