"米蔵を開けた娘" 第4話
佐吉の言葉は正しかった。
千代自、それは分かっている。
それでも、格子戸のにいた母親たちの顔が浮かんだ。
昨の男の子。
「今、ご飯いっぱいべられる?」
あの声がれなかった。
「までにする」
千代は言った。
「?」
「そう。全部好きなだけ売るんやない。まで」
「値段は?」
「いつもの値段よりしげる」
佐吉はを抱えた。
「そんなん旦さんにられたら……」
「私が言う」
「お嬢さん」
「責任は私が取る」
そう言ってはみたものの、19歳の千代に何の責任が取れるのか、自分でも分かっていなかった。
ただ、今は扉をけなければならない気がした。
錠へ鍵を差し込む。
属が擦れる音がした。
千代は度だけを止めた。
この扉をけたら、もう父に隠すことはできない。
それでも鍵を回した。
い音をて、錠がれた。
佐吉がさく息を呑んだ。
千代は両で蔵の戸を引いた。
暗い内部に、米俵が何段にも積まれていた。
のい差しが差し込み、俵の表面に細かな埃が浮かんだ。
「ほんまに、こんなに……」
佐吉が呟いた。
その。
格子戸の隙からを覗いていた女の1が、蔵がいたことに気づいた。
「米あるやないの!」
その声が図になった。
にいた々が斉にざわめき始める。
「蔵いたで!」
「米すんか!」
「入れて!」
格子戸がく叩かれた。
千代は慌ててへ戻った。
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「けて」
佐吉が目を見く。
「ほんまにけるんですか」
「。絶対それ以売らん」
「……分かりました」
佐吉は諦めたように頷いた。
格子戸をしける。
々が押し寄せようとした。
千代は先にった。
「待って!」
声をすと、何かがを止めた。
「までです!」
「だけか!」
男の声がぶ。
「だけです。順番に並んでください」
「値段は?」
千代は額を言った。
いつもの値段より、しくした。
どよめきが起きた。
「ほんまか?」
「ほんまです。でもまで」
千代は何度も繰り返した。
最初はうまくいった。
佐吉が米を量る。
別の番が袋へ入れる。
千代が帳でを受け取る。
母親たちは米袋を抱え、何度もをげた。
「ありがとう」
「助かったわ」
「これで今子どもにべさせられる」
その言葉を聞くたび、千代の胸にいものが広がった。
父にられる。
が損をする。
それでも今は、正しいことをしている。
そうった。
ところが、のにできた列はくなるどころか、急速にくなっていった。
「がう売ってる!」
噂が町をった。
20だったが30になった。
40になった。
やがて通りの向こうまでが集まった。
らない顔も増えた。
女だけではなかった。
男たちも混じり始めた。
別の町から来た者もいた。
「だけなんてなすぎる!」
誰かが叫んだ。
「蔵にいっぱいあるやないか!」
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「族5おるんやぞ!」
「って言うてるやろ!」
佐吉も必に声を張った。
しかし列のろには、もう千代の言葉が届かなくなっていた。
が増えるにつれ、のから「順番」というものが消え始めた。
最初はきちんと列に並んでいた女たちも、から来たに抜かれまいとへ詰めるようになった。
「押さんといて!」
「子どもおるんや!」
「さっきから並んでるんはこっちやで!」
鳴り声がなる。
千代は帳から何度もへた。
「順番にしてください!」
「米はありますから!」
そう叫んでも、「米はある」という言葉だけが々のに残った。
「あるんやったらもっとせ!」
男が叫んだ。
「言うてます!」
「こっちは何族やとってる!」
「みんな同じです!」
「同じなわけあるか!」
内の空気が変わっていった。
助かったとをげていた々のに、焦りとりが混じり始める。
米が買えなければ、の事がない。
そのが、をへへと押していた。
佐吉が何度目かの米俵を蔵から運びしただった。
列かられた1の男が、いた蔵の方へんだ。
「まだあるやないか」
「入ったらあきません!」
僧が止める。
男はその肩を押しのけた。
「どけ!」
佐吉がすぐに駆け寄った。
「勝に触ったらあかん!」
「払う言うてるやろ!」
「です!」
「そんな決まり、誰が決めた!」
男が米俵へを伸ばした。
佐吉が腕をつかむ。
そこから激しい言い争いになった。
「せ!」
「やめてください!」
周囲のがさらに押し寄せた。
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