"7人の妊娠と密封された患者服" 第4話
《類染症関連物品》
《真空封緘》
そして赤字で、
《永久保管・封禁止》
松田は瞬だけその文字を見つめた。
「永久保管……?」
なぜ着の患者だけが、廃棄されず永久保の扱いになっているのか。
確認するに、司の声がんだ。
「松田。もう終わった事件だ」
松田は目録を閉じた。
そのにはまだらなかった。
15。
誰もを考えなかったそのが、条匠を追い詰める最の扉になることを。
事件が終結したの暮れ。
法務関係者を集めた表彰式の会に、条匠の姿があった。
刑務所内で発した染症拡を防止し、医療体制の維持に貢献したとして、表彰を受けることになったのだ。
壇で賞状を受け取る条の胸元にカメラのフラッシュがった。
数か。
7の女性が彼の名を聞いただけで震えていた。
しかし世が見る条は。
混乱した刑務所を支えた優秀な医師だった。
松田は辺の駐所にいた。
窓の向こうでは、の波が防波堤を叩いていた。事件など滅に起こらず、相談に来る民もない。
引きしの番奥には、あのの帳を入れたままにした。
捨てることが来なかった。
だが。
自分から事件を蒸し返す力もなかった。
数。
条は刑務所医療をれた。
父親が設した型医療財団へ入り、やがて理事に就任した。
広告
国内にいくつもの病院を持つ財団のトップとして、医療関係者や経済界の々と並び、雑誌のインタビューにも登した。
方。
由美の活はまったく違うものになっていた。
刑期を終えて所したも。
事件の噂は消えなかった。
何があったかを説しようとしても、信じてもらえない。
族との関係も壊れた。
定した仕事にも就けなかった。
朝くから廃品回収の伝いをし、雇いの仕事をつないで活する々が続いた。
あるがりの朝。
由美が台を引いて通りを歩いていると、黒い型セダンが横を通り過ぎた。
部座席には。
話をしながら笑うスーツ姿の男がいた。
由美はその顔を見ていない。
もそのままざかった。
もし見ていたとしても。
何が来ただろう。
15。
声をげる会は奪われた。
捜査も終わった。
条は社会な成功者になった。
由美はもう。
過を誰にも話さないと決めていた。
残りの女性たちも、それぞれ違うで暮らしていた。
結婚した者。
族と疎になった者。
過をるがいない町へ移った者。
彼女たちのでは事件は終わっていなかったが、社会のでは完全に過の来事になっていた。
そうして15が過ぎた。
2026の。
方のホスピス病棟で、の老が余命わずかと告げられていた。
広告
黒部女子刑務所で警備課を務めていた男だった。
あの。
壊れたはずの監カメラについて。
事件に報告を作った男。
夜になると老は何度も目を覚ました。
壁の隅を見つめて、
「来るな」
と呟いた。
護師が声をかけても、
「俺がやったんじゃない」
と繰り返した。
ある午2。
老はナースコールを何度も押した。
駆けつけた護師へ、ベッドのを指さす。
「箱を……してくれ」
フレームの奥には、錆びたさな鉄箱が挟まれていた。
護師がベッドへ置く。
老は震える指で古い留め具をした。
には黄く変したの束。
そして黒いUSBメモリ。
枚目のには。
《非公式 眠鎮静薬投与記録》
きの文字。
その横には。
《条匠》
という名があった。
老は何度も息をえながら、それらを茶い封筒へ入れた。
「これを……テレビ局へ」
「ご族へではなく?」
「テレビ局だ」
老は護師のを掴んだ。
「俺が全部、変えたんだ」
「何をですか?」
「カメラも……記録も……」
目から涙が流れた。
「をもらった。怖かった。だから、あの女たちを見捨てた」
それ以の言葉は続かなかった。
護師は老の震える文字でかれた宛先を見た。
京の放送局。
報局。
15閉じられていた鉄箱が。
ようやくへようとしていた。
数。
放送局の報フロアで、ディレクターの川凛は差の封筒を受け取った。
からてきた最初のを読んだ瞬、子から背をした。
《非公式 眠鎮静薬投与記録》
付。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
消えた指輪と義父の手帳
結婚2年目の美咲は、義母・富美子から突然、亡き義父が贈った大切な指輪を盗んだと疑われる。 防犯カメラには、夜中に美咲が仏間へ入る姿が映っていた。だが美咲は、ただ窓を閉めただけ。身に覚えのない疑いをかけられたうえ、夫の亮介までもが「バッグを見せれば終わる」と言ったことで、美咲は家を出る決意をする。 しかしその後、義姉から告げられたのは、7年前にも同じような“盗難騒ぎ”があったという事実だった。 さらに、亡き義父の手帳には、富美子が隠し続けてきた家族の秘密が残されていた。 消えた指輪は、誰が持ち出したのか。 そして義母はなぜ、真実を知りながら美咲を疑い続けたのか――。嫁姑|真実|親子関係1.6万字5 725 -
完結第12話
面接官の誤算
夢だった大手企業の最終面接。 24歳の小館達郎は、人事の仕事に憧れ、努力を重ねてようやく最終面接までたどり着いた。だが、中央に座っていた人事部長は、彼の学歴や家庭環境を見下し、面接の途中で冷たく言い放つ。 「低学歴の貧乏人は、面接する必要なし。不採用で決まりだな」 母子家庭で育ち、必死に支えてくれた母への思いまで踏みにじられた達郎。悔しさをこらえながらも、彼はその場で言い返さず、静かに会社を後にした。 しかし1か月後、達郎は再び同じ会社へ呼び出される。 案内されたのは、あの日と同じビルの役員会議室。そこには人事部長の佐野、社長、そして達郎のよく知る一人の男が座っていた。 達郎の姿を見た瞬間、佐野の顔色が変わる。 あの日の「不採用」は、ただの終わりではなかった。 一人の応募者を見下した面接官が、会社全体に隠されていた問題を暴き出すきっかけになる――。真実|修羅場1.8万字5 752 -
完結第12話
ただいまの裏にあった10年
1985年8月15日、新潟県長岡市で、23歳の佐藤健一はいつものように工場を出たまま姿を消した。 自転車も、持ち物も、行き先も分からない。両親の誠とかず子は必死に息子を捜し続けたが、手掛かりは何ひとつ見つからなかった。 それから2年後、痩せ細った1人の男が佐藤家の玄関に立つ。 「ただいま」 失われた息子が帰ってきた――そう信じた両親は、彼を再び家族として迎え入れる。記憶を失っていても、生きて戻ってくれたならそれでいい。そう思いながら、佐藤家は少しずつ穏やかな日々を取り戻していった。 しかし10年後、差出人不明の小包が届く。 中に入っていたのは、小さな遺骨と、父が本物の健一に贈ったはずの腕時計。そして一枚の紙には、こう書かれていた。 「本物の息子さんをお返しします」 8年間、家族として暮らしてきた男は誰だったのか。 そして本物の健一は、あの日どこで何を奪われたのか。 失踪、偽りの帰還、そして名前を越えて残った家族の形を描く物語。ミステリー|行方不明1.7万字5 303 -
完結第12話
団地に残された17通
毎朝5時、誰よりも早く団地へ来て、廊下も階段もごみ集積所も黙って掃除してきた61歳の藤本志津江。 13年間続けてきた仕事は、ある日突然、31世帯の署名によって終わりを告げられる。理由は「住民の生活をのぞいている」「勤務時間外に声をかけすぎる」というものだった。 志津江は反論しながらも、自分の善意が誰かにとっては重荷になっていたことを知る。 そして契約終了が決まった直後、清掃用具庫から見つかったのは、長年誰にも届かなかった17通の手紙だった。 その中には、15年前に団地で起きた火災と、当時責任を負わされた元管理人、そして亡くなった女性が残したはずの言葉が含まれていた。 志津江は本当に住民を見張っていたのか。 17通の手紙は、なぜ用具庫に残されていたのか。 そして、団地が長年隠してきた火災の真相とは――。因果応報|人生逆転|真実1.8万字5 563 -
完結第12話
花嫁が僕を犯人にした朝
結婚式まで、あと1時間20分。 ホテルの支度室で、花嫁・白石奈緒は切り裂かれたウェディングドレスを前に、衣装修復担当の朝倉湊を指さした。 「ドレスを切ったのは、この人です」 しかし湊には分かっていた。昨夜、保管室で彼が見た時、ドレスはすでに切られていた。そして奈緒は、震える声で「明日の式を止めてほしい」と頼んでいたのだ。 なぜ花嫁は、自分を助けようとした男を犯人に仕立てたのか。 やがて、ドレスの内側に縫い込まれていたはずの封筒、消えた書類、三浦家の融資計画、そして花嫁本人の不可解な沈黙が、結婚式の裏に隠された別の真実を浮かび上がらせていく。 切られたのは、ドレスだけではなかった。 守るべき秘密と、押しつけられた罪。その境目に立たされた一人の修復師が、自分の人生を取り戻していく物語。人生逆転|真実|修羅場1.7万字5 28 -
完結第11話
消えた神童、10年後の手紙
2001年秋、北陸の小さな町で、サッカーの才能を持つ10歳の少年・立花陸が、父・剛とともに突然姿を消した。 数日後、海辺の岸壁で見つかった白いバン。車内には父の作業服と、陸のスパイクが片方だけ残されていた。やがて町では、「父が息子を連れて海へ入ったのではないか」という噂が広がり、母のゆみ子は長い孤独と偏見の中で10年を過ごすことになる。 しかし、失踪から10年後。 ゆみ子のもとへ、ドイツから一通の手紙が届く。 そこに書かれていたのは、信じられない一文だった。 「私の名前は陸です。ドイツで暮らしています」 海に消えたはずの息子は、なぜ異国で生きていたのか。車に残された片方のスパイクは、本当に陸のものだったのか。そして、父・剛が最後に守ろうとしたものとは何だったのか。 10年前に見落とされた小さな違和感が、封じられていた事件の真相を少しずつ暴き出していく――。ミステリー|真相1.7万字5 126 -
完結第12話
消えた妻と13本のテープ
1997年10月、島根の山あいの町で、32歳の主婦・松本千鶴が同窓会へ向かったまま姿を消した。 夫は「昔の男と逃げたのではないか」と語り、届け出は3日遅れた。会場に千鶴が来ていたかどうかも証言は食い違い、唯一の手がかりだった防犯映像はすでに上書きされていた。 母に捨てられた娘として成長した栞。だが、千鶴を忘れられなかった人物がもう1人いた。かつての担任教師・川井は、毎年10月4日になると、存在しない住所からラジオ局へ同じ曲をリクエストし続けていた。 そして13年後、孤独死した川井の遺品から、1997年から2009年までの年号が書かれた13本のカセットテープが見つかる。 そこに残されていたのは、千鶴が消えた夜を知る男の、あまりにも遅すぎる告白だった。 同窓会の夜、千鶴は本当にどこへ向かったのか。なぜ元担任は13年間も沈黙したのか。 「母は私を捨てたのではない」――娘がその真実に辿り着くまでの、13年越しの記録。ミステリー|真相1.8万字5 2081 -
完結第10話
12年前も、彼が犯人だった
毎週月曜日、会社の金庫から1万円だけが消える。 疑いを向けられたのは、土曜の夜に出入りしていた無口な清掃員・佐々木誠だった。ロッカーからは、消えた金額と同じ3万円が見つかり、誰もが彼を犯人だと思い始める。 しかし、44歳の配送主任・高瀬直人だけは、その状況に違和感を覚えていた。 本当に金庫から金は盗まれたのか。なぜ清掃員は何も説明しようとしないのか。そして、12年前の古いタイムカードに残されていた佐々木の名前。 調べるほどに、消えた1万円は過去の事故と、会社が長年隠してきた“ある責任”へとつながっていく。 犯人を作れば、会社は楽になる。 その言葉の意味を知った時、直人は信じていた上司と、12年前の自分自身に向き合うことになる――。真実|裡の顔|修羅場1.5万字5 279 -
完結第10話
消えた嫁と浅すぎる墓
1993年正月、青森の山あいの村で、武田家の嫁・すみ子が墓参りの後に姿を消した。 夫は「家出した」と届け出たが、財布も行き先もはっきりせず、すみ子の消息はそのまま途絶えた。嫁姑の不仲、夫の無関心、そして雪深い村に残された小さな違和感――しかし当時、誰もそれを深く追おうとはしなかった。 それから7年後。 道路拡張工事で古い共同墓地を移すことになり、すでに亡くなっていた姑・松子の墓が掘り返される。ところが、棺のさらに下から見つかったのは、そこにあるはずのないもう一人の骨だった。 花柄の着物、頭に残された不自然な傷、そして7年前に「墓を深く掘らないで」と叫んだ娘の記憶。 正月の雪山で、武田家の女たちに何が起きたのか。 家族という名の密室に封じられていた真実が、7年越しに土の中から姿を現す――。ミステリー|真相1.5万字5 308 -
完結第8話
サービスエリアで消えた三人
大型サービスエリアで、36歳の母親と9歳の息子、6歳の娘が突然姿を消した。残された夫・修一はテレビに出演し続け、「妻と子供たちを見かけた人は連絡してください」と14年間訴え続けた。世間は彼を、家族の帰りを信じて待つ父親として記憶していた。ところが事件から14年後、100キロ近く離れた古い貸倉庫の床下から黒い旅行鞄が発見される。中に入っていたのは、失踪した妻の財布と、息子が旅行当日に履いていた片方のスニーカー。そして、その倉庫の過去を調べると、夫がかつて関係を持っていた女性の名前が浮かび上がる。14年間誰も疑わなかった「3人はサービスエリアで消えた」という前提が、そこから静かに崩れ始める。ミステリー|真相|遺體発見|行方不明1.1万字5 218